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野菜ば良く噛みましょう

最近ずっと書いてなくて面白い?のが書けなくなっていたので、ちょっとリハビリに書いてみました


うん、はい。そんな感じです


僕の名前は八代伊吹。


どっちも苗字のようだってよく言われるけど、響きが良くてなかなか気に入っているんだ。


小中高と普通の学校に通い大学もそこそこで卒業、就職も上手くいってその祝いで食べた中華ラーメンに入っていた水菜を喉に詰まらせ御陀仏したっぽい。


仏教はあんまり信じていないから御陀仏じゃないかもしれないけど、とりあえずわかることは、喉に野菜を詰まらせたってことだ。

目の前に見えている花畑や川が俗に言う三途の川だとして、僕はまだその川を渡っていないようだから、もしかするとまだ死んでいないのかもしれない。


人間の死とはなんなのか。

コンピュータの電源が切れた状態みたいに死んだら自分が死んだことに気づかず意識が途絶えた状態になるのではないかと思っていたが、本当にこんなものがあるとは思いもしなかった。


透き通る三途の川を見て無性に喉が渇いてきた僕は、手ですくって水を飲んでみようとするも、水はまるでなかったかのように手をすり抜けていった。

川の中に口を突っ込んでも飲めないらしい。どうやらただ見えているだけで実態はないらしい。

いや、ゲームで言う見えているけどプレイヤーには触れないオブジェクト的な感じか?


川を渡って行く船を見ながらそんなことを考えた。


ーーー


三途の川の前に来てしばらく。

無表情でぞろぞろ船に乗って向こう側へ行く死人たちを見ながら僕は途方に暮れていた。

最初は三途の川を渡らなければ現世に戻れるんじゃないかと思い待っていたが、如何にもこうにも現世に戻れる気がしない。

三途の川をみたけど戻ってきたら植物状態から治ったみたいな話を聞いていたから、三途の川を渡ると言うことは生きるのを諦め死を受け入れてしまうと言うことだと考え渡らないようにしていたが、現世の人間は僕を治療してくれる感じではないのだろうか。

何日経ったのか、最初は美しいと思ったここも、今では飽きてきた。


変わらない風景、飲めない水、渡れない川、無反応の死人たちと事務的な橋渡しの死神たち。


治療も受けられてないのか現世に戻れずこれだけ時間が経てばおそらく肉体は死んでいるが葬儀をされていないのか、渡賃を持たされていないし、服も現世で来ていたまんまだ。

白い着物……あー、死装束だっけ?

自我がある自分とほかの死人たちの違いは死装束に身を包んでいるか否か。

多分これが、自分が精神まで死んでいない特徴なのだろう。

今まで20年くらい生きてきて空から女の子が降ってきたり、ステキな力に目覚めたり、そんな面白い出来事はなかったが、まさか死んでから目覚めるとは。


ぼ、僕にこんな力が……!


あああああ!!役にたたねぇ!マジなんだよコレ…ェ……いらな。


何というか、困ったことにこの力?のせいで船にも乗れないし川も泳げないのだ。


三途の川の橋渡しの船頭さんに渡賃なくても船に乗せてもらえるか試しに聞いたところ、オッケーをもらったのだがいざ乗ろうとすると船をすり抜けてしまったのだ。船頭とは言っても死神だが、彼らも不思議がっていたのが特徴的だった。


なんとかならないかって聞いたら、知らんとしか言われないっていう、ね。


それでこうやって途方にくれて、河原に座り込んでいたわけですよ。

はー。やってられないね。


あんなに死にたくないって思っていたけど、こんなに暇だと死んでもいいかな、なんて思えてくる。まあ川を渡れないから死ねないんだけども。


よくみてみれば、死装束に身を纏った死人たちはしばらくするとふらふら歩いて行ってしまっているのが見えた。

あまりにも暇なので、死神の手伝いをする意味もあって、列に並ばない死人たちの手を引っ張って列に並ばせていると、いつのまにか死人が来なくなって全員運び終えていた。


「お、君。半霊くんじゃないか?」


船から降りてきた死神が僕に話しかけてきた。


「あー、久しぶりです」


自分よりも目線一つ高い彼女は最初に僕が話しかけた死神だ。

僕のことをみて生きているようで死んでいると語り、半霊だね☆ってと軽いノリで言ってきたのだ。


「やーや、君のおかげで仕事早く終わったよ。どうだい?この後飲みに行かないかい?」


「えっ、いいんすか!ありがとうございます」


いつものノリで返してしまったが死んでる自分は食べ物は食べられるのだろうか。

川の水や船から透けてしまったように死んでも生きてもない状態では無理なんじゃないだろうか。

まあ、地面に立てているという例外もあるだろうが。


「あー、待って。ちょっと待って」


サラサラとした赤い髪の生えた頭を抑えながら、何かを思い出すようにタンマをかけた。


「うん、ダメだね。いや、あ!アレがあるじゃん」


うんうんと、一人で頷いて納得した死神は僕の右手を掴むと強引に引っ張って歩き始めた。


「え?ちょっと、どこ行くんですか?」


「ああそうだった。うん、君さ。半霊だからこのままだと一生彼処にいることになるかもしれないんだよね」


「は、はぁ」

マジかよ、ゾッとしたわ


「今日の働きっぷり見て思ったんよ、君を死神にしちゃえばいいやって!どうかな?良くない?」


「うーん、死神とか良くわからないんですけど、」


「死神は楽だよー。勝手に天国や地獄には行けなくとも現世に行ったり徳ポイントを貯めれば服を買ったり生まれ変わって新しい人生を送ったり出来て仕事は25日中に5日やればいいし、食べ物は美味しいしね」


な、なんか思ってた死神と違うんだが。

この死神もなんかチャラいなって思ったけど死神全体がこれなのか……。


「あれ、現世に自由に行けるって」


「んー、そう。君、自分が死んだ後どうなったか知りたくない?

もしかしたら、自分が死んだのを見たら成仏して天国に行けるかもよー」


現世!現世に行けるってまじかよ。

実体がないなら映画見放題、入場制限ないから侵入し放題。

神ってる。死神ってる!


「死神、なります!!よろしくお願いします。先輩!」


僕は死神に握手をして挨拶をした。

これからは先輩、後輩の中になるだろう。

べ、別に死神になるのに欲深い打算ばなかった……いいね?


「お、おう。いい意気込みだぞー!半霊くん!それじゃあ行こうか」



あくまでも僕としては先輩のお役に立ちたくて死神をするんだ。


死神をやっている自分を思い浮かべてちょっとやって行けるか心配になった。







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