本編
次の日、学校に行った。
このクラスは悪くはないのだけれども、良くもない。
どっちだというツッコミはなしだ。
悪くないからと言って、良いとも限らない。
言葉で表現するなら平均的で普通なクラス。
つまりサボる理由も見つからなかったので当たり前に登校していた。
「え~、皆さん。席に座って下さい。今からHRをはじめます」
どうやら教師が来たみたいだ。
クラスは、相も変わらずガヤガヤとしていた。
「今日は、皆さんにお知らせがあります。今まで病気で来れなかった赤沙さんが来ました。皆さんと会うのは初めてなので優しく…」
クラスの声が一時停止した。
「赤沙って誰だよ?」
「アガサ・クリスティー?」
「転入生か。可愛いといいな」
クラス中から様々な声が聞こえる。
誰も病気に触れないのは、聞く耳を持たないせいなのだろうか?
ボクが知る由もない話か。
そういや窓側の席がいつも1つ空いていたっけ。
この時期に来るとは、赤沙も大変だな。
「赤沙さん、入ってきてください」
視線が扉に降り注ぐ。
扉を開けて入ってきたのは…昨日会った彼女だった。
「可愛いな。ラッキーじゃん」
「病気してましたって、感じの子ね」
「よっしゃー!!」
話をちゃんと聞いている奴もいたのかと驚きつつ、クラスメイトということにちょっぴり驚いた。
見たことがなかったから、知らなかったわけか。
見ていたとしても、係わり合いがなかったと思うけど。
どっちでもいいことだ。
「初めまして、赤沙田奈です。」
分かりやすいくらいに簡潔な自己紹介だった。
言い終わると、早く先に進めろよと担任に視線を送っていた。
「…え~赤沙さんは、あの窓側の席に座って」
「ええ」
掴みとしては、どうなんだろうね。
「赤沙さん、隣の席の眞澄だけどよろしくね」
「あら、よろしくね」
「分からないことがあったら、気軽に聞いてね」
「ええ、分かったわ」
最小限の言葉しか持ちいらなかった。
「赤沙さんの髪、黒くてキレイね」
「ありがと」
「凄く細くてモデルみたいねー」
「知ってる」
性格の悪さが前面的に出ていたが、昨日ほどでもなく饒舌でも辛辣でもなかった。
昼休みも女子たちに昼食を誘われていたが、なぜか断っていた。
何を考えているのだろうか。
まあボクが心配することでもないだろう。
そして、放課後。
見雪貴遊は、クラスで2人きりになったのを見計らって話しかけることにした。
「やあ、お前と一緒のクラスだったんだな。今まで知らなかったよ」
「そうね」
「冷たいな。せっかく、クラスのみんなが明るく話しかけていたんだから、そっけなく返すことはないだろう。もっと言い方があるだろう?」
「知らない人が喋らないで!!インフルエンザに掛かってしまうから治療費を寄越しなさい」
「クラスメートだろが!!人の話を聞け!!」
「昨日のクリーニング代を含めると、だいたい20万ってところねっ」
「高すぎるだろ!!一般生徒に多額の要求をしすぎだろ!!」
「2000円でいいわ。早くだしなさい。」
現実的な金額を突きつけてきたのはマジで取るつもりなのだろか。
ボクの手持ちはあんぱん1つ分しかない。
「この後は、なんて言うのかしら。あぁ忘れてしまったわ。えーと…死ねばいいのに」
「いきなり死刑宣告!?」
ボクの扱いが酷すぎやしませんか!?
「バカとは付き合ってられないわ。もう帰る」
そういい残して帰ってしまった。
ボクはどうしてこいつに話しかけたのだろうか。
自分でも分からなかった。
次の日も次の日も、赤沙田奈のとる態度は変わらなかった。
冷たくて、そっけなかった。
初めはクラスの女子もたくさんコミュニケーションを取っていた。
そう、普通に溶け込んでいる様にも見えた。
赤沙田奈の隣の席である、眞澄はおせっかい焼きだから、溶け込めないはずがなかった。
眞澄は、クラスの誰に大しても等しく平等の優しさを提供している。
それは、見雪貴遊にも同じく、赤沙田奈にも同じのようだ。
女子以上に盛り上がっているのがクラスの男子だった。
長い艶のある黒髪
綺麗な顔立ち
大人びた雰囲気
氷の女王として、男子では話題騒然だった。
あるクラスメイト曰く、
「赤沙田奈様は、このクラスのオアシスだよ。ぶっちゃけ、学園で1番のお方だよ。見た瞬間に、俺の心に旋律が走っちまったよ!これが恋って奴かな!?」
秘密裏に、赤沙田奈ファンクラブが出来るとか出来ないとか。
今の時代にこんなものがあるのか疑ってしまうが、事実なため受け入れるしかなかった。
あの猫がぶりは何のためなのだろうか。
放課後に、赤沙田奈と話して思う。
「貴方、毎日毎日私のストーカー止めてくれる?学校が終わった後に、なぜ2人きりにならないといけないのよ!!さっさと消えなさい」
「勉強をしてるんだよ!見て分かるだろ!!」
「あ~ら、貴方のことだから勉強をする振りして、淫らな妄想をしているに違いないわ!いえ、絶対そうよ!このアブノーマルが!!」
「1人で勝手に話を進めるんじゃない!赤沙こそ淫らな妄想をしているじゃないか!!」
「この可憐で美しいこの私が、妄想をするですって。何、悪いの!!」
「開き直ってんじゃねぇーよ!!」
いや、このままでいいのかもしれない。
見雪貴遊は、思った。
ある放課後に、見雪貴遊は言った。
「赤沙は、いつも最後まで教室に残っているのはなぜだ?特に用事もなく、外ばっかり見て」
赤い夕日が沈みかけた頃。
「貴方だって、いつも最後まで残っているじゃない。ガリガリと必要のない勉強をして、楽しいのかしら?」
時間で言うなら、最終下刻30分前。
「勉強を楽しいって言う奴は、いないだろ。やりたくないね」
「なら、なぜ頑張っているの?まさか大学進学の為とでも言うのかしら」
「…当たり前だろ?やらなくていいなら、俺はガリガリしていない」
「あらそう。なら私は、やらないわね…将来なんて見たくもないわ」
赤沙田奈と話していると時々、意味深な発言をしている。
見雪貴遊は、気にはなったが、あえて聞こうとは思わなかった。
「もうそろそろ下校時刻ね。最後に、貴方のバカさが詰まったノートを見てから、帰る事にするわ。どうせ赤ペン先生よりも赤いんでしょ」
トコトコとこちらに向かって歩いてくる。
「おとなしく帰れ!!真っ直ぐ教室から出て行け」
そう距離は離れていない。
「あら、つれないわね。もうだから あっ…」
バランスを崩したのか、見雪貴遊の耳元に飛び込んできた。
「ど、どけよ…。い、いきなり飛び込んでくるんじゃない…」
正直、驚きは隠せなかった。
「あら、貴方ってこんなにも可愛かったのね。意外だわ…」
顔を近づけてきて、突然に目を瞑った。
「な、なんだよ!?いきなり目を瞑るなよ!おい!!」
赤沙田奈に声をかけても、返事なかった、ただの屍のようだ。
じょ、冗談じゃない。
見雪貴遊は、考えていた。
赤沙田奈がいきなり飛び込んできた。
何に躓いたのかは、さっぱり想像できなかったが鼻の息が聞こえるくらいに近くにいることは事実だ。
周りには机と椅子しかなく、赤沙田奈がそれくらいの物に足を取られるものなのだろうか。
仮に躓くことは、あるのかもしれない。
体調が悪かったり、睡眠不足などで。
しかし、見雪貴遊が考えていたことは、いきなり目を瞑ったことだった。
見雪貴遊は、てっきり理由もなしに暴言を吐くと思っていた。
「貴方が座っているのが悪いんだわ。さっさとくたばりなさい!!」
「この変態が!!生きているだけで貴方は卑猥よ」
赤沙田奈は、そういう人間だったと記憶している。
この記憶が間違っているのだろうか。
今の現状は考えられなかった。
ただ無意味な時間が過ぎていく。
もし、赤沙田奈が見雪貴遊に好意があるとする。
好意があるとするならば、可笑しくはないのかもしれない。
現に放課後に2人きりという状態になっている。
今日だけではなく、ほぼ毎日。
なぜ残っているのかを1度も考えたことがなかったが、もしかしたら機会を窺っていただけなのかもしれない。
見雪貴遊に想いを伝えるために――
ボクは思春期らしい行動に移した。
好意には大しては、行為で返すしかないだろう。
ボクは、赤沙田奈を押し倒すことにした。
バタン。
簡単に倒れた。
簡単に倒れた!?
地面が床であることを考慮して優しくしたつもりだが、少なからず音が出てしまった。
舞台は誰もいない教室だ。
人がいないだけに、微かに聞こえる音すらも、この世界では大きく響いてしまう。
それよりも驚いたのは、眼を瞑っている赤沙田奈だ。
未だに罵詈雑言が飛んでこない所を見ると、ボクは大人の階段を今日も昇るかもしれない。
隣の吾郎さん。
ボクは子供じゃないよ。
さて、初めはキスからだな・・・
静寂の時間の中で、1つの物音が聞こえた。
そう教室の扉を開ける音が聞こえたのだ。
「…………………………」
「…………………………」
3点リーダーのバブルが到来したみたいだ。
場が凍りついた。
実際には、時間は動き続けるものだから凍りもしない。
ただ見てはいけない父と母を見た感じがする。
「………悪い」
そう言って退場した。
時間にしては、一瞬の出来事だった。
しかし、見雪貴遊にとっては、初めての遭遇だった。
「中だしはしないでって言ったのに……あら、誰か来た気がしたのは目の錯覚かしら」
「……………」
赤沙田奈が、離れようとしているが馬乗りなので動けなかった。
軽く焦っていた。
「貴方が、こんなにも意気地なしだったとは思わなかったわ。この美少女を前に、手も足も出さないなんて、ただのクズね。つまらない男だわ」
「…………………………」
別の意味で愕然としたが、ボクも悪いと思って立ち上がることにした。
制服をパンパンと叩くと、何事もなかったように、教室の外へと出て行った。
「…俺も帰るか」
出していた物を鞄に突っ込んで、教室に出ることにした。
そういえば、扉を開けた人は、何か教室に用があったんじゃないか?
それと惜しいことをした、と思いつつ帰路についた。
次の日、赤沙田奈は学校で見かけなかった。
昨日は調子が悪い風には見えなかったが、元々病気で学校を休んでいたんだ。
今、居なくても可笑しくはないのだろう。
それに見雪貴遊が、いちいち心配することでもない。
ただのクラスメイトに過ぎないのだから。
昼休みに、クラスメイトである山田に声をかけられた。
「見雪って、いつも教室で最後まで勉強しているよな?」
「あぁ」
山田から声を掛けてくるとは珍しい。
「昨日も残って勉強していたか?」
「あぁ」
「そうか」
答えを聞くと黙りこんだ。
一体どうしたのだろうか。
「じゃあ、昨日見た奴は見雪か……」
一人で未来人と交渉してみたいだった。
疲れが溜まっているのかもしれない。
「じゃあ、ちょっと放課後に用があるから残っていてくれるか?少し話がある。時間はそんなに取らせない」
「あぁ」
そして放課後。
クラスメイトが教室から去り、残っているのは見雪貴遊と山田の2人になった。
男と2人きりというのもなかなか最悪なものだ。
「山田、話ってのは何だ?」
「話か。いや、ちょっと聞きたいことがある」
言葉と同時に、ストレートパンチが飛んできた。
「あっ…一体何なんだよ!?」
そして、山田が号泣していた。
「え…おい、いきなり泣くなよ!!どうした!?情緒不安定なのか!?」
「昼休みに聞いたよな。昨日、最後まで学校に残っていたか、って。」
「あぁ」
「昨日、教室に荷物を忘れて取りに来たら、そこに何があったと思う?」
「忘れた荷物があったんじゃないか。なんだ、一緒に探してやるよ。無くなったものは何だ?」
ダンダンと、悲しみから怒りへと空気がシフトしていた。
ボクってKYじゃないので、そこら辺は敏感です。
「そこにはな、そこにはな……お前と、赤沙田奈様がいたんだよ!!」
「そういえば、山田と話すのも久し振りだよなー小学生以来か」
「話を聞けー!!!」
整理すると昨日、扉の前に立っていた奴は、山田らしかった。
だから、昼休みに珍しく声をかけてきたわけか。
「いや、でも何もなかったぞ。あれは、只の偶然で…」
「偶然で赤沙田奈様の上に馬乗りするわけないだろー!!!」
学校全体に響き渡る咆哮であった。
うん、ごもっとも。
「偶然で、あんな風になっただと?そんなのありえるわけがないだろう!!あの可憐で美しく清楚なお方が、間違えても、あんな状態に陥るわけがないだろ!!お前が、赤沙田奈様を襲ったんだろう!!」
「はぁ!?どうしたら、そう考えがつくんだよ」
取り合えず、否定しておくが全くその通りです。
腹を括って、襲う気満々だったことを否定することはできない。
切っ掛けは、赤沙田奈なのだから問題はないはずだ。
「俺はお前を許すわけにはいかない。大いなる罪悪には、大いなる鉄槌で叩き潰すしかない。だから、死ねぇ~」
怒り狂った山田はパンチを繰り出してきた。
「あれは何でもない、ただの事故だったんだ。だから、な。落ち着け」
見雪は攻撃をかわした。
山田は感情が高ぶっている。
ここは逃げるのが得策か。
「事故って、偶然だと言うのか!?偶然で、あんな近くにいたのか!?お前を許せるか!!!」
正論過ぎて言葉も返せなかった。
教室の扉に向かって真っ直ぐ走っているが、山田は机と椅子をなぎ倒して向かってきている。
後で誰が片付けるんだ!?
「じゃあ、謝る。悪い、ごめん。このとーりだ。」
頭を45度下げた。
「謝って済めば、警察などいるか」
「ど、どうしたらいいんだよ!!」
もう教室から抜け出し、栄光の架け橋まで駆け抜けた。
「逃げるな!待て~」
これでも逃げ足には自信がある。
――あっさりと追いつかれた。
「はぁ、はぁ…やっと追いついたぞ。観念しろ…」
息がお互い上がっていた。
「何度でも謝るから、落ち着け。一回、深呼吸だ。はい、せーの」
すぅーはぁー
「…ふぅ。よし、落ち着いた。ありがとな」
結果、見雪貴遊は、ボコボコにされた。
感謝されたのに!!
「赤沙田奈様に、もう近づくなよ」
戦闘能力5は確実にあった。
「…少し、やりすぎた。悪いな」
帰り際に放った言葉は、見雪貴遊の幻聴だったのかもしれないが…
「いっててて…」
体が痛い。
顔を狙わなかったのは、さすがとしか言えない。
ボディーブローはさすがに聞きすぎた。
ひとまず、涼しい風でも浴びようと思い、屋上へと向かった。
そういや、屋上に上がるのは、あの日以来だ。
痛い体を引きずり、扉を開けると、赤沙田奈がいた。
学校を休んだはずなのに、なぜいるんだ。
赤沙田奈はあの服しか持っていないのだろうか。
そして、驚いた。
赤沙田奈が立っていた場所が、あの日の見雪貴遊の立ち位置と一緒だった。
そうフェンスを乗り越えた先。
すぐにでも飛び降りれる場所に平然と立っていた。
「………」
赤沙田奈は、校庭を見下ろしていた。
扉を開く音に気づいたのかこちらに声をかけてきた。
「あら、無様な姿をしてるわね。また死にに来たの?」
その姿に弱さはなく、堂々とした振る舞いだった。
「貴方は弱い人間ですものね。きっと1人じゃ、何も出来ないのね」
ひたすら話を続ける。
「私はね、貴方と違って強い人間よ。ヒトリだって怖くはないわ」
「赤沙、お前は何をやっているんだ?」
見雪貴遊は聞いた。
「何って見ての通りよ。貴方と話しているんじゃない。脳もやられちゃったのかしら?」
クスクスと笑っていた。
「赤沙、もう一度聞く。何をしようとしているんんだ?」
冷淡な目でこちらを見つめ返した。
「さっきと質問が微妙に違うわ。でも、答えてあげるわ」
死のうとしているのよ。
「死ぬ……?」
今、赤沙田奈は、そう言った。
赤沙田奈は、死という概念から一番遠い存在だと思っていた。
「あら、そんなに驚くことかしら?私と貴方が会った日の事を覚えているかしら?」
「あぁ…」
初めての出会いのときは、見雪貴遊が死を決意していた。
なぜ、赤沙は屋上にいたんだ・・・?
「あ……」
「分かったようね。私は、あの日にここで、今と同じ事をやろうとしていたのよ」
艶やかな笑顔をしながら話していた。
あの時以上に妖艶な笑みを見せている。
「赤沙が、この世からいなくなろうとするなんて、嘘だろ。一番遠い存在に見える」
「そうかしら?意外な人間がふらっと居なくなる者よ。逆に、やりそうな人間は無様にも這いずりまわるのよ。ゴキブリはしぶといわ」
「…赤沙はゴキブリを平気で握り潰すような人間だろ。クラスでは猫を被っているみたいだけど、本性は違うだろ」
「貴方に私の何が分かるの?」
見雪は言葉を返せなかった。
たまたま屋上で対面しただけで、今までもこちから話しかけているだけだ。
赤沙は、ただ教室にいただけ。
ボクと仲良くする理由は、ない。
「同じ立場に立ったことのある人間だ。気持ちが少しも分からないわけじゃない。普通の奴よりも理解しているつもりだ」
「ふぅ~ん。そうなのね。貴方はどうしてあの場に立っていたのかしら?私を助けたいなら教えなさい」
「…それはくだらない理由だ。語る必要すらない」
そう、面白くもつまらなくもない、くだらない理由だ。
「自殺を試みる人間って言うのは大抵理由があるの。生徒が自殺する理由なんて、クラスで虐められているか親に虐められているかのどっちかじゃない。貴方を朝からずっと観察していたわ。何か原因があるんじゃないかって。でも、貴方には理由が見つからなかった。クラスで平凡に授業を受けていたみたいだし、体に目立ったキズもない。それって健康的な生活を送っていることじゃない。ちんけな人間がその2つ以外に、ここに立つ理由が全く見つからなかったのよ。貴方は一体、何を考えているのかしら?」
「…いじめられていたんだよ。今だって、ほら体がボロボロだろ?」
見雪は暴力で弄られた体を満遍なく見せ付けてやった。
「ほら分かるだろ。俺は弱い人間なんだ。そこに立つ理由としては十分だろ?」
「…いいえ、違うわ。貴方は私がたまたま学校にいなかった日に限って、暴力を受けているわ。私が居たときには、1度だってハブられることなく学園生活をしていた。私がいないことを見通してやっているでしょ」
「赤沙が今日、学校に来ない理由なんて俺からは想像がつかないよ。それに今までがたまたま安全なだけで、普段はこんな感じなんだよ。これでいいか?」
睨み付ける視線はやり終わることはない。
「いえ、貴方は気付いたはずよ。貴方は私が病気がちなのを知っている。そして、昨日、意識がなくなったことをこの目で確かめているじゃない!!!」
「この目って…?俺には分からないけど」
「私が意識がなくなったのを貴方は知っているはずよ。だって、私は30分もあの教室で倒れていたのだから。意識を取り戻した時にぞっとしたわ。下等生物の慰み者になってしまったのかって」
表情を変えずに言ってたから気付かなかったけど、あれは本気だったのか。
冗談と本気が分かりにくいこと、この上ない。
「貴方は教室にいる山田が私を異常な目で見ていることも知っていた。獲物を狩る目をしていたわね。それは道端で倒れていたら食べてしまうくらいの異常さがあるのは貴方は勘付いていた。違うかしら」
ボクはどう対応していいのか困っていた。
「考えすぎだ。そんなことは何もない。あまりにも出来過ぎているよ」
「そうかしら?本気で襲おうとしている人間が30分も手を出さないでいるかしら?助けようとしている人間が30分も放置しているかしら?貴方はただ、私を傍観してだけね。そして、今、貴方はここにいる。当たり前のように屋上に来て、私と話している。正直、ゾッとするわ。まるで私の行動が読めているみたい」
入院していた理由はこれか。
いや、入院じゃなく病気と言っていた。
つまり、極度の妄想癖を患っている。
普段、あんなにも喋らずに、ボクの前でたくさん喋るのは同類と思われているのか。
くだらない。
「そんなことない。赤沙が次に何をするかなんて俺には想像がつかない。」
「嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ」
頭が既にイカレていたのは、赤沙、キミの方だったか。
「ち、近づくな。近づくな。来るな、来るな、来るな、来るな!!!」
ボクは足を止めない。
止めるわけにはいかないんだ。
「死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬーーーーーーー!!!」
バタン。




