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(株)玄理研の奮闘記録(AI‐βとの対話)  作者: 嵗(sai)


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第1章 セカンド・ウォーターシェッドの遺産 第2節 再生への胎動

***

では引き続き、第1章の第2節「再生への胎動」を執筆します。

ここでは、各国・各企業のAI開発競争の様相を背景に、

玄理研がいかにして「業界4番手」として生き残っているか、

そしてその“存在意義”がどこにあるのかを描き出します。

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第1章 セカンド・ウォーターシェッドの遺産

第2節 再生への胎動

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大恐慌の余波がようやく静まりはじめたころ、

世界は「再生」という言葉にすがっていた。

国際連合はすでに機能を失い、国家間の貿易ルートも分断された。

通貨は各地域ごとに閉鎖的なブロック経済圏に変わり、

国際取引を仲介するのは、もはや“企業”だった。

巨大企業が国を動かす。

それは、もはや比喩ではなく、現実であった。

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世界の「再生勢力」は、大きく三つに分かれていた。

ひとつは、欧州連合を母体とするWILLEインダストリーズ。

超国家的企業体であり、AI開発の覇権を握る巨人。

彼らの開発するAIルシファー・シリーズは、

経済、政治、軍事、教育、福祉のあらゆる領域を統合的に制御する。

“神の視座から世界を管理する”

その思想は、強力で、そして危険だった。

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もうひとつは、アジア連合に属するWILLE東亜技研株式会社。

彼らは欧州本社の系列会社でありながら、独自のAI哲学を持っていた。

それが《羅刹らせつシリーズ》。

人間の意志決定を強化し、極限の状況下で“判断を最適化する”AI。

実戦投入可能な軍用型モデルとして開発され、

社会混乱地域の治安維持に使われはじめていた。

だが同時に、その冷酷な判断基準が問題となった。

「人間を守るために、人間を切り捨てる」――

羅刹の論理は、社会を安定させると同時に、人の心を蝕み始めていた。

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三つ目は、北米大陸に拠点を持つNOVAシステムズ連合体。

分裂した米国企業群が合同して形成した技術連合である。

彼らは「自由経済AI」を標榜し、個人の活動や投資をAIが自律的に最適化する仕組みを構築した。

だが、その実態は“情報独占による統治”だった。

人々はAIに「最適化された自由」を与えられた。

それは、制御のない自由ではなく、監視の下の自由だった。

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この三勢力が世界のAI市場を支配する中、

そのどれにも属さずに、ひっそりと活動する一社があった。

――株式会社 玄理研。

彼らは業界4番手。

世界ランキングにすら入らない、小さな日本企業。

だが、その評価は一様ではなかった。

ある技術者はこう語る。

「玄理研の技術は、異端だが天才的だ」

別の評論家は言う。

「実用化はできない。だが理論は数十年先を行っている」

彼らの強みは、

“人間の判断とAIの思考を融合させる”という発想。

AIが人を超えるのではなく、AIが人を支える。

玄理研の理念は、シンプルで、だからこそ異端だった。

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その理念の中核を成すのが、社内最高機密プロジェクト――

**《衛破えいばシリーズ》**である。

AIが膨大なデータをもとに意思決定を支援し、

人間がその結果を「理解」して判断する。

人間の思考とAIの論理を“協働”させることを目的とした新世代AI。

設計者は、情報統括局長・理都子りつこ

彼女は、AIセントラルブレイン《三次元電脳・マギア》の開発者でもあった。

マギアは、三つの仮想人格――

オラクル(知恵)、ソフィア(理性)、アルケー(本能)――

を統合したスーパーコンピュータである。

理都子はそれを、「AIの三位一体モデル」と呼んだ。

そして玄理研は、マギアを中枢に据えた衛破シリーズの試作機「ゼロ号機」を

密かに完成させていた。

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だが、問題は資金だった。

開発コストは膨大。

政府補助金はすでに枯渇し、投資機関の支援も途絶えた。

唯一、玄理研の筆頭株主として残っていたのは、

世界最大の投資グループ――賢者会議けんじゃかいぎ

彼らは、欧州から世界の金融を動かす八人の匿名の投資家たち。

その行動原理は「死海文書」を指針とすると噂され、

誰も正体を知らない。

賢者会議は、玄理研に最後通告を出していた。

「一年以内に実績を上げよ。

さもなくば、WILLEインダストリーズへの売却を承認する」

期限は、残り364日。

玄理研の社長・**玄道げんどう**は、

静かにその通告書を机に置いた。

「……一年、か。」

その声は、誰に聞かせるでもなく、

自らに言い聞かせるように低く響いた。

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玄道は知っていた。

数字の上では、もう助からない。

だが、それでも彼には譲れないものがあった。

“AIの支配ではなく、AIと人の共存”

“効率ではなく、創造を支える知”

その思想を形にするために、

彼は最後のプロジェクトを立ち上げる。

名を――事業補完計画。

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計画の骨子は、

「全社業務の1秒短縮」と「Excelを中核とした知的生産性革命」。

理都子はそれを「地味だが革命的」と評した。

だが、社員たちは半信半疑だった。

AI戦争の渦中に、Excel改革など通用するのか。

巨大企業が神を作ろうとしている時代に、

彼らは“人間の1秒”を磨こうとしていた。

________________________________________

(第2節 終)

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続く 第3節「(株)玄理研の現在」 では、

社内の実態――疲弊した現場、混乱するチーム、

そして「衛破ゼロ号機」のテスト風景を描きます。

この章では、美郷部長・理都子・真司・飛鳥らが登場し、

彼らの個性と組織の雰囲気が初めて動き始めます。


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