chapter1―接触―
学校に急ぎ足で向かう。前回自殺が起こったのは昼休みだったが今回もそうとは限らないからだ。梨紗に聞いたところ、自殺した生徒の名前は綾香というらしい。仲が良いというほどではないが、たまに話したりする程度の関係らしい。
学校に着くとちょうど2時間目終わりの休み時間だった。丁度いいと特に教師に挨拶もせずに隣のクラスへ向かう。教室の入口から適当な知り合いを呼び止め声をかける。
「このクラスに綾香っていう子いたよな?ちょっと呼んできてくれないか?」
「綾香?ああ、彼女なら朝のHRの後姿を見てないな・・・。保健室にでもいるんじゃないか?」
彼女はどうやらちゃんといるらしい。この世界で死んでもループの度に生き返るらしい。つまり、ループに巻き込まれているのは飛行機という単位ではなく、少なく見積もってこの学校の2年生全員ということだ。僕は礼を言ってそのまま梨紗と一緒に保健室に向かうがもちろんそこに彼女の姿はなかった。そうだとは思っていたが念のためだ。そのあとは保健室とは逆方向の屋上へ向かう。だが待ち受けていたのは決して開きそうにない重い鉄扉だった。一見、大人の男でも開けるのは厳しそうだ。鍵らしきものは見当たらない。僕は意を決して鉄扉を全身を使って開こうとする。梨紗も手伝ってはくれたがそれでも扉はびくともしなかった。果たして綾香という女子生徒はこの鉄扉を果たして本当にひとりで開けることができるだろうか。いや、無理だろう。彼女が超マッチョだったなら話は変わってくるが流石にそこまでマッチョではないだろう。多分。
「梨紗、一応聞くけどその綾香って子は超マッチョだったりはしないよね?」
「・・・しないよ、普通の子だよ」
一応聞いてみるとジト目で見られてしまった。となるとどういうことなのだろうか。某なんたらバスターズのふわふわしたヒロイン顔負けの屋上へ向かう裏ルート的手段でも持っていたのだろうか。そこで僕はあの時の状況を思い出す。
『屋上から飛び降りたらしい』
僕が聞いたのはそんな伝聞だった。教師はそれについて大々的に言及することはなかった。彼女が飛び降りたのは本当に屋上からなのだろうか?僕はそんな疑問を抱いた。この校舎は4階建てであり、1階層ごとの高さは少し高めだが飛び降り自殺に用いるとすれば4階か屋上の二択だろう。3階だと死ねずに重体どまりになる可能性が高い。
僕らはそのまま4階へと降りると見取り図を確認する。
「―あった」
僕は呟くとそのまま少し急ぎ足で目標の場所へと向かった。梨紗は僕の意図を理解してはいなかっただろうがそれでも何も聞かずについてくる。そして僕が立ち止まったのはとある教室の前。中から人の声は聞こえない。当たり前だ、ここは空き教室なのだから。僕がここの空き教室へ一直線で向かってきた理由はここが唯一この階で誰もいない上に生徒が自由に出入りできる場所だからだ。ほかの教室や廊下から飛び降りたなら屋上からという噂は立たないだろうから誰もいない教室から飛び降りたのではないかと考えたわけだ。この階には特別教室も多いが普段は施錠されているため除外しても良い。だとすれば彼女が飛び降りた可能性があるのはこの空き教室だろう。この推理を空き教室前で梨紗に教える。
「でももし本当に屋上から飛び降りたんだったら?」
「・・・その時はその時考える」
僕らが行けなかっただけで彼女は本当に屋上から飛び降りたのかもしれないが、どうせ行けない場所を考えても仕方ない。
「あれ、開かない」
僕はドアをスライドしようとしてドアが開かないことに気づく。空き教室は基本的に誰でも自習や部活で使えるように解放されているはずだ。
「やっぱり誰かいるみたいだ」
梨紗も頷く。僕は鍵のタイプを確認して安心する。中学時代の教室の鍵と同じタイプだった。だとすればあの方法で開けれるはずだ。僕はドアに特定の角度から力を加えそして思いっきり開く方向へスライドする。
「・・・開いた」
この方法は中学時代の悪友から習った方法である。となりでは梨紗がポカンと口を開けていた。そしてドアを開けた向こうには一人の女子生徒。
「綾香さん、であってるよね?」
彼女は驚きを隠せない表情のまま頷いた。