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覚醒  作者: 中島 遼
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亀裂1

前作の続編で、第二部といったような内容になります。引き続きよろしくお願いいたします。


なお、今までのテキストも含め、このままでいいのか、何かしらもっと工夫がいるのかなどがわからなくて不安ですので、もし、こうした方がいいよ、とか、ここが変とかなど、ご意見をいただければ嬉しく思います。

 後藤に家に送ってもらった後、高津は崩れるようにベッドに倒れ込んで眠った。

 だが、翌日になっても身体が動かず、熱も高かったために結局近くの診療所に行って、熱中症様の症状との診断を受けた。

 点滴を受けると症状が和らいだので、そのまま彼は家に帰ったが、

(……気を失ってた方が楽だった)

 身体の状態が回復すると、不安感が再び増大してくる。

 病院に運ばれた村山が何時死んでもおかしくないような状態であったことを彼は知っていた。

 同時に、生きる気力すらほとんどなくしていたことも……

(……だけど、何かあれば瀬尾さんから連絡があるはず)

 携帯を充電し、高津はずっとそれを部屋で眺め続けた。

 途中、何度かメール着信音が鳴り、そのたびに高津は電話を速効で取ったが、

(……なんだ)

 また島津だ。

 予備校に来ない彼に、どうかしたのかというメールが三本。

 他には大西から一本、後は中学の時の友人からのくだらない内容のものが一本。

 瀬尾の電話番号を携帯の電話帳から選んだが、思い直して高津は枕に顔を伏せた。

 激しい不安に胸が潰れそうだ。

「……圭介、大丈夫?」

 ノックとともに母親が部屋に入ってくる。

「ご飯は?」

「いらない」

「……熱は?」

「もうないけど、食欲もない」

 母は机の上に目をやった。

「でも、せめて飲み物は飲んでおいた方がいいと思うよ」

 いらないお世話だといいかけ、高津は時計を見た。

 そろそろニュースの時間だ。

「……居間に行くよ。そこで何か冷たい物を飲む」

「そうね、そうしなさい」

 机の上のお茶を一旦引いて、母が部屋を出る。

 その後について、高津は居間に向かった。

 そうしてスポーツドリンクを飲みながら、さりげなくテレビを見る。

 しかしニュースは政局がどうのとか官房長官がどうとかいうものしかやってない。

(……赤尾が殺されたことはまだニュースにはなってないのか)

 天気が安定していないので、山に登る人がいないのかもしれない。

 それ以外に特に何もなかったことに安心しながら高津は部屋に戻る。

 そしてうとうとしながらも、その夜は携帯を握りしめて過ごした。

 だが、翌日になっても何の連絡もない。

 新聞を確かめ、そしてニュースを見て、そして携帯を眺めるだけの時間がただ流れる。

(……萌はどうしているんだろう)

 根本的に引っ込み思案の萌は、きっと高津とは別の意味で誰とも連絡を取らずにじっとしているのに違いない。

 電話をかけてみようとして、高津はかける言葉を持たないことに気づいてそれもやめた。

(……畜生)

 何も出来ないもどかしさは、時間の進行をただ長いものに感じさせるだけだ。

 とりあえず彼は立ち上がり、食事を摂った。

 そして昨日と同じようにニュースをチェックし、携帯の着信に神経を尖らせる。

 そうして三日目、元気になったからと予備校に行く振りをして、高津は北の町に向かった。

 目指すは暁のマンションだ。

 電話をしてからとも思ったが、どうしてかそれを彼はやめた。

 細川と村山のバトルの時に、何となく妙な混線があったのが気になったのだ。

(多分、多分きっと村山さんは大丈夫。助かる)

 心の内に呟いて、彼はバスから外の景色を眺めた。

 不安感はまだある。

 ただ、昨日までのものとは明らかに胸騒ぎの質が違う。

 そのことに高津は戸惑った。

 村山が彼から離れていくという恐怖に変わりはない、が……

「ごめんください」

 呼び鈴を鳴らすと、驚いたことに後藤がドアを開けた。

「な……」

 高津が二の句を告げずにいると、後藤は嫌な顔をして彼を家の中に招き入れた。

「誤解するなよ、俺もさっき来たところだからな」

「仕事は?」

「今日はオフだ」

 言葉を続けようとした彼は、リビングにぼおっと座っている瀬尾を見つけてそのまま黙った。

 たった数日なのに、彼女は相当やつれたように見える。

「圭兄ちゃん!」

 走ってきた暁を抱き上げ、高津はそのまま抱きしめる。

 どうしてだか、気持が一緒だとわかったのだ。

「……おはようございます」

 彼が挨拶をすると、瀬尾は驚いたようにこちらを見た。

「高津君?」

 しかし、蒼白な顔は瀬尾の美しさを損ねることはなかった。

 むしろ切羽詰まったような瞳は一種怪しくも見える。

「あ、ごめんなさい、私ったら」

 慌てて立ち上がろうとする彼女を高津は手で制した。

「こちらこそ、お疲れの所を勝手に上がり込んで済みません。ただ……」

 瀬尾は頷いた。

「本当は私から高津君に状況がどうなっているのかを連絡しなきゃいけなかったのに、放っていてごめんなさい」

 低い声に、本当は来るべきではなかったのではないかという後悔が若干頭をもたげる。

 と、側に来ていた夕貴が高津のシャツを引っ張った。

 そして彼を椅子に誘導し、座らせると彼の膝の上に乗る。

(……夕貴の定位置は村山さんだったのに)

 もちろん夕貴は今、高津を同志だと認識しているはずだ。

 だからこそ、彼とくっついていたいのだろう。でも、

(……暁じゃなくって?)

 顔を覗き込むと夕貴は頷く。

(どういうことだろう)

 しかし、深く考える前に後藤が机を叩いたので、高津の思考はそこで停止した。

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