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1983 某所
ここは、どこだろうか、俺は死んだはずじゃ…
「銀次さん、こちらがおじいさまから生前に銀次さんに譲ると言われていた財産になります。」
ここは、じいちゃんの葬式の後に遺産相続の文書を持ってきた人と話し合いをしていたところだ。
渡された紙を改めてみてみると馬に関するもの全てが俺に引き継がせることになっていた。牧場 土地 資金 馬はじいちゃんが病気になってから買うことも無くなり今はいない。従業員はうちで働いてくれてる調教師の天海凛さんだけだが、オーナーである俺も手伝いながら色々としていくから大丈夫だろう。
「銀次、あんたの好きなようにしなさい。もし継がないならそれはそれでいいわ」
うちの父親母親は放任主義でいつもじいちゃんといたから別に文句などを言ったりもせず、俺の好きなようにやらせてくれるらしい。
「俺は、じいちゃんの牧場と夢を継いでか事にするよ」
答えはもう決まっていた。俺はここからやり直すのだ!
1983 12月
俺は今北海道の静内に来ていた。じいちゃんの経営していた牧場の部屋に寝泊まりするためのベットなどを引っ越ししてきたのだ。搬入などは親がやってくれるようなので俺はこの時間を使って車で生前にじいちゃんと共にお世話になった人に挨拶回りをしていた。その中でも最も仲の良かったAさんの所に向かって車を走らせている。Aさんはじいちゃんよりと同期だったが年は少し離れていてまだ60代だ。一応息子が継ぐ予定でAさんの元で学びながら牧場主として働いている。しかし、基本的に全権をAさんが握っている敏腕牧場主だ。
Aさんの事務所前に車を止めて差し入れを持って挨拶をしにいく。
「お久しぶりです、電話で連絡を入れさせていただいた銀次です。まだまだ未熟者ですがよろしくお願いします。」
俺はじいちゃんの孫としてではなく、牧場主山岡銀次として丁寧に挨拶をした。
「久しぶりじゃのぉ、山岡のジィさんのことは残念じゃった。しかし、お主が継ぐならばまだまだ楽しめそうじゃの!」
Aさんはそう朗らかに言って肩を叩いてくれた。Aさんは葬式の時にも真っ先に駆けつけて泣いて悲しんでくれた情の熱い人だ。俺はこの人の優しさが本当に大好きで尊敬をしている。
Aさんと他愛もない話やここの馬がオススメ、うちの馬はどうだと色々な話をした。そんな時にAさんが真剣な表情で話を切り出してきた。
「銀坊よ、山岡のジィさんから生前に託された事があっての、もし銀坊が牧場を継ぐなら馬をいくつか伝手を紹介して買えるようにしてやって欲しいとな。これがそのリストじゃ、もし気に入ったのがあれば連絡をくれ。」
俺はそのリストを手に今日は帰った。