chapter1―思考―
目が覚めて少なくとも過去5週分の記憶を取り戻した僕はその記憶の全てを吟味するように思い出していく。梨紗は僕の2週目の記憶の時、既に4回も死を繰り返している、耐えられないと言った。その時僕はその言葉の意味を理解してはいなかったがそのような発言があったのは確かだ。つまり梨紗は僕より2週分多い記憶を保持していることになる。そして3週目の時彼女は僕に対して抱いていた想いを告白した。その時僕はその想いを受け入れた。4週目は彼女が僕と積極的に同じ時間を過ごそうとしていたのを思い出す。たとえ僕が覚えていなくともこれから何度来るかわからない最期の時を一緒に過ごそうとした。
そしてこれが僕にとって6週目、梨紗にとって8週目の世界。僕は梨紗に過去5週分の記憶は取り戻したと伝えなければならない。ただし急ぐ必要はない。なぜなら僕たちの乗る電車はいつも通り決まっているのだから。
僕はゆっくり支度をしながら思考を進める。僕が、いや僕たちが目指すべきはこの永遠に繰り返される墜落までの一週間から抜け出すこと。まずはこの繰り返しの理由を見つけるべきだろうか。繰り返されるのには理由があるはずだ、と考えるのはもしかしたら楽観的かもしれない。偶然に起こった謎のオカルト的現象に偶然に巻き込まれただけならば理由を探ること自体が無意味だ。ならば方法から攻めていくべきだ。折角何度も繰り返されるのだからその回数を利用しない手はない。僕たちには無限に等しい時間があるのだ。
そして僕は前回のことを思い出す。自殺した生徒たち。少なくとも僕の記憶で4週目まで自殺するような生徒はいなかった。おそらく自殺した全員が記憶を保持しているだろう。そして自殺まで追い込まれた最初の生徒はおそらく僕や梨紗より多くの回数を繰り返し様々な方法を試したのだろう。そして繰り返すうちに自殺にまで追い込まれた。もう一つの集団自殺に関しては一人の生徒が自殺に踏み切ったことで元々緩んでいた死への意識が緩んだ結果だろう。確かに、この状況は自殺することで逃れたいと思う人も出てくるだろう。
問題は彼女らがこの世界にまだ存在しているかだった。既にいないならば本当に死んでしまったにせよこの世界からは抜け出せたことになる。学校に着いたら隣のクラスの自殺した生徒のところへ話を聞きに行こう。僕は彼女のことを知らないが梨紗なら知っているかもしれない。梨紗も知らなかったときはその時何か策を講じればいい。それにこの1週間に限っては人生は1度きりではないのだ。何度だろうと抗い必ずここから抜け出す。梨紗と一緒に。今までの何も知らずにこの世界を繰り返した僕とは違う、今ここにある自分。この世界と戦うために必要な意志を僕はもう持っているのだから。