転校生①
こんにちは。らーゆです。特に説明することもありませんので、「思い出にスターチスを」ゆっくりお楽しみください!
東京都墨田区内にある花岬高校は、今日転校生が来るという話題で朝から盛り上がっていた。
「なぁ快翔、今日うちのクラスに美人な転校生くるらしいぜ。」
気怠げに話しかけてきたのは快翔の前の席に座る、友達の1人である花木悠太だ。センター分けが似合うサッパリとした感じのイケメン。実際、女子間でも人気はあるそうだ。
「ん?あぁ、今日だっけか。」
興味無さげに返事をしたのは雨無快翔。ごく普通の男子生徒だ。ある一点を除けば。
「今日だっけってお前、転校生の事知ってんの?」
「知ってるも何も俺の幼馴染だよ。前にちょっとくらい話したことあったろ。」
快翔にはごく普通の男子生徒には存在しない美人な幼馴染がいる。
「そういや聞いたことあったな。」
キーンコーンカーンコーン。朝のSHRを告げるチャイム。日常が始まる合図である。
「お前ら席つけ。知ってるとは思うが今日は転校生がくるぞ。」
快翔達が在籍する2年3組の担任が声をかける。
「それじゃぁ風真さん、入ってきてー。」
ガラガラと教室の戸が開く音がし、転校生が教室に入った途端に空気が変わる。二重に猫のような大きな目。高い鼻と小さな唇。腰まで伸びたストレートの黒髪。誰もが二度見をするような整った顔立ちをしているのは快翔の幼馴染である風真有美だ。
「初めまして。神奈川県から引っ越してきて、花岬高校に転校してきました。風真有美です。皆さんとゆっくり仲を深められたら嬉しいです。よろしくお願いします。」
「風真さんって彼氏とかいるのー?」
「好きなタイプはどんな人ですかー?」
クラスの男連中が野次を立てる。
「お前ら、転校初日にそんな事ばっか聞くんじゃねぇよ。それにもうすぐ1限目始まるぞ。」
担任が野次馬をなだめる。
「んじゃぁ、風真さんはあそこで死んだような目してる雨無の隣ね。教科書とかも雨無に見せて貰ってね。」
「ずりぃぞ、雨無。」
「そうだそうだ。そこ変われや!」
「爆ぜろや雨無。」
有美がどこに座ろうが標的になるのは隣の席の人であり、標的は自分になったかもしれないのに、男どもは野次を立て続ける。
「ずーるーいーよー雨無くーん」
「お前は調子にのるな悠太。」
「ごめんな。主人公ポジの雨無くん。」
とりあえず悠太の殺し方を後で考えるとして、無視を決め込む快翔であった。
そんな茶番をしていると有美が席に座った。
「久しぶりだね?快翔。元気だった?」
「俺はぼちぼちやってたよ。有美の方はぁ聞かなくてもいいか。」
「快翔、最後に会ったときより性格悪くなっる。」
「褒めないでくれよ。照れるだろ」
「誰も褒めてないでしょ。もう。」
そんなくだらない話をしていると1限目の始まりを告げるチャイムが鳴った。
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「っしゃ、昼飯だー!」
4時間目が終わり、授業終わりの挨拶とともに悠太が叫ぶ。
「そうだな。俺もお腹すいた。有美も一緒に食堂で食べるか?」
「うん。そうしようかな。学校案内も兼ねてさ。」
快翔がいる2年3組は3階にあり、食堂は1階にある。300人くらいは余裕で入れる大きさだ。
「じゃぁ、早速食堂に行こうぜ。」
悠太が興奮気味に早口で言う。余程お腹が空いていたのだろう。
「2人のおすすめの定食ってある?もしあるならそれにしようかなって。」
「唐揚げ」
「トンカツ」
多種多様とはこの事だ。
「おいおい快翔、トンカツとは馬鹿舌かぁ?確かに美味いのは認めるがよ、ここは唐揚げ一択だぜ。」
「ふんっ」
快翔は鼻で笑う。
「おい快翔、なにがおかしいんだ?」
「笑わせるなよ悠太。馬鹿舌はそっちだろ。唐揚げなんてただ衣が他のより美味いってだけだ。トンカツは肉、衣、ソースこの全てが他に勝るんだよ。」
2人は牽制し合う。この硬い空気を破ったのは有美だった。
「ふふっ、そこまでムキにならなくてもいいじゃん2人とも。子供じゃないんだからさ。」
「ま、それもそうだな。少しは大人になれよ悠太。」
「はいはいそうですね。大人な快翔様には敵いませんよ。」
結局、快翔はトンカツ定食、悠太は唐揚げ定食を頼み、有美はカレーを頼んだ。
「うん、カレー美味しい。」
「まぁ、ここの食堂は何を頼んでも美味いからな。有美、トンカツ一切れ食うか?」
「いいの?快翔。」
「俺にもくれよ。快翔。な?友達だろ?」
「有美にはあげるけど、唐揚げ派の悠太にあげるトンカツはねぇな。」
ふと、思い出したかのように有美が言う。
「そうだ、快翔。放課後さ、街案内してよ。スカイツリーとか行ってみたい。」
「分かった。いいぞ。悠太はどうする?」
「悪い。俺今日用事あるわ。」
申し訳なさそうに頭を下げる悠太。
「お前が用事あるなんて珍しいな。一体何の用なんだ?」
「えーっと、なぁ快翔、何の用があるんだっけ?俺。」
「俺に聞くなよ。」
「それもそっか。」
忘れる程なら大した用事でもないなと思いつつも再度断りを入れる悠太だった。
「花木くんって面白いね。」
「そんな事ないよ。風真さん。」
「用事を忘れる人なんてなかなかいないよ。」
「それもそっか。」
こうして昼休みは過ぎて行くのであった。
ここまでご覧いただきありがとうございます。初めて執筆という作業をするので、誤字脱字が多々あると思います。暖かい目で見守っていただけると幸いです。誤字脱字については、ちゃんと指摘していただけると私が喜びます。それではまた次回出お会いしましょう。ありがとうございました!