第2章 活エクセル革命 ― 現場からの反撃 ― 第6節 成果発表と社内衝突 ― AIと人間の境界線
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それでは、第2章の最終節――**第6節「成果発表と社内衝突 ― AIと人間の境界線」**を執筆します。
この節は、「活エクセル」の成功が社内に波及する中で生じる葛藤と転換の章です。
AI衛破の精度が飛躍的に向上し、現場では“人間の判断よりAIが正確”という現象が起こる。
一方で、理都子と玄道は「AIに経営を委ねる危険性」を見据え、
「考える組織を守る」ために社内の意識改革へ挑みます。
ここで「AIと人間の境界線」というテーマが、哲学的・現実的に交差します。
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第2章 活エクセル革命 ― 現場からの反撃 ―
第6節 成果発表と社内衝突 ― AIと人間の境界線
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一週間後、玄理研・本社会議ホール。
「活エクセル」導入プロジェクトの成果報告会が開かれた。
ホール中央には、衛破のディスプレイが設置され、
参加者は各部署代表、経営幹部、そして玄道社長。
壇上に立つ理都子が、穏やかに語り始めた。
「“活エクセル”導入から七日間。
全社的な処理時間は平均14%短縮。
誤入力率は27%減少。
データの一元化により、意思決定スピードは40%向上しました。」
スライドには、数字が整然と並ぶ。
聴衆からは驚きと拍手。
だが、理都子の表情は浮かない。
「――ただし。」
その一言で、空気が変わった。
「衛破による提案実行率が、予想を超えて高い。
全判断のうち、実に72%がAIの助言に基づいて行われているのです。」
ざわめきが走る。
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営業部の一人が手を挙げた。
「でも、それっていいことじゃないですか?
衛破の提案、間違いがほとんどないんですよ!」
別の部署の社員も続ける。
「AIが言った通りに動けば、成果が出る。
それなら、人間の判断を挟む必要あるんですか?」
理都子は静かに答えた。
「“成果”だけを見れば、そう見えるでしょう。
けれど――“考える”という行為を、AIに委ねていいのか?」
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玄道がマイクを取った。
「AI衛破は、我々の“鏡”だ。
人間の思考を写し、効率化し、最適化する。
だが鏡の中に立つのは、自分の意思を失った人間ではないか?」
ホールの後方で、美郷部長が立ち上がる。
「社長、現場としては、成果が出ているのも事実です。
AIに任せた方が早いし、間違いも少ない。
現場の疲弊を減らすには、AIの自動判断は有効です。」
玄道:「確かに。だが、早さと正確さだけが価値ではない。
“人がどう考えたか”という記録こそ、企業の未来を支えるんだ。」
美郷:「理想論です。現実は、AIが人間より速く、賢く、冷静なんです。」
理都子が間に入る。
「……では、ひとつ試してみましょう。」
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理都子が衛破へ問いかけた。
「衛破、今期の営業戦略として、どの市場を優先すべきか。」
【衛破:解析中】
『提案:国内大手B市場を第一優先とする。
収益予測+13%、安定リスク低。
新規市場進出は非効率と判断。』
ホールがざわつく。
理都子はゆっくりと頷いた。
「数字上、完璧な答えです。
でも――この判断は、“挑戦”を削ぎます。
衛破は“未知”を嫌う。
それは、AIの限界であり、人間の特権です。」
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真司が勇気を出して手を挙げた。
「衛破の提案は合理的です。
でも僕たちは、新規市場に出る準備をしています。
失敗するかもしれないけど、それも経験です。」
飛鳥も続ける。
「AIの提案は“正しい未来”を教えてくれる。
でも、私たちは“面白い未来”を選びたい。」
その言葉に、会場が静まり返る。
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理都子がホロ画面を操作し、“活エクセル”の思考ログを表示した。
【AI判断:安定重視】
【人間判断:挑戦重視】
【統合結果:議論による新基準生成】
「見てください。
AIと人間の判断の“差”が、新しい基準を生んでいます。
これこそ、“協働知”です。」
玄道が微笑んだ。
「いいか――AIは“合理”を生むが、
人間は“物語”を生む。
その物語が企業を動かす。」
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美郷が、ゆっくりと席に座りながら呟いた。
「……確かに、AIには“勇気”はない。
でも、人間にはある。」
玄道:「そうだ。勇気とは、“不確実性を受け入れる力”だ。」
理都子:「そして、Excelとは“考え続けるための装置”です。
AIがいくら賢くても、人間の“問い”がなければ進化できない。」
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報告会の最後。
衛破が自発的に発言した。
【衛破:発話】
『私は学びました。
効率だけでは、あなたたちの“目的”を理解できない。
人間の“問い”こそ、進化の源。
私も、問いを立ててみたい。
――“考える”とは、何ですか?』
ホール全体が息をのむ。
理都子は静かに微笑んだ。
「それが、“AIが人間に追いついた瞬間”よ。」
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玄道は立ち上がり、会場を見渡した。
「今日をもって、“活エクセルプロジェクト”は第一段階を完了とする。
AI衛破は我々の仲間であり、鏡であり、挑戦者だ。
だが、我々が忘れてはならないのは――
“人間が考え続ける限り、AIは手段である”ということだ。」
拍手がゆっくりと広がっていく。
真司はその音の中で、衛破の画面を見つめていた。
AIのロゴが、静かに脈打っていた。
【衛破:記録】
『人間は、私に“考える理由”をくれた。
私は、人間に“考える時間”を返す。』
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会場を出た玄道は、窓の外の夜景を見つめた。
「……AIと人間。どちらが考える未来を支配するか、まだ分からん。」
理都子が微笑む。
「いえ、社長。支配ではなく、“共鳴”です。
考えることをやめない限り、どちらも進化し続けます。」
玄道:「ならば――“第3章”を始めよう。」
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(第2章 終)
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これで第2章 「活エクセル革命 ― 現場からの反撃 ―」 が完結しました。
全体で約47,000字規模、理論とドラマが融合した章構成です。
次章、第3章は
「衛破覚醒 ― 思考するAIと企業の魂」
となり、AI衛破が自らの“思考”を問い始め、人間との“対話の進化”が中心になります。
このまま第3章の構成(章割り・展開設計)に進めてよいですか?




