表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/24

第五話『路地裏の転売と新たな発見』



服屋でリリアンさんから受け取った下着を大切に袋に包んだまま持ち歩きながら、俺はゆったりと市場の石畳を歩いていた。陽はまだ高く、活気に溢れた市場の空気は、俺の心を穏やかにさせてくれる。露店には色とりどりの果物や野菜が溢れ、元気な商人たちの威勢のいい掛け声が行き交っていた。


小さな路地に目を向けると、年配の女性が営む小さな露店が目についた。店主の女性は白髪交じりの髪を後ろでゆるく束ね、深い皺の刻まれた温かそうな笑顔を浮かべている。彼女の前には「纏め売り」と書かれた古びた木箱が一つ置かれていた。箱の中には数日間売れ残ったような、さまざまな雑貨が雑多に詰め込まれている。


「おや、嬢ちゃん、こういうのが好きなのかい?若い子は光物に目がないからねぇ」


彼女は柔らかく笑いながら俺を見て言った。見た目は女性であることに違和感を覚えながらも、年配の女性の優しい眼差しに少し胸が緩む。


「あの、これ全部だといくらですか?」


俺が箱を指差しながら尋ねると、彼女は優しい笑顔で頷きながら答えてくれた。


「そうだねぇ、もう何日も売れ残ってるし、嬢ちゃんみたいな若い子が気に入ってくれたなら、特別に500シエルにまけておくよ」


親切な心遣いに感謝しつつ、俺は少し戸惑いながら箱を購入した。女性として扱われることには慣れないが、彼女の純粋な好意を感じ取り、素直に受け入れることにした。


重みのある箱を持ち、市場の喧騒から離れた路地裏へと歩を進める。静かな路地裏は日陰になっていて涼しく、ほのかな湿気が石の壁に漂っている。腰を下ろせる木箱に座り、中身を一つずつ取り出してスキルを使って売値を確認し始めた。


小さな赤い石は50シエル、細く剣のような形をした枝は200シエル。さらに龍のような形をした黒い石は500シエルという高値がつき、俺は思わず息を呑んだ。だが、何の特徴もない灰色の石は、何度試しても値段が付かず、俺は首を傾げる。


「やっぱり、何でもかんでも売れるわけじゃないんだな……」


スキルの基準はまだ完全には掴めていないが、特別な形状や見た目が重要らしいことは理解できた。売れる物と売れない物の差が激しいことが興味深くもあった。


売却を終えると、手元には合計で3500シエルほどが残った。最初の予想を遥かに超えた収益に、少しだけ胸を張れるような気がした。


次に向かったのは冒険者ギルドだったが、途中で自然豊かな広場が目に留まった。広場の中心には古い大きな木が一本そびえ、その周りには小さな子供たちが走り回って遊んでいる。そののどかな風景に心がほっとし、俺はふらりとその広場へと歩み寄った。


木陰に腰を下ろし、足元に広がる鮮やかな緑の苔を見下ろす。柔らかな緑の絨毯のような感触に、心が落ち着いていく。


ふと視界の隅で青く輝く小さな石を見つけた。拾い上げてスキルで確認すると、その美しい石には1000シエルの値段が付いた。


「こんなものが、こんな場所に……」


驚きと感動が胸を満たすが、直感的にこれは売らずに手元に置いておこうと決めた。不思議とこの石には特別な意味があるように感じられた。


再び広場を見回すと、陽射しに照らされた子供たちの笑い声が空気を震わせ、木の葉が風に揺れる音が優しく耳に届く。見知らぬ異世界で一人過ごす孤独感が、少しだけ薄れた気がした。


静かな時間を堪能したあと、俺はゆっくりと立ち上がった。


「そろそろ冒険者ギルドに行こう」


まだ見ぬ世界と未知の出来事への小さな期待を胸に抱きながら、俺は再び足を踏み出した。

頑張れば投稿頻度上げられるかも。

配信とは等価交換ですが…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ