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基地の外で異世界転生  作者: 即札
4/7

絶望を呼ぶローズワイン(前編)

〜22:34 謎の広場〜


「諸君、よく集まった。」

その声で奴らの視線は彼に釘付けになった。

なにかが動くのだろうと、そしてなにかが始まるのだろうと、「ゼラム」の期待が跳ね上がっているのが一瞬で分かるほど大衆は高揚していた。

彼は大衆に向け言葉を放つ。

「私はレレアンベルク・ローズワイン。かのゼラムの始祖アーメルによって皆の象徴へと導かれた存在。まぁ、言うまでもないがな。」

熱狂。

ゼラムたちの興奮は止まることを知らない。

「我々の目的である全世界の救済は困難を極めている。我々の他の追随を許さぬ圧倒的な力、人間族との価値観の違い、そしてその2つから生まれる悪の根幹が我々だという定義。そこで我が御先祖パールニキは人間との理解を諦め、忌まわしき種の殲滅へと志を決めた。その決意から13年、我々ゼラムがどのような事態に発展しているか」

ゼラムの1部は叫ぶ。

「人間どもにコテンパンにやられています!」

「我々の数が減っていく限りでござる!」

「もうこんな生活は嫌よ!」

その男ローズワインは言葉を詰まらせた。そしてすぐに調子を取り戻し、

「今言葉を発したもの達はこちらに来たまえ。」

大衆がゾワゾワ騒ぎ出した。だがすぐにことは起きた。騒いでいたゼラムの一人が一瞬でローズワインの後ろに迫っていたのだ。

「ローズワイン様。私でございます。」

「ほほう、貴様か。問うて良いか?」

「コレチキの名のもとに。」

「人は敵か?」

「...。」

ざわめきが止まった。答えの真意になにがあるのか。価値観の原点に振り返ることで我々の立場を再認識するためなのか、はたまた、人という種族について見つめ直す意欲と時間を生み出すためか。大衆は考えた。やがてそこにいたゼラムは答えた。

「はい、もちろんです。資源枯渇や種の激減は勿論、我々の間で特攻に挑み勇敢な最後を迎える悲しき風習も流行っております。人間は我々の邪魔でしかないんです!」

「そうか、では死んでもらおう。」

一瞬だった。

どよめきが広場を囲った。

彼の血肉が無惨に飛び散る。目の前の現象に腰を抜かしたゼラムもいたが、その光景は芸術的で美しいなにかを連想させた。

「人は我々を理解しようとしなかった。だが、それは我々にも言えたことではないのか?諸君らが厳しい現実に向かっているのは承知の事実。だがそれしか見ていない。人との関係の先に何が見えるのかを考えようとしないのだ!そこで私は考えた。相手からの良好な関係が望めないのなら、それを踏まえた上で一度彼らと話し合う機会が今必要なのではないだろうか。人を憎む気持ちは分かる。だが今はその想いを押し殺して欲しい。どうか私に力を貸してくれ!」

「「「「うおおおおおおおおお!!!」」」」

彼らの新たなる戦いの幕開けであった





「ちょっとぉー、いい加減にしてよぉ。」

「頼むよ〜トランシー、君しかいないんだ!」

この俺、立花宮は非常に困っている。一言でまとめると人気が出すぎたのだ。ゼラムは人間にとっての最大の脅威。そいつらを討伐できる者の評価というものは跳ね上がる。全く、こっちとしては面倒臭い限りなんだが。

「君が僕と手を繋いで街を歩けばいいだけなんだ。そうすれば女だけでも寄ってこなくなる。」

「嫌よ!貴方と歩いてたら私が冷たい目線で見られるじゃない!私のことちゃんと考えてよ!」

「そっかー、じゃあ他の女に頼もうかなー。エリザべなら引き受けてくれそ...、!?」

ビンタされた。

「もう知らない!宮のキ○ガイ!」

「いい加減にしろ!!!」

俺は家を出ていった。




「全く、アイツには世話を焼かせる。」

気分が晴れない俺は1人で街を歩くことにした。途中、周りからサインを頼まれて大変な目にあったが、それ以外は特に何も無い散歩だった。

奴らを見つけるまでは。

「ちょっと、なにあれ!?」

一般市民がザワついている。やれやれ、どうせ大したことでもないのだろう。分かっているのだ。皆の非日常は俺にとってなんの刺激にもならない。俺は仕方なく彼らの方を向いた。すると、

「人間諸君、私はゼラム代表ローズワイン。訳あって貴様らと交渉しにきた!」

そこにゼラムがいた。

「ゼラム、覚悟!」

俺はすぐに彼の懐に入り込み、首をはねようとした。しかし、

「往生際が悪いでは無いか、宮くん。」

直後に斬撃。

一瞬にして俺の短剣、スタースターズが折れた。

(こいつ!?今までのゼラムとレベルが違う!一体なんなんだ!?)

「いつもならここで君を殺しておくのだが、今は人間共と話がしたくてな。」

「何が目的だ。ローズワイン。」

「簡潔に言おう。君らと共存がしたい。」

直後、混乱。

大衆は一瞬にして震え上がった。

泣き崩れる人もいれば、泡を吹く人も現れた。それほどゼラムというのは人間にとっての恐怖の象徴だったのだ。俺は皆の不安を支えるような答えを導かなければならなかった。

「一体、何人もの人たちがゼラムに殺されたと思ってる。俺たちがそんな戯言許すと思っているのか?」

「そうか宮くん。君は彼女にも同じことが言えるのかい?」

へ?

「何が言いたい...?」

「なぁに、簡単な事だ。君の彼女もゼラムだってことを言いたいだけ。」

「馬鹿なことを言うな。」

「じゃあ自分の目で確かめてみるかい?宮く〜ん?」

すぐに気付いた。トランシーが目の前に囚われていたのであった。檻の中に!

「宮あああああああああああ!」

彼女は泣いていた。

「私、宮なんて死んじゃえって思ってた...。私の心が何一つ分かっていない宮なんて嫌いっ!そう思ってたの...。でも、それは私のワガママな性格を否定する為の都合のいい言い訳に過ぎなかった!私、どうすればいいの...。」

「フハハハハハハハハハ!檻の中に入って気付く愛ってか!?何一つ分からないねぇな人間というのは!」

「貴様ああああああああああああああ!!!」

我慢の限界だった。

「まぁまぁ、驚くのはまだ早い。例の液体をかけろ。」

「了解であります!」

奴ら、トランシーに何をするつもりだ?

「これは真実を演出する水。違う姿、違う人格に化かされている生物を10分だけ素顔に戻すものだ。さぁて、トランシーはどうなるかな?」

「そんなことになんの意味がっ!」

「ミヤァ。」

トランシーの声が聞こえた。

「トランシー!今助けに...」

檻の中を見た瞬間。

憎悪に萌えた瞬間。

剣を抜いた瞬間。

俺は戦慄した。

檻の中にトランシーがいない。

そこにいたのは一体のゼラム...。

「ミヤ、ワタシノ、テキ。タベル。」

「!?」

さらにローズワインは衝撃の一言を告げる。

「さぁ、我が妹よ。檻を破って出ておいで。」

「ハイ。オニイサマ。」

「!?」

何が起きている。トランシーはゼラムなのか?そして、お兄様?トランシー、俺が間違っていたのか?

「ミヤ。ちぇっくめいとヨ。」

彼女の牙が俺を襲う。

俺たちの戦いはこれからだ!

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