クトゥルフ神話を扱った作品 C市からの呼び声
クトゥルフ神話を扱った作品、小林泰三さんの著書「C市からの呼び声」の感想です。
「C市からの呼び声」には「C市に続く道」という中編と「C市」という短編が収録されています。
「C市」のほうが先の発表で、長編出版にあたり前日譚である「C市に続く道」を描いたそうです。
私も「C市」はまだクトゥルフに出会っていない頃、かなり前に読みました。そのときは普通のSFだと思っていましたが、充分楽しめる作品だったのを覚えています。
重要なネタバレはしませんが、作品の内容に触れていますので、気になる方は申し訳ありませんがご遠慮ください。
「C市に続く道」
クトゥルフの復活が近づいているんじゃないかと危惧される近未来が舞台です。
前述したとおり「C市」より後に描かれた作品ですが「C市」を読んでいなくても全く問題ありません。シリアスではなくギャグ風味なスプラッターもの、といった作風です。個性的なキャラクターとクトゥルフがストーリーを盛り上げてくれます。
「圧倒的恐怖」なクトゥルフをその名で呼ぶのが憚られ、作中、登場人物は彼らを「C」と呼んでいます。
Cが復活したら、Cと戦うぞ! という「打倒C!」なチームが「打倒C!」のための研究所を建設する場所を調査するため、寂れた漁師町を訪れるところからストーリーは始まります。寂れた漁師町っていうのがテンション上がりますね! ニヤニヤしちゃいます。
打倒Cを目指すチームのほかに、いやいや、Cと戦ったって敵うわけない。Cが復活したのなら、受け入れるのみ、という消極派や、そもそもCなんていない、という懐疑派がいて、それぞれのチームがそれぞれの動きを見せ、物語は進みます。
Cの復活が危ぶまれている割には世界終末的な悲壮さはなく、むしろどこか呑気な感じで、気楽に読み進められます。登場人物もろくでもない結末を予想させる、どこか間が抜けた人間ばかり……。
そして予想通りろくでもない結果「C」が復活して、いろいろドンパチやるのですが、とにかく食事をしながらこの作品を読むのはお勧めできません。とにかくグロいです。容赦なくグロいです。作者が実に楽しそうなのが伝わってきます。
「C市」
「C市に続く道」で色々あって、ついに打倒C! のための研究所が寂れた漁師町の跡地に建設されます。「C市」はその建設後のお話です。
あれ? Cがドンパチやった後じゃないの? Cはもう復活したんじゃないの? と思う方もいらっしゃるでしょうが、それはそれで、色々ありまして、まだCは復活しておらず、Cの復活を危惧する日々は続いております。
「C市に続く道」よりもかなり短い作品ですが、大変読みごたえがありました。オチも見事に決まっています。
クトゥルフ0パーセントのときは単なる異星人との戦いものだと思っていたのに、改めて読むとその面白さ倍増です。ラストもそうなるのかと、心に来るものがあります。まさに圧倒的なC。もっとクトゥルフの世界を知れば、きっともっと奥深くこの作品を楽しめるでしょう。
以上、私なりの感想でした。
クトゥルフ神話を扱った作品は数多くあるそうですが、そういうのって、いったいどんな風に作品に取り入れているんだろうと気になっていたので、今回は勉強にもなりました。なにより小林泰三さんのクトゥルフ愛が凄い! これでもかってほど愛が詰まってます!
気になった方は是非お手に取って小林泰三さんのクトゥルフワールドをご賞味ください。くれぐれも食事をしながら読まないように……!
これにて私のクトゥルフ記は一旦終わります。知ろうとすればするほど底がないような気がして……。ラヴクラフトは自分が亡くなった後、クトゥルフが世界中に広まったことを知ったら喜ぶかな? クトゥルフが広まったことよりも、友人たちが尽力して広めてくれたことを喜ぶと思います!
ではでは。ここまで個人的なクトゥルフ語りにおつき合い頂きありがとうございました!