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荷物列車

 函館本線の41列車は森を6時38分に出て札幌に13時4分に着く。

 43列車は函館を23時51分に出て滝川に9時51分に着く。

 42列車は札幌を13時16分に出て函館に22時8分に着く。

 44列車は札幌を21時19分に出て函館に5時2分に着く。

 このうち43列車は途中の札幌から列車番号が825に変わる。

 東北本線の41列車は仙台を9時7分に出て青森に19時36分に着く。

 42列車は青森を7時38分に出て仙台に18時32分に着く。


 これらは、すべて普通列車である。

 であるにもかかわらず、ふた桁の列車番号は、まるで特急列車のようだ。

 事実、大阪発の九州寝台特急「あかつき1号」が41列車、「あかつき3号」が45列車、「あかつき2号」か44列車、「あかつき4号」が40列車である。

 これらは、ただの普通列車ではない。

 いずれも荷物列車に旅客が乗車できる客車を連結した列車である。

 だから、函館本線の43列車は荷物車両を解結する札幌までとなり、客車列車だけとなる札幌ー滝川間は825列車に番号が変わるわけだ。

 令和の今に荷物列車はない。

 寝台車や食堂車が絶滅危惧種とすれば、荷物車は絶滅種と言える。


 そもそも荷物列車とはなにか?

 貨物列車と荷物列車はなにが違うのか?

 貨車やコンテナ単位で運ぶものを貨物、嵩張らなくて車両に混載できるものを荷物と呼ぶらしい。

 かつての荷物列車は新聞、雑誌、郵便物、手荷物などを輸送していたという。

 荷物列車が今なくなったのは、宅配便の普及でトラック輸送に置き換わったためだそうだ。

 荷物列車の時刻は、時刻表に記載されている。貨物列車の時刻はないのに、荷物列車の時刻が掲載されている理由はよくわからない。

 時刻表ピンクのページには「手荷物と小荷物」の案内があり、それぞれ運賃の記載もあるが、なかなか複雑で、一読しただけではよくわからない。


 荷物列車は長距離列車が多い。それも、旅客列車では考えられないような長距離列車さえある。

 例えば、先述した東北本線の41列車と函館本線の41列車、函館本線の42列車と東北本線の42列車は青函連絡船を通じてつながる同一列車と思われる。連絡船に荷物列車ごと運んでいたのであろう。

 そして、旅客用の客車列車は仙台発着であるが、荷物列車の始終点は隅田川。下りは23時30分に隅田川を出て、青森には翌日の19時56分に着く。そこから海を渡り、翌々日の5時40分に函館を出て、13時4分に札幌に着く。


 盛岡15時25分発の1032列車の目的地は、なんと京都である。

 盛岡を夕刻に発車して東北本線を南下、小山を1時12分に発車した後、大宮で東北本線から離れる。

 そこからどう経由するのか時刻表には記載されていないが、東海道本線には横浜から2033列車として顔を出す。小田原着が14時36分なので、関東のどこかで長時間停車しているものと思われる。

 あとはひたすら東海道を下り、京都着は0時30分である。


 東小倉0時32分発2030列車は関門トンネルを抜けると、山陽本線、東海道本線をひたすら東上し、隅田川に翌朝5時22分に着く。

 のだが、一部編成はどこかで分割して、どこかを経由し、大宮から東北本線1031列車となる。小山には6時40分着。そのまま東北本線を北上、終着の青森には21時34分に着く。

 九州発青森ゆきなど、旅客用客車を併結してくれていれば、どんなに愉快な列車だったであろう。


 大阪20時11分発の4047列車は、京都で30分以上の停車後、米原経由で北陸本線に入り、日本海沿いに北上する。富山4時39分、直江津7時13分、新津10時6分、秋田16時45分と停車し、終着の青森に22時31分に着く。

 大阪20時15分発の寝台特急「日本海3号」の青森着は11時45分なので、寝台特急より11時間ほど余計にかかる格好だ。荷物の積み下ろしに時間がかかるため、駅ごとの停車時間が長いのは致し方なしといったところか。


 荷物列車が運転されていたのは、主要線区であった。

 東海道本線は汐留発九州ゆきが6本、運転されていた。西鹿児島ゆきが1本、熊本ゆきが2本、東小倉ゆきが3本である。この他に、盛岡発京都ゆきが加わる。上りは鹿児島発汐留ゆきが2本、東小倉発汐留ゆきが4本と、東小倉発の青森ゆきと隅田川ゆきの併結列車が1本である。

 汐留ー東小倉のうち1往復は呉線を経由する。途中、竹原と呉に停車する。赤穂線経由、岩徳線経由の列車はない。


 関西本線、紀勢本線には荷物専用列車はない。

 宇野線にもない。四国島内にもない。

 山陰本線、伯備線、福知山線、播但線のいずれにもない。

 九州は鹿児島本線の他には、長崎本線、筑豊本線、日豊本線のいずれもない。

 北陸本線・信越本線・羽越本線・奥羽本線は大阪ー青森間に1往復。米原経由で新潟には立ち寄らない。

 中央本線は下りが熱田発北長野ゆき、上りが長野発熱田ゆきの1往復。新宿側には運転されていない。

 総武本線にはない。内房線、外房線然りである。

 上越線には隅田川ー上沼垂間に1往復。途中、高崎で信越本線経由の直江津発着列車を解結・併結する。

 東北本線は下りが隅田川発が4本あり、青森ゆきが2本、奥羽本線経由秋田ゆきが1本、福島ゆきが1本。他に前述の東小倉発青森ゆきが1本、福島発青森ゆきが1本である。上りは青森発隅田川ゆきが3本、盛岡発京都ゆきが1本、仙台発隅田川ゆきが1本。奥羽本線の上りは秋田発福島ゆきが1本。

 常磐線にも、隅田川ー仙台間で1往復あった。

 北海道は函館本線は山線経由で函館ー札幌に2往復、札幌ー旭川間に1往復あった。他は室蘭本線、根室本線、石北本線、宗谷本線、留萌本線のいずれにも運転していない。


 荷物列車の停車駅は限られる。特急列車並みの列車が多い。

 一方で停車駅での停車時間は概ね長い。荷物の積み下ろしに時間がかかるためであろう。名古屋、大阪などの大きな駅では30分前後、停車する場合も珍しくない。

 一方で、東北本線の41列車、42列車の仙台ー青森間や函館本線の42列車は、ほぼ各駅に停車する。東北や北海道の小駅には、荷物輸送の需要があったということだろうか。積み下ろしをどうしていたのか含めて、よくわからない。


 話はややこしくなるが、荷物列車とは別に、荷物車を連結した旅客列車もあった。

 時刻表の列車編成表には「ニ」「〒」と記載されている。荷物車、郵便車と説明書きがある。


 ・鹿児島本線経由、東京ー西鹿児島間の寝台特急「はやぶさ」

 ・日豊本線経由の東京ー西鹿児島間の寝台特急「富士」

 ・東京ー博多・下関間の寝台特急「あさかぜ」

 ・東京ー宇野間の寝台特急「瀬戸」

 ・東京ー浜田間の寝台特急「出雲1・4号」

 ・新大阪ー大分間の寝台特急「彗星5・2号」

 ・大阪ー熊本間の夜行急行「阿蘇」

 ・大阪ー長崎間の夜行急行「雲仙」

 ・鹿児島本線経由、門司港ー西鹿児島間の夜行急行「かいもん5・6号」

 ・日豊本線経由、門司港ー西鹿児島間の夜行急行「日南9・10号」

 ・大阪ー大社間の夜行急行「だいせん5・8号」

 ・出雲市ー浜田間の夜行急行「さんべ5号」

 ・博多ー浜田間の夜行急行「さんべ6号」

 ・大阪ー青森間の寝台特急「日本海」

 ・大阪ー青森間の夜行急行「きたぐに」

 ・名古屋ー長野間の夜行急行「きそ7・6号」

 ・新宿ー松本間の夜行急行「アルプス15・18号」

 ・上野ー新潟間の寝台急行「天の川」

 ・上野ー新津間の夜行急行「鳥海」

 ・上野ー金沢間の夜行急行「能登」

 ・上野ー福井間の夜行急行「越前」

 ・上野ー直江津間の夜行急行「妙高9・10号」

 ・東北本線経由上野ー青森間の夜行急行「八甲田」

 ・常磐線経由上野ー青森間の寝台特急「ゆうづる7・11・13・2・4・6号」

 ・常磐線経由上野ー青森間の夜行急行「十和田5・2号」

 ・奥羽本線経由上野ー青森・秋田間の寝台特急「あけぼの」

 ・奥羽本線経由上野ー青森間の夜行急行「津軽1・4号」

 ・札幌発函館ゆき夜行急行「すずらん6号」

 ・札幌ー釧路間の夜行急行「狩勝7・8号」

 ・札幌ー網走間の夜行急行「大雪9・10号」

 ・札幌ー稚内間の夜行急行「利尻」


 荷物列車の運転していない日豊本線なども、これら列車がカバーしていたのであろう。

 いずれも特急、急行列車であるため、速達性では普通の荷物列車に比べて優位にあるとも言える。なお、これらは客車列車である。ただ、中央本線の「アルプス」だけが電車であった。

 ひとつ疑問があるとすれば、駅の停車時間が限られる特急や急行では、荷物の積み下ろしをどうしていたのだろう。時刻表を見ていると、変に長時間停車の駅があったりするので、荷物はそういった駅でのみ取り扱っていたのかもしれない。

 今ひとつ疑問があるとすれば、特急、急行列車に併結された荷物車で運ぶ荷物と、普通の荷物列車で運ぶ荷物との運賃の違いはどうなっていたのかということ。時刻表にはそれらしき区分はなさそうにみえる。しかし、到達時間はまるで違ってくる。同じ運賃で着く時間が大きく異なるでは納得されにくかろう。


 最近になって、新幹線で荷物の取扱いをはじめるようになった。

 在来線と違って、新幹線には圧倒的なスピードがある。専用車両の計画もあるそうだ。東海道新幹線はリニア中央新幹線が開業した後は、列車本数が激減するであろうから、空いた線路に荷物列車を走らせる余裕が生まれる。

 荷物列車や荷物車は在来線からは絶滅してしまったが、新幹線で大きく復活することになるのかもしれない。働き方改革だとか、人口減少だとかで、トラックの運転手不足は今後ますますひどくなろう。自動運転もいいが、長距離輸送は鉄道に任せることを再考してみる時期に来ているのではないだろうか。

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