噂①
こんにちは。らーゆです。今回から少し展開が進んでると思うのでぜひ、ごゆるりとお楽しみください!
有美が転校してきてから1週間経ったある日の朝。
「おはよ、悠太。今日も眠そうだな。」
「そーゆー快翔は眠くないのかよ?」
「まぁな。最近早寝早起きしてるから。」
そんなありきたりな話をしていると、悠太が突拍子もなく話題をかえる。
「そういやよ、快翔。お前知ってるか?」
「なにが?」
「この学校によ、幽霊がいるらしいんだ。」
快翔は非科学的な物にあまり興味が無いので、今日の時間割りを思い出しながら聞き流す事を決めた。
「それが?」
「どうもその幽霊ってのはよ、俺達みたいにちゃんと授業を受けたり、みんなと弁当食べたりと、一般生徒と変わらないらしいんだよ。」
悠太の話を聞いてると、少し興味が湧いてきたのか、話に乗り出す。
「なんでそんな噂が出てるんだ?」
「それがよ、どうも学級日誌の人数の数が合わなかったり、ところどころ生徒達の学校での記憶が曖昧になってたりと、不可思議な現象が起きてるみたいなんだ。」
やっと興味が出てきたのかと、悠太は嬉々として話している。
「元からそんな噂あったっけ?」
1年以上学校生活を送っている快翔だが、そんな噂を一度も聞いたことがないので、不思議に思いながら悠太に確認をする。
「いや違うんだよ。それが。時期としては風真さんが転校してきたくらいからなんだ。」
「それはまた妙な事もあるもんだな。」
「あぁ。だから一部の生徒では風真さんが幽霊なんじゃないかって話もでてるんだぜ。」
「物騒な学校だな。」
そんな話をしていると教室のドア側から女子達の挨拶をする声が聞こえた。有美が来たのだ。
「お、噂をすれば何とやらだな。」
悠太が冗談めかして言う。
「おはよー、2人とも。何の話してたの?」
あまり本人に聞かせるのはどうかと思った快翔ははぐらかそうとしたが、その思惑とは別に悠太が話し出す。
「この学校に幽霊がいるって話をしたんだよ。」
「幽霊?」
有美も何を言っているんだこの人はと言わんばかりの表情で聞き返す。
「そうなんだよ。快翔にも言ったんだけどさ、ちょうど有美さんが転校してきた時期あたりから出始めたものでさ。一部では風真さんが幽霊かもって。」
一瞬ムスッとした表情を浮かべた有美だったが、何を思ったのか快翔の頬をつねった。
「痛い、痛いぞ有美。」
「だって花木君に同じことしたらただのやばい女じゃない。だからかわりの快翔なの。」
「おい、悠太、お前のせいだ。お前が変なこと言わなきゃ俺はこんなことになってない。」
「悪ぃ悪ぃ。ごめんね。風真さん。その辺で快翔を許してやってよ。悪気はなかったんだよ。」
全くもう。と言いながら致し方なしと言わんばかりに快翔の頬から手を離す有美だった。
「んー、でも変だね。」
頭の中で先程の話を振り返り、疑問に思った事を口にする。
「私が来た時くらいから出てきたんでしょ?でも私は別に存在してるし、日常生活に違和感もないんだけどなぁ。」
「なんだ有美、お前そんな噂信じるのか?」
「いや、信じる信じないとかじゃないけど、面白そうじゃん!幽霊なんてさ!」
先程のムスッとした表情が嘘かのように目がキラキラと輝いている。下手な子供より好奇心が強いんじゃないのだろうか。
そして不意に有美が快翔の手を握る。
「?何してんだ?有美」
急な行動に驚いた快翔が呆れた声で聞く。
「いやね?こうして手繋げたら幽霊じゃないって事になるかなぁって思ってさ。」
「幽霊なんていねぇよ。ほら、気が済んだら手離せよ。こんなこと他の男にやってたら勘違いされるぞ。」
「別に快翔以外にはやらさないもん…」
ボソッと誰にも聞かれない声で有美が呟く。
「何か言ったか?有美」
「うるさい。このニブチン男め。」
プンスカと怒って有美は自分の席の方へと歩き出す。
「なぁ悠太。」
「んー?」
「あいつ、何しに来たんだ?」
「さぁね。」
こんな鈍感なやつが好きだとはこれからどんな大変な道のりを辿るんだろうと思ったのと同時に、こんな鈍感なやつが存在してしまっていることが哀れだと思う悠太だった。
「さて、1時間目ってなんだっけか?」
長話をしてしまった快翔だが、自分がやりたかった事を思い出し、悠太に尋ねる。
「あれだ、あれ。数学だ。眠くなる方の。」
「お前の場合はどの授業だろうが眠くなるだろ。」
「あ、やべ。俺教科書忘れちゃった。快翔、貸してくんね?」
「アホなこと言うな。隣同士ならまだしも前後だぞ。誰が貸すもんか。」
ロッカーに教科書を取りに行った快翔はため息をつきながら面白い友人を持ったものだなと思った。
こうして、何の変哲もない朝が過ぎていくのだった。
いかがだったでしょうか?感想お待ちしてます!それではまた次回お会いしましょう!