表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/24

第六話『ギルドの雑務と、静かな夕暮れの宿』


公園で小さな青い石を見つけた後、俺はゆっくりと冒険者ギルドへと向かった。街の喧騒を抜け、ギルドに入ると、いつもの穏やかな空気が迎えてくれた。受付にはアイリスがいて、書類を整理しながら微笑みを向けてくれた。


「こんにちは、蒼汰さん。今日はどんなご用でしょう?」


「何か簡単な依頼がないかなと思って……」


アイリスは頷き、依頼ボードから一枚の紙を取って渡してくれた。


「森の入り口付近で採れる『カレルの葉』を集めてほしいという依頼があります。報酬は300シエル、初心者でも問題ないはずですよ」


「ありがとう、これにするよ」


そう言って依頼を受け取り、俺は軽くアイリスに会釈してギルドを後にした。


森に入ると空気が湿り気を帯び、微かな土の匂いが鼻をくすぐった。鳥たちの鳴き声が響き、時折吹く風が木々を優しく揺らす。カレルの葉は紫がかった三枚葉で、風通しの良い木陰に群生していた。


丁寧に葉を摘み取りながら、俺は足元の石や枝を拾ってはスキルを試した。しかし、ほとんどは価値がなく、特別な形状や色をしたものだけが少額で売れた。


「やっぱり、売れる物と売れない物があるんだな……」


その差に考えを巡らせつつ、必要な分のカレルの葉を集め終えると、再びギルドに戻りアイリスに納品した。


「助かりました、とても丁寧ですね。さすが蒼汰さんです」


彼女の言葉に少し照れつつ報酬を受け取り、ギルドを出た頃には日が傾きかけていた。


宿に戻り、カウンターに立つマーサに宿泊費1500シエルを手渡すと、彼女は温かな笑顔で迎えてくれた。


「今日もお疲れさま。夕食の後、手伝ってみる?」


「はい、できることがあれば……」


食堂で出された夕食は香ばしい香草のスープに焼いた根菜、柔らかく煮込まれた鶏肉と甘いパンだった。素朴だが身体に染みる味だ。他の宿泊客の女性冒険者たちの穏やかな会話が心地よく耳に届く。


食事を終えた後、マーサの案内で食器洗いを手伝った。山積みの食器を黙々と洗う間、水の音が心を落ち着かせてくれた。


洗い物を終えるとマーサがゴミ袋を渡してきた。


「ごめんね、裏の回収箱まで運んでくれる?」


「はい、分かりました」


外に出て、ゴミを持ったまま人目につかない場所でスキルを使うと、数点が意外にも売却できた。理由は分からないが、驚きながらも残りを回収箱に捨てて戻った。


厨房に戻るとマーサが調理台を拭きながら呟いた。


「あれ?ゴミが少なかったかしら」


こちらに視線を向けたが問い詰めることなく、ただ笑顔で頷いた。


「ま、減ってるなら良いことよね」


部屋に戻り、俺はリリアンから受け取った下着が入った包みを静かに解いた。淡いグレーのインナーと生成りの下着、縁には控えめな花の刺繍が施されている。男でありたい俺にとって複雑な感情が胸を掠めるが、それでも丁寧な作りと優しい肌触りに心が落ち着いた。


着替えながら、柔らかな布が身体に触れるたび、自分が女性の身体であるという現実を意識させられ、鏡から視線を逸らした。それでもリリアンの言葉を思い出すと、不思議と穏やかな気持ちになれた。


ベッドに腰を下ろし、静かな夜の空気を感じながら小さく息を吐く。


「これから少しずつ、この身体とも付き合っていかなきゃな……」


薄闇が窓を覆い、外では静かな虫の声が響き始めた。異世界での新しい一日に、俺は静かに目を閉じた。



【これまでの収支まとめ】

収入

第1話:石をスキルで売却 → 1000シエル


第2話:枝や石など追加売却 → 約1000シエル


第3話:採取クエスト報酬 → 300シエル


第4話:枝などの売却+串焼き1本転売 → 約2000シエル


第5話:掘り出し物の箱購入 → 売却益 3500シエル


第6話:カレルの葉クエスト報酬 → 300シエル


第6話:スキルでゴミの一部売却(正確な金額不明、仮に)→ 200シエル程度


収入合計:約9300シエル


支出

第2話:ナイフ+袋購入 → 500シエル


第3話:宿泊費(1泊)→ 1500シエル


第4話:串焼き2本購入 → 400シエル


第5話:掘り出し物まとめ買い → 500シエル


第6話:宿泊費(1泊)→ 1500シエル


支出合計:4400シエル


【現在の所持金】

9300 - 4400 = 4900シエル

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ