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第19話〜超常の檻

…………。


今夜は分厚い雲が空を覆い隠しており、月明かりはほとんどない。


さらにやや風が強く、物音や足音などが聴き取りづらくなっていた。


先日の侵入者の存在から、城の至る所に魔道具による灯りが設置されており、経路上はネズミ一匹横切るだけですぐさま発見されることだろう。


しかしそれはつまり、経路上を外れてしまえば魔道具の灯りは届かず、光がより深い闇を生み出していると言うことでもあった。


現に結界を抜けて侵入した賊たちが身を隠すほんの十数メートル横を、巡察中の兵士たちが気付いた様子もなく通り過ぎて行く。


「それでは手筈通りに。何かあれば信号を出せ」


「「「はっ」」」


一様に闇夜に溶け込む黒い装束を身に纏った一団が、数人ずつのチームとなって音もなく散っていく。


その数は20は下らないだろう。


城壁の外には連絡員が残っているが、それを除けば正真正銘全戦力だ。


残されたのは司令塔の男と全身をローブで覆った小柄な人影のみ。


「ミラージュ、お前はいつも通りだ。障害は全て排除しろ」


「はいはい、了解」


先ほどまでの訓練され統一された者たちと比べ、一人異質な存在。


装い以前に醸し出す空気がどこか異質だった。


しかし司令塔の男は気にした様子もない。


「いいか、動くのは合図が出てからだ。勝手な行動は慎め」


「分かってるって。ほんと、お国の兵隊様はお堅いね」


飄々とした様子で、しかし音も気配も無く、ミラージュと呼ばれた人物は夜闇に混ざるようにして姿を消す。


司令塔の男はため息をつき、そして移動を開始する。


彼らの存在に気付いている者は、ただ一人を除いて存在しなかった。


…………。

…………。


度重なる誘拐及び暗殺の失敗。


しかし裏を返してみれば、毎度惜しい所まではいっているのは事実だった。


策はいくつか無駄になった。


しかし組織の総力を挙げれば達成する事はできるはず。


仮に失敗したとしても、この国の王族はしばらくは夜も怯えて過ごす事になる…。


司令塔の男からの報告を受けて暗部の総戦力を投入することに決めた上層部は、そんな判断で男たちに死地へと向かわせた。


故郷から遠く離れたこの地で、どこの誰かも分からないように命を捨てる。


暗部に配置された時点で覚悟はできていた。


しかし…


男たちの覚悟など蝋燭の火のように簡単に吹き消す超常がいることを、彼らが知る由もない。


…………。


(おかしい、いつになったら合図が来るんだ)


侵入してから10分ほど。


城内に侵入した仲間からの合図が一向にやって来ない。


手筈通りであれば今頃、巡回中の兵士を無力化した仲間から合図があるはずだった。


(まさか失敗したのか?いや、だったらすでに騒ぎになってるはずだ)


城は静まり返っており、騒ぎが起きている様子もない。


遠目に動く巡回中の兵士が持つ灯りの動きにも変化はない。


(手間取ってるだけか?クソ、時間がなくなるぞ)


いかに厳しい訓練と実戦を生き抜いてきた本国の精鋭とはいえ、国の中心とも言える王城で騒ぎが露見すれば生きて帰れる確率は相当に低い。


より早く、短い時間で任務を達成せねば、彼らに待っているのは異国での惨めな死だけなのだから。


(仕方ない、信号を…)


開始早々だが、不測事態を表す信号を出そうとする男。


しかし…


(なっ…!体が動かない!?)


男の体は意思とは裏腹に指一本として動かすことはできなかった。

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