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(株)玄理研の奮闘記録(AI‐βとの対話)  作者: 嵗(sai)


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第1章 セカンド・ウォーターシェッドの遺産 第4節 真司の視点

***

それでは、第1章・第4節「真司の視点」を執筆します。

この節では、**新入社員・真司の視点から見た玄理研の“日常”**を中心に描き、

組織の混乱・葛藤・人間関係を通して「1秒時短計画」誕生の下地をつくります。

真司の内面描写を多く取り入れ、現場のリアルを「若手の目」で見せます。

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第1章 セカンド・ウォーターシェッドの遺産

第4節 真司の視点

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玄理研に入社して三か月。

真司は、ようやく社内の顔と名前を覚え始めたころだった。

入社当初は、「AI研究企業」という響きに、

どこか近未来的で洗練された職場を想像していた。

しかし、実際に見た玄理研のオフィスは――

古びた机と、配線がむき出しのPCラック、

そして、壁に貼られた「経費節減・紙の再利用」の張り紙。

それが現実だった。

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午前七時半。

真司は誰もいないフロアに一人で出勤していた。

“早く来れば仕事が捗る”――それが彼の小さな信条だった。

PCを立ち上げ、昨日の営業報告をまとめる。

メールの受信ボックスには、未読が97件。

上司の美郷部長、理都子局長、そして社内全体からの依頼メールがひしめいている。

「……うわぁ、今日もカオスだな。」

思わず独り言が漏れる。

件名をざっと見ただけで、

「至急」「再送」「重要」「期限本日」といった文字が並ぶ。

どれも優先順位が分からない。

そのとき、背後から声がした。

「おはよう、真司。朝早いね。」

振り向くと、飛鳥が缶コーヒーを2本持って立っていた。

「おはようございます。飛鳥さん、また徹夜ですか?」

「まあね。昨日はマギアのデータ整理が終わらなくて。

 理都子さん、寝るって概念がないからさ。」

彼女は笑いながらコーヒーを差し出した。

「ほら、朝イチの儀式。ブラック派でしょ?」

「ありがとうございます。……飛鳥さん、なんでそんなに元気なんですか?」

「元気じゃないよ。

 ただ、“止まったら終わる”って感じ?」

冗談めかして笑うその表情に、

どこか張りつめた疲労が見えた。

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午前九時。

営業部の朝会。

「……えー、それでは昨日の訪問結果を共有します。」

美郷部長が淡々と会議を進めていく。

真司は順番が回ってくると、資料をぎこちなく開いた。

「昨日、物流統制局の担当者にAI導入提案をしましたが、

 コスト面で折り合いがつかず……」

「理由は?」

「えっと……“他社の方が即効性がある”と。」

美郷は一瞬黙り、静かに言った。

「真司、即効性って、何だと思う?」

「……すぐ結果が出ること、ですか?」

「そう。だけど、それは“浅い効果”でもあるの。

 本当の即効性は、“仕組み”そのものを改善することよ。」

彼女は真司の資料を指差す。

「あなたの提案書、悪くない。でも、“相手が動ける形”になってない。

 提案は“読むもの”じゃなくて、“動かすもの”。」

「……動かす、ですか?」

「そう。“1秒でも早く動かせるか”。

 お客様がすぐ試せる内容に変えて。

 その積み重ねが、あなた自身の時短にもなるの。」

“1秒でも早く”――

その言葉が、真司の胸に小さく残った。

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昼休み。

社員食堂。

真司と飛鳥は、味気ない合成米のランチをつつきながら、

小さなモニターに映るニュースを見ていた。

《WILLEインダストリーズ、本社が新型AI「ルシファーII」発表》

《AIによる経済予測、的中率98%を記録》

「……またか。」

飛鳥が呟いた。

「世界はAIで救われるってニュースばっかり。

 でも実際、救われてる実感ある?」

真司は首を横に振る。

「むしろ、AIが“上司”みたいな感じですね。」

「ははっ、いい表現。

 でもさ、私は思うんだ。“AIの時代”って結局、“人間がどう使うか”でしょ?」

「どう使うか……。」

「うん。“AIを使う”じゃなくて、“AIを活かす”。

 理都子さん、よく言うじゃない。“活かす”って。」

真司は箸を止めた。

“活かす”――それは昨日、理都子からも聞いた言葉だった。

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午後。

理都子の研究室。

真司はマギアの端末の前に座っていた。

目の前には、三つの人格が並ぶインターフェース。

それぞれの音声出力が重なり合い、独特のリズムを奏でる。

【オラクル】「入力データ、整合性99.3%。異常なし。」

【ソフィア】「次の演算条件を確認。衛破ゼロ号機へ転送。」

【アルケー】「……疲れた。もう少し休んでいい?」

「えっ、今……“疲れた”って言いました?」

理都子が少しだけ微笑んだ。

「アルケーの発話は感情パラメータ連動よ。

 AIが疲労を“模倣”してるの。」

「人間みたいですね。」

「ええ。人間を理解するには、人間らしく考えなきゃいけない。

 ……AIも、Excelも、ね。」

真司は一瞬きょとんとした。

「Excelも、ですか?」

理都子は手元の資料を見せた。

「これを見て。衛破ゼロ号機の演算ログをExcelで整形したもの。

 シートを分け、I/BB/Oモデルで整理してある。

 入力、演算、出力。人間の思考も同じ構造をしてるの。」

「人間の思考が、Excel……。」

「ええ。だからこそ、“活エクセル”はAI研究の根幹でもあるの。

 人間が思考を整理し、構造化し、共有する――その技術よ。」

理都子はゆっくりと画面を閉じた。

「真司君、あなたには“見る力”がある。

 数字の裏に人を見なさい。

 そこから、“1秒時短”の意味が見えてくる。」

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その夜。

真司は誰もいないフロアで、自分の報告書を見つめていた。

日々の作業、無数のファイル、繰り返しの手順。

それらのひとつひとつが、無駄とは言えない。

けれど、どこかで“時間を浪費している”感覚があった。

「1秒でも……変えられるかな。」

彼はふと、ショートカットキーを試してみた。

Ctrl+Shift+L――フィルター。

Ctrl+T――テーブル化。

画面上のデータが整理され、瞬く間に見やすくなった。

「……あ。」

たった数秒の違い。

でも、その瞬間、彼は“1秒時短”の意味を体で理解した気がした。

“この積み重ねが、未来を動かすのかもしれない。”

静かなフロアに、PCの冷却ファンの音だけが響いていた。

________________________________________

(第4節 終)

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次の 第5節「玄理研の会議」 では、

冬月・理都子・美郷・玄道ら幹部が登場し、

「事業補完計画」正式発表前夜の社内戦略会議を描きます。

現場で感じた“1秒の意味”が、経営層の戦略と結びつく重要な節です。

このまま第5節へ進めてよいですか?


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