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君の音  作者: 綿花音和
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アイ・ガット・リズム

 久しぶりに南ピアノ教室に行った。最初に、南先生に謝った。

「ずっと練習来なくてごめんなさい。心配かけました」

 私は絞り出すようにそれだけを言った。南先生は

「よく来たね、智子ちゃん。良かった良かった」

 と笑顔でおっしゃった。

 南先生の顔を見たらほっとして、やはり自分にとってこの教室が大切な場所なんだって改めて気付いた。

「智子ちゃんの音がだんだん大人びてきたから不安になっているんじゃないかって心配していたの」

 南先生が控えめに言う。ずっと私が来ない間も先生は心配して下さっていたんだ。感謝で胸がいっぱいになった。だから、余計に申し訳なくて自分を責めそうになったけど、先生に思い切って相談することにした。

 「私、中学に入ってから楽しい音が出せなくなって。自分の気持ちも、ピアノ弾いてても楽しいだけでなくて色んな感情が浮かぶようになって、なんか音が曇ったみたいで抵抗があったんです」

 勇気を出して先生に打ち明けてみた。すると

「それは自然なことなんだよ、智子ちゃん。情緒が豊かになってきたといったらわかるかな。人には色んな感情があるよね。嬉しかったり、怒りだったり、悲しかったり、楽しかったり。もっと言いたくない感情だってあるよね。嫉妬だったり憎しみだったり」

 先生はゆっくり私に語りかけた。


「はい。認めたくないけど自分の中に嫉妬とかむかついたり色んな感情があって、向き合うことも出来なくて。挙句ピアノとどう接していいかわからなくなってしまったんです」

 私は自分の悩みをやっと吐き出すことができた。


「智子ちゃん、楽器を弾くことはね自分と向き合うことなんだよ。あとは智子ちゃんの心一つだよ」

 先生はとびっきりの笑顔で言ってくれた。

「まだ技術的には難しいと思うけど、ショパンの『幻想即興曲』練習してみなさい」

 課題を出された私はあんな難曲自分に弾けるのかと思いながらもうなずいていた。





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