トランシー、死す
俺は彼女、トランシーが好きだった。街で遊んだ時も、討伐クエストで協力した時も、同じベットで一夜を過ごした時も、とても言葉に表せないくらい大好きだった。だからその分悲しみが俺を襲ってきた。
「ゼラムだったのか.......、トランシーっ!」
「騙してごめんねぇ。でも、楽しかったのは事実なんだぁ」
「クソが!!!」
俺は空に向かってそう叫んだ。
瞬間、トランシーの触手が首元を襲ったのが理解出来た。このスピードにこの火力。まずい!殺される!
「......」
「......、あれ?」
触手は俺の喉に触れる直前で止まった。一瞬理解に苦しんだが、すぐに気付いた。なんでか決まってんだろ?俺を殺すのを躊躇ったんだ!!!彼女は例えゼラムだったとしても、俺に対する気持ちだけは偽りなんかじゃなかったんだ!!!
「チャンス!!!」
すぐさま俺は彼女の懐に入り込んだ。危機が迫るトランシーは体勢を立て直したがすぐに手遅れ。
チョンPA☆
俺はトランシーの首を跳ねた。
危なかった。情を持ち込んでしまったのがトランシーのミスだったのだ。
実は嬉しかった。彼女は俺のことを大切な人だと思ってくれたのだから。あぁ、不幸なトランシー。いつかゼラムを全滅させてやる!!!
「おい、これはどういうことだ」
左方より声。間違いない。ぜラムだ!
「俺が殺った。貴様らに制裁を加えるのは俺だ」
「じゃあ、まずはコイツを正してみな」
ゼラムは片手でつまんでいたものをこちらに放り込んだ。人間なのはすぐに理解出来たが、誰なのかを思い出すのは少し時間がかかった。
「お前は、あの時の脚をくじいた奴!」
彼はすぐに反応した。
「貴様が憎いっ!正義の道理を貫き、我が身を犠牲にしてまで市民を守り抜いた代償の怪我を侮辱しただけでなく、さらなる負荷を膝にかけたっ!そこでゼラムに捕まりこいつらの指示に従わなければ即殺される始末。ここまで惨めな思いをしたのは初めてだ。この気持ちは貴様を葬ってはらさせてもらう!!!」
「黙れ」
人の首を飛ばすのは簡単だった。すごく柔らかいんだ。
「あとはお前だけだ、ゼラム!!!」
「ふはははははハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、折角だ!貴様には我がゼラム拳法奥義を披露しよう!!!」
そう叫んだゼラムを見ても、何をするのか分からなかった。
瞬間、
「げーむおーばーダ」
理解出来なかった。視線が宙を舞っているんだ。綺麗な青空を俺の瞳に焼き付けている。.......。
自分の首が跳ねたことに気付いたのはすぐだった。宮の頭は中身の血を美しく撒き散らしながらゼラムの血肉となるためにゼラムの口に吸い込まれた。
「美味美味、強者の頭は美味いのう!ふはははははハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
ゼラムは笑っていた。正義のヒーローだった立花宮をこの手で葬れたのが嬉しくてたまらなかったのだろう。
「この街はもうすぐ終焉を迎える。人間共の生への執着はこのゼラムに最高のメロディを奏でてくれるだろう。今夜はそれを堪能しようではないか。」
「そこまでだ、ゼラム」
ゼラムは聞き覚えのある声を耳にする。そして衝撃を受ける。目の前には頭を食された立花宮が何事も無かったかのように突っ立っていたからだ。
「貴様、なぜ!?」
「愛、俺のトランシーに対する愛!哀しみ、トランシーを失ったことに対する哀しみ!怒り、貴様らゼラムに対する怒り!それらの気持ちが現世に留まることを許したんだ!!!」
ゼラムは少なからず困惑していた。こいつ、狂ってやがる!!!
「お前で終わりだ!ゼラム!!!」
チョンPA☆
ゼラムの首を跳ねたのは一瞬だった。
少し経ってから俺は叫んだ。
「勝った...、勝ったぞ!!!俺は街の平和を守ったんだ!!!」
路地裏から人々が出てくる。ぜラムが全滅したことを悟ったようだ
「宮様がゼラムを倒したんだ!!!」
「宮様〜!!!ありがとう!!!」
「一生ついて行きます!!!」
全部聞きとるのが不可能なくらいの歓声が耳に響いた。俺はこの瞬間のために生まれてきたのかもしれない。大切な人を失った。けれどそんなことはどうでもいい!!!大事なのは未来なんだ!!!
ありがとう、ゼラム!ありがとうトランシー!俺の栄光は永遠に!!!