第6話 おにぎり食べ放題だって
朝5時台の電車で新宿に出て、そこから湘南新宿ラインで高崎の手前の駅で降りた。
なんでヒーローなのに、こんな遠くまで、わざわざ出向いて戦う必要あんだ?本当にヒーローなのか?
と、不安を感じならが、トラックの多い幹線道路を歩いて、スマホに送られてきた地図で指定された場所についた。
何もないところに工場のようなものがいきなり現れる。
そんな場所だった。
盛り上がったヒーロー心は消え、工場での早朝バイトの気分になっていた。
そうしたら、
ドーンとでかい音。
派手な爆破が起こって、
遠くに煙が上がっていた。
おーっ、本当にやってるよ!
消えかかっていた僕の中のヒーロー心が再び熱くなってきた。
集合時間の8時30分よりだいぶ前に着いたのだが、もう戦いは始まっているようだった。
でも、これからどうしていいかわからない。
工場前の駐車場をウロウロしていると、
メガネをかけた髪がピンクの女性が近づいてきた。
「今日から参加の追加戦士・黒田至恩さんですね。アシスタントプロデューサーの橘です控室で受付しますのでついてきてください」
控室? 受付?
戦いは始まっているというのに、そんなことをしている場合か?
そのメガネピンクAPの後に付いて、工場のシャッターが半分空いたところをくぐり、会議室のような場所に通された。
中はだだっ広い空間で、キャンプ用品のようなチェアが並び真ん中のテーブルの上にはコーヒーやおにぎりが並んでいた。
ご自由にどうぞ! とかわいい文字で張り紙が書かれていた。
「すいません、今日は何するんですか? 撮影ですか?」
僕はついに気になっていた質問をした。
「そうよ」
軽く返すメガネピンクの答えに、失望もしたがかなりホッとした。
「ということは、僕はヒーロー番組の撮影に呼ばれたってことですね」
「それはある意味正解である意味不正解」
「どういうことですか」
「ヒーロー達は本当に悪と戦っている。あなたは、うちの会社のチャンネルとかみたことないの?」
「スマホはパケット代かさむので、マンガとゲームしかしてなくて」
「登録者1000万人よ」
「すいません」
「まずは見て、そんな人初めてよ」
「はい」
朝、食べてなかったので、テーブルのおにぎりが食べたかったが、そんな事聞ける感じじゃなかった。