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第13話 覚醒だって

 僕は主戦場と関係の無い場所を走りまわりながら、いかにも隙を狙ってる風に動き、敵をかく乱し始めた。

 作戦は地味だが100パーセント無駄だとはいえない。

 何かあったらいつでも飛び出せる位置でもある。


 そして、

 今だ! というところで最初のセリフを叫んだ。


「誰が読んだか知らないが、助けに来たぞ」


 振り向いたのはザコ怪人だけ。

 仲間からの反応はないが、これで1つクリアだ。


 次は、あの謎ゼリフだ。

 乱戦の中、誰かヒーローのうちの1人と絡んで、それが過ぎ去った後、

 単独でつぶやくようなシチュエーション作りが必要だ。


 そう、これは部活の時、好きな陸上部の女子が遠くから見ている状況。

 3軍の僕が1軍に混じって、そこの選手と気さくな会話をしている風に見せたいとき、どうした?

 絡んでる状況をどう作る?


 僕は、だらけた生活で動きの鈍くなった心と体に、スイッチを入れた。

 誰と絡むか?

 まずは、この場で組みやすい相手を探し対策を考えないといけない。


 まずは、レッド。

 電話をくれたのもレッド、明らかにリーダーでマウント体質の男。

 こういうやつに絶対服従の態度を見せながら、邪魔は一切しないに限る。

 一方で、こういうタイプは『いつもセンターの自分ばっかり、つらい目にあってる』という勝手な被害者意識も持ってる奴が多い。

 だから、人がさぼっていることに敏感だ。

 ここは、僕は見える場所で露骨に動き回って、いかにも「困ってます、私には手に負えません、頑張ります」という明らかに競争相手ではないですよ、邪魔しませんよの下級キャラを見せることで近寄るのが最良だ。


 とにかくそのタイミングを探る。


 僕はレッドの目線の先で、半グレ怪人の手下を後ろから、パンチをしたり、タックルしたり、逃げ回ったり、戦いの中心と無関係の動きを始めた。


 そして、視線の中でほかの戦士も分析した。

 次は、ブルー。

 レッドを押しのける勇気も資格もないくせに、他の戦士にはつらく当たる。完全2番手体質。

 自尊心が強いので、おだてると調子に乗りやすい。反面猜疑心も強く、面倒くさい。

 こういう奴は絶対性格が悪い。絡んでもろくなことはない。

 当面は避けておくに限る。


 つぎは、グリーン。

 目立たないが、ブルーを確実に意識している。自分の中では2番手のつもりで、さっきから見てるとカメラが寄ってくると、パワープレーで派手な技を決めている。その一方で、レッドの後ろに回ってアシストするなど、気配りも忘れていない。

 自分の立ち位置アピールしながら、先輩は立てるタイプか?

 監督にも気に入られやすい。

 今はお互いのポジションが被らないようこちらも配慮していれば、相手もテリトリー浸食することはない。したたかだ。

 こいつとはいずれ戦うことになるだろうが、一番後だ。今は絡まないほうがいい。


 そしてイエロー。

 女性枠で活躍チャンスは与えられているようだが、そのポジションに飽きているような雑なふるまい。声も酒焼けしているようなガラガラ声だった。きっと戦士間か会社と問題を抱えていて、ストレスためて昨日深酒したに違いない、動きも乱暴だ。

 今は巻き込まれないように、敵に思われないように新人ポジションを活用して僕はかかわらないことにした。


 良く分からないのが白、ホワイトだ。

 レギュラー戦士カラーじゃないことからしてもヒエラルキーは最下位。

 だって白だよ。

 どう考えてもキャラ的に微妙だ。

 現状のヒエラルキーは最下位に違いない。僕の登場で慣れないマウント意識が発動し始めているに違いない。

 その証拠に、観察しているだけで、どことなく浮いている。


 貴族然としたスタイルが滑っていて、クールキャラではブルーとド被り。

 弓を使って格好良く戦ってると思ったら、カメラの方に向かって敵を投げ倒すとか怪力技使って、立ち位置ぶれ始めている。

 結果、さっきみたいに端っこの方に追いやられて、誰かと一緒に敵を倒したり、画面の穴埋め的な立ち位置で生き残ってきたようだ。


 そこに僕だ、どうなんだ? 

 色がない時点で白との違いはないどころか、なんとなく白の方が弱そうに感じる。

 白は不安定な自分の位置。そのことに十分気付いていない。


 こういうやつは高校時代にたくさん見てきた。

 1軍でなく2軍の中盤以降のレベルの奴に多い。

 最初は馴れ馴れしく話してきて、僕を品定めして、抑えの友達のような態度を取っていたかと思えば、利用価値なしと思うと急に連絡もしてこなくなる。

 一番絡みたくないが、最初につぶしておくべき相手だ。


 なので、今日のポジション取りは見えた!

 レッドの視線に入りつつ下手にアピール

 イエローやブルーが近づいてきたら、適度な距離を保ち

 白とは逆位置をとりながら、敵を邪魔するゾーンディフェンスで控えめに目立ち、

 カメラに白を写させない。


 それが正解だ。


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