ステイマン推参 その1−4
サテライトからポッドが射出される。中にはトレイシーが乗っていた。
[大気圏を抜けた。後、一分で目的地に着く。状況を知らせて][現在、警察、メディア、やじ馬が混然になっている][早いのね。目を付けられてたの?][まさか。奴等とて暇じゃ無いだろ。何処かで洩れている。情報が][ネットとか?][あり得るな。誰かの指示で会社が占拠された。だとしたら不当な利益を取られていた子会社か、強制労働されていた従業員か][ポッドを離すわ。帰還経路を分析して][わかった。デリートを許可する。後は俺が追うから]トレイシーはポッドのハッチから飛び降りた。
黒いレザースーツにピンクのライン。青いヘルメットの女が空を飛ぶ。[目的地確認。入り口は入れないわ。屋上から入るから。ブースターを展開する]
腰のベルトのボタンを押す。
シューッ。背中から翼が出る。白い鳥の様な翼だった。
スタッ。屋上に降り身を屈める。[ブースター解除]ベルトのボタンを押す。レザースーツにまとわりつく様に翼が収納される。太股から拳銃を抜き、中に入る。
[占拠している場所は特定出来た?][イヤ。生体信号で探ってくれ][了解。サーチ機能。作動]トレイシーのヘルメットに信号が受信される。[ブレイカーは落とされているみたいね。ポイントは掴めたわ。この下のフロワー。階段で行くわ]トレイシーは恐る恐る階段を降りる。
[この扉の向こう。壁を隔てた所に三人。少し離れて社長。計、四人。行くわよ][待て!トレイシー。念のため、扉に盗聴器を仕掛けろ。後で証拠になる]ポケットから丸い球体を取り出し壁に付ける。
[社長!あんたはやり過ぎた。年貢の納め時だ。冥土の渡し船位、くれてやる][フン。組合か。こしゃくな。良いか。この会社は誰のだ。俺のだ。君らの給料も、地位も名誉も全て、会社の物だ。おかしくないかね?謀反など。一生償う覚悟があるのかね?無駄な従業員よ][ウルセーッ!何度も話し合いの機会は作ろうとした。だが貴様はことごとく誤魔化した!こけにし、バカにし、ハイエナの如く蝕み。見てみろ!その結果がこの動乱だ!俺達はあんたらの不正の為に働いてはいない。いっそ斬られるが良い]
[スチャッ!バスバスッ!待ちなさい!]トレイシーが扉を開けて入って来た。[社長さん。見過ごしていた訳では無いわ。監視していただけ][何者だ?][日本政府最高機密。ステイマン。ステイマン トレイシーよ][ニッ………日本政府?まさかあの………][そう。私は犯罪者を裁く為に造られた。ただそれだけ。干渉はしないわ。選びなさい。死刑か刑務所か][ヒッヒーッ………まさか監視されていたとは。子会社から不当に利益を巻き上げていたのも。従業員をごみくずの様に酷使したのも。全て][証拠はあるわ。今、警察署だけど取りに来る?][ヘナヘナヘナ………わかりましたよ。直ぐに出所できますから][ガチャン!ならコレと代わらないわね。直ぐに済むわよ][ケッ…………拳銃!わかった。自首する。命だけは][ガシャーン!ここは八階よね。落ちたら痛いのかしらね]窓ガラスを撃ち破り社長を抱える。[ヨセヨセ!話せばわかる][ワイヤーアーム。転送。行くわよ。処刑へのカウントダウンかしらね]トレイシーは窓ガラスから外へ飛び降りる。
ツシューッ。ワイヤーに吊るされたトレイシーが降りてくる。
[ドスッ!自首するらしいわ。後は任せたから。私は彼等に聞きたい事がある。少し借りるから]ワイヤーを巻き取り八階に戻る。[さて、次は貴方達ね。何処で集まったの?インターネット?][俺達は自分の意思で………][そうも簡単に都合が合わせる訳は無いわ。一体、誰が指導者なの?][あんた、知らないのか?人民革命軍だよ。頻繁に暴動が興ってるだろ?奴等の仕業さ][人民革命軍?その本拠地は?][知らねーよ。俺達はシタッパだもんよ。会社を潰せって命令…………ウグッ………グガガガッ]悶える三人。やがて力が抜ける。
[人民革命軍。私の知らない世界。奴等の仕業がコレなの?]
[ボス。始末しましたわ。まだ気づかれていません][随分と大胆な犯行だな。まあ良い。よう済みだ。毒牙のレオパルド。戻ってこい]
続く