君を殺す物語
キチセカとうとう堂々完結!?
目が覚めると、俺は人を殺していた。
何を言ってるのか分からないと思うがこれ以上に分かりやすい説明はきっとないだろう。
幸い、家の中での惨劇であったため騒ぎには至らなかった。
「トランシー...」
俺は目の前に死体として転がっている彼女に呼びかけた。
「俺はどこで間違えたんだ...」
宮は激しく後悔した。
最愛の嫁をこんな姿にした自分が果たして本物の自分なのだろうか。
アイデンティティを確立させるのがこんなに大変な事だったのかと彼は強く実感した。
「おめでとう、宮くん。もうすぐで7万回を迎えそうだね。」
瞬間、宮の後ろに一人の男。
ローズワインだ。
「ローズワイン。俺はいつまでこんなことをすればいいんだ?俺はいつまであの野郎の娯楽に付き合わされなきゃいけないんだ!何が7万回だ...。手を繋いだ数か!?キスした数か!?愛した数か!?それならどれだけ良かっただろうよ。もう沢山だ...。俺はこの世界線で死ぬ!」
そう言って彼は自分の喉に鋭利な物を突きつける。
しばらくは軽い痙攣を起こしていたが、すぐに動かなくなった。
「馬鹿なことを...。何度やっても君は生き返る。そして再びトランシーに手をかけるように世界は出来ているんだ。これは君一人でどうにか出来る問題じゃないのを自覚して欲しいものだ。」
次の瞬間、世界はリセットされた。
「ん...、うぅ。」
彼は再び目を覚ました。また同じことが繰り返される。また彼女を殺すことになる。或いは俺が殺されるかもしれない。酷い時は俺が彼女を食べた時もあった。今度はどうなるのだろうか。
「ここは、どこだ?」
宮はすぐに異変に気付いた。辺りが真っ暗だ。夜だから暗い訳ではない。周囲に何も無いのだ。
「お、宮くんお疲れ〜。」
目の前に一人の男。レコキチだ。
「今更何の用だ。レコキチ。」
「いやいや、そろそろ君も限界だと思ってね。まぁ、君と話をしたいんだ。」
「何をだ。」
「まず1つ言っておく。僕たちの世界は実は文字の羅列で出来ているんだ。」
何を言ってるのかが理解できない。いきなり変なところに連れてかれて、挙句の果てにこんなこと言われても聞く耳を持つわけが無い。
彼の右腕が飛んだ。
彼は発狂した後、何が起きた...?とレコキチに問いただす。
「!?うぎゃああああああああああああ!!!!!!!!あぁ、あぁ、、ああああああああああああああああ!!!!!」
「ん〜、いい音色だ。」
「レコキチ...、何が起きた...?」
「いい質問でもなく、悪い質問でもなく、普通の質問だね。つまらないなぁ君は。神様は君の台詞をミスっちゃって後悔しているそうだ。両手両足を外して償って欲しいそうだよ。」
そう言って今度は両手両足、全てが宙に舞う姿を宮は目撃した。宮は満更でもない感じに「痛いじゃないか〜」と言葉を放つ。
「こら!痛いじゃないか〜」
「ギャハハハハハハハハハハハハ!!!!最高だよ!!イカれてる!!!体の一部がなくなったのに顔色1つ変えないっ。凄い、神様ありがとう!」
「なんなんだよこれ...」
「今の君の台詞も神様の脚本のうちなんだよなー。」
「なんだと!?」
「だからそれも全部神様が文字で書いてることなんだって!因みに僕の台詞も全て神様の脚本。気が付いたか?この世界は全て神様の書いた文字の羅列で出来上がってるんだよ!」
「...。」
「凄いことじゃないか?僕らの心は僕らのものじゃない。神様のものなんだよ。おや、神様は僕に宮の首を飛ばして欲しいらしい。」
瞬間、宮の首が飛んだ。
「でも今度は君を空から落としたいみたいだ。」
そして空から宮が降ってきた。
「俺は玩具か!?」
「神様、ちょっと実力不足かな?あんだけ胸糞展開に晒された宮くんがこんな軽口言うわけが無い。神様の文章力が低いから読者は情景描写を理解するに苦労するんだよ?あ、これも神様が僕に言わせてるのか。アハハハハハハハハハハ」
この世界にこの世界の人の意思は存在しない。
「レコキチ...。どうしてお前はこんな事態で楽しんでいられるんだ?俺らが今まで見てきて、感じきたことが全て作り物だったんだぞ!?なんでそんなに平気でいられるんだ!」
「なぁに、それは僕というキャラが神様に好かれているからさ。僕には神様と直接通じている設定があるらしい。僕は神様が大好きだけど、神様も僕のことが大好きなんだ。そうでしょ?神さ...」
瞬間、レコキチの首がとんだ。やっぱり人を最大まで持ち上げといて一気に落とすのは気持ちがいいな。
宮は微かに呟く。
「な、何が...」
宮よ。
「か、神様の、声?」
お前には申し訳ないことをした。私が7万回トランシーを殺したと書くだけで君はその苦痛を背負うことになるんだったな。反省しよう。
「すまないですむか!俺に死ぬほど辛い思いをさせやがってっ!殺す!絶対に殺す!この気持ちが例えお前の文字で出来ていたとしてもっ!俺はお前を殺しに行く!!!」
そうか、だが残念だ。別世界同士の我々が殺し合うことなんていくら私でも不可能なこと。その代わり、この世界で叶えられる願いを一つだけ叶えさせてやろう。
「神様...」
私にはこれくらいの事しか出来ないけど、せめてもの救いだ。なんでも言ってご覧?
「俺は、俺は...」
そして彼は口を開く
「俺は、トランシーを殺したい」
これは、君を殺す物語