女同士
「なんであんたが我慢すんのよ」
カフェのテーブル越しに、奈緒は身を乗り出した。
向かいの美咲はストローをいじっている。
「別に、我慢ってほどじゃ……」
「我慢よそれは」
奈緒はため息をつく。
怒っているのは彼氏にであって、美咲にではない。
「好きなんでしょ?」
「……好き」
その一言で、美咲の目が潤む。
奈緒はハンカチを差し出す。
奪うように受け取られた。
「いい? 好きだからって、雑に扱われていい理由にはならないの」
美咲は泣きながら笑う。
「出た、名言製造機」
「うるさい」
少し静かになる。
奈緒はコーヒーを一口飲んでから、ゆっくり言った。
「私があんたを好きなのはね、ちゃんと素直に怒るとこも、ちゃんと泣くとこもあるからよ。そこ削ってまで誰かに合わせるの、私は許さん」
美咲は鼻をすすった。
「奈緒が彼氏なら良かった」
「絶対めんどくさいわ私」
二人で笑う。
「別れたほうがいいと思う?」
「うん」
「即答やん」
「だって、あんたの顔が曇る相手は嫌」
美咲はしばらく考えたあと、スマホを取り出す。
「……電話する」
「ここで?」
「ここで」
奈緒は頷く。
逃げ場は作らない。
でも、横にはいる。
通話ボタンを押す指が震える。
奈緒はその手を、黙って握った。
美咲の声が震えながらも、はっきりと告げる。
「私ね、もっと大事にされたいの」
通話が終わる。
泣き崩れる。
奈緒は背中をさすりながら言う。
「よく言った。あんた偉い」
美咲は涙でぐしゃぐしゃの顔で笑う。
「奈緒、いなくなったら困る」
「当たり前やろ。あんたが老後まで面倒みんねんから」
真正面からぶつかって、
ちゃんと泣かせて、
ちゃんと笑わせる。
それが、彼女たちの友情だった。




