第12話 ピンチはチャンスだって
その時、忘れかけていた感覚がよみがえってきた。
思い出したくもない暗黒記憶の奥底、
3年間サッカー部の3軍だった日々、
中学まではバリバリのレギュラーだったのに、調子乗って県内の名門サッカー部のある学校に入ったのが間違いだった。
一度も試合に出ることなく、大会はいつも応援。1軍レギュラーには彼女いるのに、僕らはB級品として下にみられていた。
レギュラーが練習しているとき、僕らは備品を整備していた。
レギュラーが気持ちよく試合できるように、僕らは裏方に徹した。
レギュラーは多少髪伸ばしても怒られないのに、僕らは全員坊主。
レギュラーが試合で女子から声援受けているとき、僕らもスタンドで応援する係。
レギュラーが皆な推薦で大学決まって遊んでいるのに、僕らは全員浪人した。
レギュラーは2軍を見下し、2軍は3軍を見下す。僕は部活ヒエラルキーの最下層だった。
だから、
だから、こういう扱いには慣れているんだ。
高校時代の悔しい日々の中で、僕はそれなりに心地よい居場所を見つけ出していたはずだ。
卑屈にはならず、ズルいこともしない、目立たないけど、頼りにはされる。
独特のポジションを、
思い出せ、思い出せ。
あの頃の輝いていた僕の3軍の日々を……
『でしゃばった真似するなよ』
『一回くらい目立ったって無駄だ』
『センスないやつが邪魔するな』
レギュラーから言われた傷つく言葉の数々。悔しくて僕達は、レギュラーより長く練習した。それでも追いつけない、才能やセンスは本当に残酷だ。
でも僕達だって選手だサッカーがしたい。
悔しい思いを思い出せ!
どうした? こういう時は
さぁ、さぁ、どうする?
裏の裏を読め!
目立たない場所を探せ!
逆だ、裏だ、カウンターだ
目立つことは諦めて、誰も行きたがらない場所で無駄に走り回って
とにかく相手を疲れさせろ
それしかない!
僕は、怪人と戦う他の五人と全く違う場所に入った。
タイミングを失い遠巻きに動き回る敵の雑魚キャラ、最下層と向き合い。
そいつらの不意をついて、一人ずつ潰していく!
それしかない。
派手な爆破や、ボス怪人との戦いは華やかな人たちに任せて
ザコはザコらしくザコと向き合うこれが
僕の人生だ
僕がそれでいいと思ってるんだから
誰にも何も言わせない