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これは読まない方が面白い
「結婚ってしてみたいなぁ。」
彼がどこでこんなことを呟いているかは当の本人にしか理解できない。三人称視点の説明を担当している僕からのアドバイスを一つだけ教えよう。今この段階で読者は状況判断すべきではないね。
「ちょっとローズワインと会話したくなってきた。」
そう考えてから彼は指を軽く動かした。すると、
「お呼びですか?レコキチ様。」
目の前にゼラムの代表格ロースワインが召喚された。
「あのさー、君たちのお陰で宮と菜々森ちゃんはめでたく結ばれたわけじゃん?でも、あのイベントをすっぽかしたせいでこのままだと僕の楽しみが終わっちゃうよぉ。」
「トランシーのことを全く考えずに、勢いだけで我々を動かすからこうなったんですよ?レコキチ様が未熟だったからとしか考えられません。」
「ムカつく野郎だな。別に宮と一緒にお前ごと消しても構わないんだよ?」
「も、申し訳ございません!」
「まぁいいよ。でも、そういえばトランシーってあの世界じゃまだ生きてたよね?ちょっと強引すぎるけど[根幹の集束]に持っていけなくはない訳だ。」
「ですが、そんなに上手くいきますかね?宮は菜々森さんの手のうちにあります。さらに宮自身もトランシーより菜々森さんを優先するはず。レコキチ様の計画はとても乱暴なことをご自身でも分かっているでしょう?ここから流れに乗らせるのには無理がありますよ!」
ローズワインはレコキチのこともちゃんと考えて強く当たっているようだ。たが申し訳ない。彼らが何を話しているか、三人称視点で物語に干渉している僕には到底理解できない。
「ローズワイン。君が思うより僕は多くの人材を動かせるんだよ?実感が湧かないだろうけど。」
「ですが...。」
「まぁ、この僕に任せなよ!なぁに、君を殺させはしないからさ。」
「分かりました。では、我々はどのように動けば?」
「そうだねー。まずは菜々森ちゃんを正気に戻してあげないとね。リョナ好きな自分にとってはまだまだ楽しい展開になりそうだ。」
彼らの脅威が再び宮を襲う。
「宮くん!おはよう!!!」
俺、立花宮は彼女の掛け声で目をしました。目の前にいるのは、
「あぁ、菜々森。おはよう。」
「朝ご飯作りすぎちゃったんだけどさぁ!宮くんだったらこの量食べられるよね?」
そこに並べられているのは机いっぱいに広がっている料理の数々。ステーキ、ハンバーグ、ラーメン、ハンバーガーなど、到底1人で食べ切れるものでは無い。
「いや、でも流石にこの量は...。」
「離婚します。」
「ご、ごめん菜々森!うほー♡全部美味しそうだ!!」
「ホント!?宮くんったら太っ腹♡」
「いただきます!モグモグ...。」
これは、凄く美味しい!!!どれを食べているかが脳に伝わる前に手が食べ物にもってかれていく。まるで麻薬みたいな...。
「うぅっ...!?」
なんだ?急に意識が...。
バタリ。
宮はその場で倒れた。食べ物になにか仕掛けられていたのだ。当然犯人は、
「宮くん、ごめんね?でもローズワインからのご命令なの。この2年間楽しかったけどお別れみたいね。」
菜々森の目からは涙が溢れ出ていた。
「はぁっ!!」
俺は目を覚ました。手足を鎖で縛られ、身動きひとつ取れない状態になっていることに気付き体の中を戦慄が走った。
(ここは、どこだ?俺は何をして...)
「宮くん!気付いた...かな?」
俺を呼ぶ声が目の前から聞こえたが、周りが真っ暗なせいで不安を煽る結果となった。
「この声、まさかっ!?」
「そう。宮くんの愛しの相手、菜々森だよ。ちょっと痛かったかな?」
「菜々森!?一体なんの真似だ!!!」
「動かないで。」
「っ!?」
彼女は腕を震わせながら俺に銃を向けた。その様子から少し躊躇っているのが分かった。
「その銃をどうするつもりだ?」
「さぁね?私が決めることよ。」
「手の震えは隠せないぜ。」
「なに?私に覚悟がないとでも言うの?」
「あぁ、君に俺は殺せない。知ってるさ。毎日俺が寝てる時部屋に忍び込んで、首をとばそうとしてたのを。」
「っ!?」
「菜々森、裏で誰が暗躍してるんだ?まさか、ゼラ...」
バァン!!!
「ぐああああああああああああ!!!!!」
横腹に衝撃が走った。俺は撃たれたのだ。
「宮くん。貴方、毎日同じ夢でも見てたの?」
「ど、どういうことだ...?」
「私が毎晩宮くんの命を狙ってたわけないじゃない。もしそうだとしても、じゃあなんで貴方はその時に何も動かなかったの?おかしいわ。都合のいい夢を現実だと思っていると足元を掬われるわよ。」
「く、くっそおおおお...。」
「アハ、アハハハハハハハハハハ!!!」
「まずい、やられ...」
「そこまでだよ!菜々森ちゃん!!!」
次の瞬間、菜々森の銃が宙を舞った。何者かに邪魔されたのだ。
「なっ!?一体何が...。」
「宮の世界の真理の力を使って異空間で処理しようとしたんだね。でも、私のことは騙されないから!!!」
「とらんしいいいいいいいいいい!!!!」
そう、目の前にトランシーが突っ立っていた。その姿は非常に誇らしかった。
「トランシー?貴方、私たち側ではなかったの!?」
「どういうこと?私は菜々森ちゃんと宮が結ばれる前から宮とずっと一緒だったんだからね!」
「なんですって!?レコキチ様は何をやっているの!?」
「トランシーは菜々森の勢力なのか?」
「ううん、違うよ。私はずっと宮の味方だから。」
「それじゃ、この鎖を解いてくれ!頼む!!」
そう言ってトランシーは俺の鎖を解いた。
「これで2対1。菜々森、こっち側につくなら今だぞ!」
「ふふ、笑わせないで!私には宮を殺すしかないの。この命、この魂が全てレコキチ様のものになってる...。貴方たちもいずれ分かるわ。心を縛られてることの絶望感をっ!」
「菜々森ちゃん...。」
トランシーは哀れんだ目で菜々森を見た。
「大体、なんでトランシーこそレコキチ様の呪縛がかかってないの!?貴方もこちら側のゼラムだって、あの人が...!」
トランシーは宮の方を見て少し微笑んだ。
「愛の力じゃないかな?」
「え?」
「私、宮が好き。大好き!結婚相手は菜々森ちゃんに譲っちゃったけど、私はこの時を待ってた。菜々森ちゃんがボロを出すところを。だから、ここで終わらせる!」
トランシーは持ってたナイフを彼女に投げつけた。
(ごめん、菜々森ちゃん!このままだとナイフの軌道は彼女のおデコ。勝った!)
「これはこれは、関心しないねぇ。」
瞬間、ナイフが無様に散った。
「え?」
トランシーに現状を理解出来るほどの落ち着きはなかった。
前方を改めて見る。菜々森の前にあの男が突っ立っていた。
「大丈夫だったかい?菜々森。」
「ちょっと...!一体どうなってるの、ローズワイン!レコキチ様の呪縛がトランシーにかかってない!それと、なんで貴方がここにいるの!?」
菜々森はローズワインに向かって質問を押し付ける。するとローズワインは、
「あぁ、成程。実は僕ね、レコキチ様から新しい指示を貰っているんだ。」
「え?なによそれ。」
菜々森はローズワインに尋ねる。彼はこう答えた。
「菜々森、早速だが君には死んでもらう。」
「え?ちょっと、それってどういうこと!?」
「トランシーだけでは少々スパイスが足りないらしい。レコキチ様は無類のリョナ好きなのは分かっているだろう?君が残酷に息絶えるところも見てみたいそうだ。」
「そんなこと言われても...」
そう言ってローズワインは菜々森を真っ二つにした。すぐに彼女は痛みに気付いた。
「いやあああああああああああああああああああああああ!!!!!」
「いいぞ、もっと叫べ!ローズワイン様が興奮するようにな!」
「ああああああああぁぁぁ!!!!いや、いやあああああああ!!!」
「ほうほう、私も少々興奮してきたぞ。」
「やだ、やめて...。何でもするからああああああああぁぁぁ!!!」
その様子を宮とトランシーは動かずにじっと見ている。
「何が、起こっているんだ?」
「分からない。でも、菜々森ちゃんはもう長くは持たなそう。」
宮はすぐに動いた。
「待て!ローズワイン!!!」
「なんだね宮くん?まさか、止めようと言うのかい?」
「いや違う、俺にやらせてくれ。」
ローズワインは驚いた様子で宮の方を見た。
「フハハハハハハ!!!それでこそ宮くんだ!それとも知ってるのかい?この世界の真理を。」
「なんだそれは?俺は今から彼女を殺すだけだ。」
理由は分からない。だけど、俺の心が彼女を求めている。これは悪い気持ち。それなら、欲が満ちる前に彼女を殺す!
「まぁ待て。レコキチ様は彼女を痛振ってから殺してほしいそうだ。宮くんには悪いけどもう少し待って...」
「いい加減黙ってくんね?」
そう言って俺はローズワインの首を跳ねた。最高にうるさかったのだ。殺して当然。
そうして俺は菜々森の所に近付いた。
「宮くん...、こ、殺すなら...、早く殺して...!」
「そっかぁ、そんなに潔良いのかぁ。これじゃ萌えないなぁ。」
「宮くん、何を言って!?」
「ん?あぁごめん。今の俺、宮じゃない。レコキチだよー。」
真っ先にトランシーが反応した。
「ちょっと、宮!?何言ってるの!?」
「だーかーら、宮じゃないんだってば。今まで君と宮が互いに求め、食べ合ってる様子を客観的に見るのが好きだったんだけど。ちょっと満足出来なくなっちゃったんよ。」
「さっきから何を言って...。」
「だから今回は食事シーンを主観的に見ようとして、宮の体を乗っ取ったのぉ。そして菜々森を食べようとしたら、彼女潔くて、少し萎えたかな。だから、このまま寝かしとく。」
「もう、訳が分からない...。」
トランシーは今の状況に嗚咽した。
「分かんなくて正解だよね。だって呪縛かけてないんだもん。これまで君に全てを理解させてから宮を食べさせたけど、なにも理解出来ずに絶叫しながら宮に食べられるトランシーも気になってたんだ。」
「それで、貴方はどうするの?」
「次の世界に行く。君を喰らい尽くしたらもうリョナを楽しめないからさ。新しい世界で君はまた宮に食べられてもらう、あるいは食べてもらうよ。」
「ふざけないで!!そんなんじゃ、私たちの生活は...。」
「あぁ、大丈夫。記憶はちゃんと消してるから。次の世界では宮が食べたくて仕方がなくなってるよ!」
「いやあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
レコキチが世界を眺め回す。まるで、自分の世界のように。