魔法学園
ここは王都にある魔法学園。
国中から魔法の素質を持つ優秀な子供を集め、魔法を教える教育機関。
朝の朝礼で全校生徒の前に俺は立っていた。
「え~では今日から中等部3年Sクラスの担任が長期休暇に入るということで、臨時担任を紹介いたします」
いかにも魔法使いと言った白い髭を蓄えた学園長が(服装は茶色のスーツだが)、後ろを振り返って俺を促す。
「さあ、アンブロシウス先生、挨拶をどうぞ」
自信を持って紹介された俺だが、当年とってまだ8歳。
『あれ?俺なんでこんな所にいるんだろう。立っている場所間違ってない?』
まだ、困惑した顔を浮かべて俺はスピーチ台へ上がる。
残念ながらマイクに背が届かなかった俺は、屈辱にも足場を持ってきてもらってそこに乗る。
「あ~あ~、え~」
生徒全員の視線がものすごく集中する。痛い、かなりイタイ目だ。
なんかとんでもないものが出てきたって目だ。
「以上!」
そして俺はスピーチ台から降りた。
生徒の殆どがその場でズッコケた。ノリのいい人達だ。
ことの発端は母からのお願いだった。
あまりにも子供らしくない俺の将来を心配した母は、父に脅迫にも近いお願いを申し出て、桁違いの魔力を持つ俺を魔法学校に通わすと言うことだった。
父は当然のように母に負け、国政の方はいいから学園に通う手続きを取った。
当然見た目は子供、頭脳はおじさんな俺は子供らと学校にいくのなんて嫌だったが、父が母を説得するまで、と言う期限付きで了承した。
しかし、何故教師?
どうしてこうなった?
いっちゃ~悪いが俺は魔法を殆ど使えない。
覚えるのが面倒だったというのもある。
最低限必要なものは覚えているが。
例えば火を起こす魔法や水を出す魔法。
野宿や迷宮で必要になるであろう最低限の魔法しか知らない。
この学園で言う小等部程度の魔法だ。
なのに中等部3年、それもSクラスって……エリートクラス。
どうしろと言うんだ……。
あれよあれよと言う間に授業が始まる。
「というわけで、今日から臨時の教師として担任をすることになったアンブロシウス・マキシスだ。呼び方は男はアンブロシウス様、女性は愛称でマッキーと呼ぶように。質問はあるか?」
怒涛のように生徒達はハイハイ手を上げて質問を述べようとする。
「ないようだな。では授業を開始する」
完全に無視することにした。
「待ってください!納得できません!」
一人の女生徒が立ち上がって抗議の声を上げる。
短く切った金髪に碧眼。顔の作りは端整で、間違いなく美少女の部類に入る少女だ。
「君は?」
「レイナ・アソロ。中等部生徒会長を勤めています」
「で?そのアソロ君は何が納得いかないと?」
「何もかもです。なんであなたのような子供に私達が教えを請わなければならないのか、納得できる説明をしてください!」
「尤もな話だが……、その答えは俺も知らん」