俺が国王になるので、国を幸せにします。②
数時間後、平民は中央広場に集められた。
都市にいる貴族は中央広場と城のテラスの間、貴族専用の場所にいる。
都市にいない貴族には今回発言する内容を書いた紙を送ってある。
もちろん言うことは聞かないだろうがその場合は…
俺のいる城のテラスにはジュドー、アルデール、カーサス、ベンジン、ニーナ、前国王の側近がいる。
「皆の者、聞こえるか」
俺の声は拡声魔道具で遠くまで聞こえるようになっている。
じゃあ近くの人間にはうるさいのではないか?
拡声魔道具は誰もが一定の音量で聞こえる代物だ、ダンジョンで手に入れられるものには感謝しないとな。
「国王スーロン・デール・カミシアは先ほど私にこういった、国王になりたければ力でわしを超えろと、だから俺は国王を殺した、よって俺が69代国王になる。」
観衆からどよめきの声が上がる
「承認は近衛兵の4人だ、ジュドー間違いないな?」
「はい、さきほど謁見の間を守護していた近衛兵からありのままを聞きました。」
「国王が自分で発言したことだ、何も問題はない」
「平民はあまり関係のないことだと思うだろう、国王が変わっても生活は何も変わらない、とだが違う」
「この数千年間、重税を課して苦しめていたことをここに謝罪する」
俺は頭を下げた。
遠くからだと見えないだろうが国王が平民に謝罪するなど威厳にかかわる
しかし威厳も何もないのだ、これから国は新しい一歩を踏み出すのだから。
「まず最初に奴隷制度の廃止だ、奴隷商人はすべての奴隷を連れて王城に来い、全てこちらで引き取ろう、その際に金銭を支払う、また今後一切の奴隷商売を禁ずる、その先については後日話をしよう」
「次に、冒険者ギルドは今後国の管理下に入る、名前はそのまま、しかしギルドの長はカーサスとする、現ギルド長は不正を行なっているため処刑とする、逃げたければ逃げればいい、だがこの俺から逃げられると思うなよ」
どこにいてもゲートで追いついて捕まえられるからな
「次に国税についてだ、現在収益の7割が税金になっているが、この先5年間は4割、その後は2割にすることをここで宣言しよう、見込みが経てばより早く、より少ない負担にすることも重ねて誓おう、今後国の財政はカルデールと協議し決めていく、国民の声を広く聞くためには彼が適任だ。」
「次に宗教についてだが崇める神は自由とする、俺はディーネ教に入信するが、無宗教でも他宗教でも構わない、俺はディーネ様より加護をいただいた、そして国を安寧に導く使命を授かった、今回の政策はディーネ様の導きである!」
「最後になるが謁見を平民貴族関係なく自由とする、貴族だから優先、平民だから蔑ろにすることはない、ただ一人一人こられても全員の話を聞けないのでな、意見をまとめて代表者が来るようにしてくれ、入り口に名前を書いて順番が来たら呼ぶようにしよう」
「これから国民すべての生活を豊かにするために尽力する、よろしく頼む」
平民たちのいる中央広場からは圧政から解放された喜びか、歓喜の声が聞こえた。
貴族たちは困惑しているようだったが国づくりには犠牲はつきものだ、今まで甘い汁をすすってきた分のツケを払ってもらわないとな
俺はテラスを後にし、皆を連れて王の間に戻る。
「さすがに疲れたな」
「お疲れ様です、カール様」
ニーナはポットに冷水を入れて持ってきてくれた。
「ありがとう、助かるよ。」
ジュドーは少し眉間にしわを寄せる。
「カール様、少し腰が低いなのではありませんか?周りからなめられては示しが付かないと思うのですが」
「偉そうにしていないと保てない威厳なら必要ない、欲しいのは平民からの支持だ」
「貴族の支持は必要ないと?」
「必要がないとは言わない、文字の読み書きができて人を扱うことにも優れている人材は貴族のほうが多いだろう、しかしこの国の人口比を知っているか?」
カルデールが間に口をはさむ
「貴族関係者が約1万人、平民が約150万人ですな」
「そう、各貴族が持つ兵士も指示を出すのは貴族だが戦場に出るのは平民だ、もし平民が反旗を翻して国を攻めたらどうなる、あっという間に国は墜ちる」
「行動に移さないのは戦後隣国から攻められる可能性があるからだろう、しかし皆の生活が豊かになればなるほど人は欲が出てくる、だから信頼という鎖で縛っておかなければならないと思っている」
「なるほど、そこまでお考えとは、失礼いたしました」
「明日からここには人が押し寄せるだろう、奴隷に対応はジュドーに、冒険者の対応はカーサスに、ディーネ教信者の対応はベンゼンにしてもらう、以前話した通りに動いてくれればいい」
「「「かしこまりました」」」
「アルデールは俺と一緒にその他の話を聞いてくれ、妙案があればその場で発言してもらって構わない、トニーだったか、お前も横についてくれ」
前国王の側近、トニー、貴族内部情報を一番知っているのはこいつだ、貴族も話に来るだろう、その時に役に立つ。
「か、かしこまりました」
「今日はここまでだな、明日からよろしく頼む」
そういって解散させ、部屋には俺とニーナだけが残った。
「ニーナ、此度の改革をどう思う、率直な意見が聞きたい」
「平民は感謝すると思われます、何より重税でなくなったことが大きいと思います、貴族はカール様に取り入ろうとすると思います、新しい改革に反対するよりもより何かうまみはないかと考えるでしょう」
嘘が通じないとわかっているからか素直に話してくれているようだった
「参考になる、ありがとう」
ニーナは一礼をして部屋を出る。
この後は親族での話し合いだ、まったく落ち着けないな・・・