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神童

「ただいま~、父さん」


 ここは王宮の会議室。


 気軽に扉を開けて、家に帰ってきたような声をかけて入る俺だが、十人近くの国政に携わる貴族の面々が集まって会議をしている。


「おう、丁度良かったアンブロ」


 恰幅のいい髭を生やした、貴族というより神官様っていう感じの男の人が俺に手を上げ、席から立って近づいてくる。


 俺の父、マダル・マキシス公爵(こう見えて32歳)だ。


「解ってますよ。姫でしょ」


「何時もながら話が早い。すまないな」


 蓄えた髭を僅かにシュンとさせて、すまなさをアピールしてくれる。

 細かい芸当だ。


「もう7回目ですからね。流石に慣れま……いや、慣れるわけがないな」


 もう何度目かの溜め息が漏れる。


 『運』等、不確定要素は好きではないが、幸運というものがあれば、逃げてしまって無くなりそうだ。


 先程から少し口調が丁寧になっているのは、無意識に出てしまう家柄というものか。


「それで、前回指示したように迷宮への隠し通路は全部埋めたんでしょう?」



 俺の目(使い魔)は万能ではない。


 城にいるネズミの何百匹かにかけているが、基本的に姫の姿は追いきれない。


 ネズミ達は本能から姫を恐れて、姫を目にしてもすぐに逃げてしまうからだ。


 おかげで姫の動向を逐一知ることが出来ない。


「その隠し通路なんだが、確かに埋めたのだが、剣で掘ったみたいなのだ……」


開いた口が塞がらない。そこまでしますか……。


「今度から姫のストレス発散は、街道整備のトンネル掘りにでもしましょう」


 会議室の面々が、「まったくだ」というように頷く。


「さて、姫を連れ戻しに行く前に、北部ケネスの砦の人的被害はどうでしたか?」


 8歳の子供が、3大貴族にして摂政の父がいるとはいえ、この会議室に入ることさえ出来ることが可笑しいのだろうが、城の皆は既に当たり前のように思っいる。


 これからする会話も国政に関わることだが、当然のように俺を含む全員で議題として話が進む。


「ああ丁度そのことで話し会っていたところだ。お前の言うとおり帝国からの接触があった。事前に知ら

されていたおかげで戦力の増強を図っていたので、被害は最小限に治められた」


 会議の面々、貴族達の一同が頷く。


「そうですか、それは何より。それでは行く前にもう少し詰めておきますか」


 俺は開いていた自分の席に座り、父や皆が席に落ち着いたのを確認すると話し始める。


「先ずは、西のマルクトーでの生産状況と物資の購入についてですが……」




 この国に住むものなら誰もが知っている、しかしその姿を目にしたものは少ない。


 王都シバリーンに生まれたることより、「シバリーンの神童」と呼ばれる少年がいる。


 生まれた時より言葉を解し、その魔力は計測不能。

 その慧眼は全てのものを見通すとまで言われ、僅か5才にして国の中枢会議に出席し、並み居る貴族に国の指針を示した、とまで言われる。


 その真意は兎も角、民衆の間で噂にはなっても、王族でもない彼を公の場で眼にしたものは少ない為、王城に勤めているもの以外、その顔を知るものは少ない。


 そう、俺だ。


 別に大したものではないのだが、喋るのは転生者だし(ちなみ何故かこの国の言葉も文字も日本語だし)、魔力は俺の知ったことじゃないし(勝手に高かっただけだし)、国政についてはファミリアー覚えて眼を広げまくったら国の一大事を(後々語る)幾つか知ってしまって、知らせないとこの国が危なかったしといろいろと重なっただけで、どちらかといえば父の威厳が大きかった七光りと言えなくもない。


 まあそんな訳だが、城での俺のポジションはかなり高い。


 年齢的に役職は辞退させてもらったが、王や貴族は将来的に俺を縛りつけようとするだろう。


 面倒なので成る気は無いが……。


 まあ、どちらかといえば一番に俺を欲している理由は、姫のお守りなのかも知れない。


 他のことであれば誰かが代わりを出来るのかもしれないが、あのジャジャ馬姫を諌められるのは俺しかいないと、城の誰もが納得している。


 勘弁して欲しい。


 確かに姫は美人だ。


 あんなに綺麗な人間は、なかなかいないだろう。


 天使や精霊を除いてだが。


 ただ、それでもだ。


 いいか?普通に考えて前回のダンジョンでの3日で思い知らされたが、男の前で目の下に隈を作り、汗でべっとりとなった髪の毛や張り付く服が痒いのか頭等を掻きむしり、最後にはあまりの眠気でハイテンションになったのかケケケと笑いながら戦う姿を見てどう思う?


 そりゃ~確かにキングゴーレム前にして風呂&睡眠休憩もあったもんじゃないだろうが、俺の美しい女性に対する幻想が飛んだわ。ほんと。


 あいつ(もう姫とすら呼ばない)は見た目美女、中身ゴリラの転生者に違いない。


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