割引シールの後ろめたさと救済の言葉
割引シールってありますよね。
スーパーなどで主に消費・賞味期限が迫った商品に貼られる、あれです。
目を引く色が使われ、何割引き、○○%値下げという文字を見るとテンションが上がります。
特に欲しかった商品が2割3割、さらに半額引きになんてなっていると、もうたまらない。
1度、閉店時間近くに9割引きの国産ステーキ肉を見つけた際は、内心で小躍りでした。
まあしかし、嬉しいといっても、さすがに露骨すぎる「割引シール待ち行為」まではしませんが。
で、割引品購入にはお得感がある反面、個人的にジレンマも抱えていたのです。
それは会計をするたび、
「このお客様、割引品が多いなあ」
「定価で買ってもらえたらなあ」
とか、
「プークスクス、割引商品ばっかり買ってる~」
「割引商品だけで買い物かごをいっぱいにして、このザ~コザ~コ❤️」
とか、
「人の商い物を値引きされてから買い漁るたぁ粋じゃねえな、しみったれたケチな守銭奴もいたもんだ!」
とか、
「こいつ割引ばかり買ってやがる、オイおめーら笑ってやれ!」
「ギャハハハハハ! せっこい野郎だぜー!」
などと店員に思われてたらイヤだなあ、という少々の後ろめたさです。
おのれ、許さんぞレジ係ども(深刻な被害妄想)
オーバーな表現になりましたが、
「こちら割引させていただきまーす」
と商品がレジを通るたびに続けて聞かされると、ちょっと恥ずかしくなってしまう感覚は多からずとも共感してもらえるかと。
お得感を求める光と後ろめたさという仄暗い闇を心に同居させ、買い物をする毎日。
そんなある日のことでございます。
普段、買い出しは近所のスーパーで済ませるのですが、遠出したその日はほとんど行かないイオンに寄りまして。
夕飯のおかずと晩酌のアテでもと惣菜コーナーをぶらぶらしていると、例のシールが貼られた商品が。
何気なく手に取ってみると、そこには、
「フードロス削減にご協力ありがとうございます」
みたいなメッセージが添えられていたのです。
他のスーパーでもやってるところはあるのかもしれませんが、シールに直接印刷は初めてでした。
それは「割引品を買う後ろめたさ」「その商品をレジに通されるときの気恥ずかしさ」といった、自分で自分にかけていたある種の呪いを解いてくれる、救いの言葉でした。
(イメージ映像・人差し指と中指を立てて、何か唱える岡野玲子の安倍晴明)
変に見栄をはり、割引シール品を避けなくていい。
余裕をもって設けられているといわれる日本の消費・賞味期限なら、割引対象だろうと体に害など出ようはずもない。
ならばそれを堂々と買わずして何とする。
我はフードロス削減に協力する者ぞ。
そんな大義名分を得た、とは言い過ぎですが。
まあなんというか、「これは良いことなの、と素直に開き直る」ことはできるようになりました。
店側も廃棄となれば当然、中身も容器もゴミとして処分することとなり、手間と費用がかかります。
その額は馬鹿にならず、定価で売れるに越したことはないけれど、どんなに割引しても売れてくれたほうがマイナスは抑えられる。
客・店という立場を取っ払って考えてみても、割引商品を買うことは「まだ食べられる物を粗末にしない、無駄に捨てずに済む」ことに繋がります。
私は過剰なエコ活動はしませんが、食を大切にすることは人種や国籍の境をこえて、生きる者すべてが尊ぶべき、最大の事柄でありましょう。
生まれてから死ぬまで、人は食い続けるのですから。
「フードロス削減にご協力ありがとうございます」
この言葉が、いろいろな意味で、いろいろな立場の人の「救済」になればいいなと──。
スーパーでの買い物のひとときを通して、ちょっとだけ、そんなことを思いました。
スーパーの駐車場の車内で即興で書くと、書く論点がとっ散らかるなあ。