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準備

 2時間程会議が続き、一段落したところで会議の終了となる。


「さて、それじゃ父さん用意したら行くよ」


「ああ、本当にいつもすまないな。お前にばかり迷惑かけて」


 俺の横に来た父さんは、少し困ったような顔をして寂しそうに見える。


「母さんが怒るだろうからそっちは頼むよ。買い物は街で済まして行くからね。帰ると離してもらえないだろうから・・」


「そうだな、メイリンには私から言っておく。今度は何日口を聞いてもらえないのか……」

 父は溜め息をつき、肩を落とす。


 これからのことを思うと泣きたいのは俺の方なんだが……。


「アリス。父さんと帰ってて。それと父さん。これお土産」


 アリスが俺の頭から父の肩に飛び移る。


 俺は懐から徳利を取り出して父に渡す。


「ほう。バルマス村の酒か。よく手に入ったな」


 父も酒は好きで、普段は高級なワインかウイスキーだが、こういう果実酒もいける。


 さっきまで行っていた村で作られる果実酒は、あの村では珍しいものではないのだが大量生産しているものではなく。外にはあまり出ないものだ。


「アリスも欲しがってるから少し分けてあげてね。じゃあ行くよ」


「ああ、姫の事頼んだぞ」


 俺は父とアリスを背に走り出した。




「今回は何階で追いつけるかな~」


 王都に戻ってくるのに1時間、会議で2時間、用意で1時間。その間の細かい時間含めて5時間近くは経っている。


「前回は姫が潜って4時間で68階だったから、今回は……80階くらいかな?」


 降りるほどに強さが増していく迷宮から考えて、そんなものかなと思う。


 ちなみに迷宮の底は解っていない。


 古文書などによれば666階層まである、とか書いたものがあったが、行った人もいないのだから詳細は不明だ。


 シバリードの王城は山の上にあり、それを囲むように王都が広がっている。


 全体で10km近くなる町並み、外縁部の農村まで含めれば30km近くなるだろうか。

 かなり大きな都市だ。


 取り敢えず5日分の携帯食料を用意し、もう一度王城に向かう。


 王城までの道の途中、山の中腹辺りに迷宮の入り口がある。


 門番の騎士達に挨拶して入る。


 8歳の子供が一人で来るところではないが、既に姫のために何度も入っているので既に顔パスだ。


 迷宮の入り口は巨人でも入れるような石造りの壮大なもので、何時見ても圧倒される。


「さて、走りますか」


 当然ながら途中のザコモンスターは無視。


 姫は目に見える全ての敵を切り、笑いながら走っているだろうが、俺はそんな面倒くさいことはしない。


 この世界はゲームではないんだから敵を倒してもLVUP等というものはしない。


 あくまで自己鍛錬でしか能力は上がらないのだ。


 それゆえ迷宮に入るものは、あくまでも宝やモンスターの材料目当てである(まあ戦闘訓練にはなるるのだが)。


 強力なドラゴンの素材から作られる剣や防具は、それ一つで10家族世帯が余裕で一生遊んで暮らしていけるお金になる


 ちなみに姫はお金目的ではないから、もったいないことに倒したモンスターの素材は全て放置して進む。


 一攫千金目指して迷宮に入るものが後を絶たないが、殆どのものは低階層のモンスターの素材でその日暮で落ち着く。


 何故ならこの世界には空間魔法が無い。


 だから行きも帰りも徒歩なので、あまり奥まで行くと食料も尽き、帰ってこれないからだ。


 迷ったり遭難しても、階層が深いと誰も助けに行けないし、来ない。


 全て自己責任なのだ。


 ただ、……一部の……そう、入っていったのが「馬鹿な姫」を除いてだ。




 王宮の隠し通路の出口は迷宮の3~5階層くらいにある。


 「王家の血の契約」と呼ばれる魔法で閉じられた隠し扉は(単に王家の魔力にしか反応しないだけだが)、正しく王家の血筋のものにしか開けられない。


 その扉は、見定めの儀式(王家血縁者か確認する儀式)にも使われたことがあるらしい。


 一度開けてしまえば、閉めるまでは誰でも出入りできる。


 当然俺は王家の血筋ではないから、正規の入り口から入る。


 身体強化を施し、風のように迷宮の奥に向かって走りはじめた。

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