魔法学園2
全員がハア?と言う顔になる。
「正直、俺は魔法を知らない。いや、正確にはお前達に教えるレベルの魔法を知らない。そんな俺がどうしてこのクラスの担任等になったのか、俺が教えてもらいたいくらいだ」
「全く、話になりません。即刻学園長に抗議をしてきます」
教室から出て行こうとするアソロ。
「ただ!俺が教師になったのは事実。そしてそれが事実であるならば俺はお前達を教育する気だ。俺のやり方でな」
立ち止まり、アンブロの声に再び耳を傾ける。
「意味が解りません。教えるべき魔法を知らないあなたが私達に何を教えると言うんです」
彼女の問いはここにいる生徒全員のものだった。
「そうだな……。それじゃ、お前は将来何になるつもりだ?」
「私ですか?それは決まってます。この学園を卒業し、宮廷魔術師になります」
「無理だな」
俺は即答する。
「なっ!?何故あなたにそんなことを!!」
アソロは憤慨するが、気にせず俺はそれに言葉を重ねる。
「知っているか?宮廷魔術師になれるのは70人と決まっている。お前が高等部を無事ストレートで卒業したとして、後4年後。そのときにおける宮廷魔術師の空きは精精5席がいいとこだ」
「何を適当なことを!」
俺は肩をすくめ、手に持っていた生徒名簿を机の上に放る。
もう名簿はいらない。
話している間に、生徒全員の名前を見て、既に覚えていた。
後は顔と名前を一致させるだけだ。
「宮廷魔術師マッターズ・アノリ、バリアン・クライト、ソルブ・メイガ、ヘイド・ケイ、ケスターク・アンリ。この5人がその年に引退する予定だ。
しかし宮廷魔術師の引退ほど不確かなものは無い。
魔術師は年を追うごとに魔力を強め、魔法研究の成果を上げて力をつけていく。
引退しないと言えばある一定の成果さえ認められれば、騎士などと違って定年と言うものがない。
それにお前以外にも宮廷魔術師候補は山ほど控えている。
それらを押しのけて宮廷魔術師になれる程のものであれば、お前の名前はすでに国中が知っている魔法使いでなければならない。
残念ながら俺はお前の名前を今の今まで知らなかった。
可能性は、ほぼ0といっていいだろう。
なれたとしても20年、下手すると30年後のことだ」
アソロは顔を真っ赤にして食って掛かってくる。
「くっ、何故そんなことが言えるのですか!もしかしたら宮廷魔術師の人数を100人にすることになるかもしれないじゃないですか!」
「ないな。何故なら国税がそこまでの魔術師を確保できないからだ」
「国税?」
一転して疑問の表情をとる。ころころと忙しいやつだ。
黙ってれば可愛いのかもしれないがな。
「そうだ、魔術師は当然ながら国の税金で養っている。
その研究費用も莫大なものだ。それを一人増やすとなると、地方の村3個分の増税が投入されることになる。
北も南も西も戦争は硬直状態で、どちらかと言えば侵略されいる我が王国において、これ以上の民への増税は望めない。
ましてや領土を広げ、それだけの税金を確保する手段が無い。
それを30人も増やすだと? 無理だな。 解ったか? これが現実だ」
「あなたは、いったい何者ですか?そんなことまで知ってる子供なんて……」
ハッ!?今度は驚きの表情で口を押さえるアソロ。
「マキシス……。なんで気がつかなかったんだろう。マキシスといえば3大貴族の……。そしてそこまで国政に詳しい子供……。シバリーンの神童」
「え?本当?」「マジかよ!?」「あの子が?」
今まで黙って事の成り行きを見ていた他の生徒も一緒になって驚きの声を上げる。
「と言うわけで、俺の自己紹介は改めてするまでも無いな。
俺がお前らに教える期間は短いかもしれないが、他の教師では教えられない、そう、これからのお前達の将来、この国の未来での生き方について教えてやろう」
こうして俺の授業は始まった。