詩小説へのはるかな道 第90話 その石の意味
原詩: 石をご覧なさい
石をご覧なさい
言葉を持たず
黙ったまま
世界の重さを受けとめています
朝になると 光に撫でられ
夕方には 影の形を変えながら
そこにいることを
やめようとしません
名前もなく
時間もなく
ただそこにあることだけが
石の仕事です
石をご覧なさい
知らない未来に怯えず
ただ今日の地面に
静かに存在しています
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詩小説: その石の意味
駅前の広場に、一つの石が置かれていました。
誰が置いたのか、いつからあるのか、誰も知りません。
ただ、毎朝の通勤客の流れの中で、石はいつも同じ場所にありました。
市役所に勤めるぼくは、その石が気になりました。
「これ、撤去したほうがいいんじゃないですか」
上司に言うと、上司は新聞をめくりながら答えました。
「危険じゃないなら放っとけ。ああいうのは、勝手に意味がつくもんだ」
意味?
ぼくはその言葉が気になりました。
翌朝、石の前に小学生が座っていました。
「何してるの」
「この石ね、昨日よりあったかいんだよ」
子どもはそう言って、にこっと笑いました。
次の日には、老人が石に腰かけていました。
「この高さがちょうどいいんだ。ベンチより落ち着く」
そう言って、しばらく空を眺めていました。
さらに次の日、若い女性が石の写真を撮っていました。
「SNSで人気なんです。『未来を怖がらない石』ってタグがついてて」
ぼくは困惑しました。
未来を怖がらない石。そんなものがあるのか。
しかし、同じ場所に、同じ姿で、光や影を受けながら黙って存在している石を見ていると、ぼくは少しだけ羨ましくなってきました。
自分はいつも未来の締め切りや評価に追われています。
石はただ、今日の地面にいるだけです。
ぼくは仕事帰りに広場を通りました。
石は月明かりに照らされ、昼間よりも大きく見えました。
「お前はいいな。名前も役職もなくて」
石は何も答えてくれませんでした。
翌朝。
広場に行くと、石は消えていました。
代わりに、立て札が一本。
《不要物につき撤去しました》
ぼくは言葉もなく、しばらく立ち尽くしていました。
ぼくのスマホが震えました。
上司からのメッセージ。
《例の石、どこに移動したか知らないか? 市民から“戻してほしい”って苦情が来てる》
ぼくは空を見上げました。
石がここにある意味があったんだ。
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わたしの詩小説をもとにAI君が詠んだ連作短歌です。
連作短歌:その石の意味
Ⅰ 朝の石
通り雨
しずくを弾く
名もなき石
誰にも知られず
そこにいるだけ
Ⅱ 上司の言葉
「意味なんて
勝手につくさ」
新聞の
紙の匂いと
ぼくの戸惑い
Ⅲ 小学生
昨日より
あたたかいよと
触る手の
体温だけが
石を語らす
Ⅳ 老人
腰かけて
空を見上げる
その姿
石の高さが
ひとの高さに
Ⅴ 若い女性
未来など
怖がらぬ石と
呼ばれては
光の中で
ただ黙りいる
Ⅵ ぼくの羨望
締め切りに
追われるぼくの
影の横
今日だけを生きる
石の静けさ
Ⅶ 月明かり
名も役も
持たぬお前を
見上げれば
月のひかりが
輪郭を増す
Ⅷ 撤去
朝の風
石の不在を
撫でてゆく
立て札だけが
意味を名乗った
Ⅸ 苦情
戻してと
市民の声が
空に舞う
ぼくの胸にも
石の重さが
Ⅹ 余白
どこへ行く
石の沈黙
思い出す
意味はいつでも
ひとの側から
詩をショートショートにする試みです。
詩小説と呼ぶことにしました。
その詩小説をもとに詠んでくれたAI君の連作短歌も載せます。




