祝・四人パーティー結成
――翌日。
「……という訳で、今日はコレットとともにクエストに出ることにする。急な話で悪いけど、それでいいかな?」
「おっけーです」
事情を聞き終えたひなたはうなずいた。
「コレットさんでしたね。本日は目隠れ美少女アイドル系冒険者ひなたちゃんの記念すべきデビュー戦ですのでどうぞよろしくお願いしますねー」
「ええ。優雅に紅茶を飲みながら読書するのが趣味なのでよろしく頼むわ」
わあ、カオスだぁ。
互いに強引な自己アピールをねじ込むふたりを眺めつつそう思った。
「おふたりとも静かに。ここで我々を率いる高潔たるリーダー、レオン様による落涙必至の感動的なお言葉があります。傾注なさい」
――そして従者は俺を生け贄にさらなるカオスを召還――ッ!!
「いや待ったっ!! どんな無茶ぶりしてくれてんだっ!? 俺はそんなのやらない――」
「……ほほう。果たしてレオンさんに美少女アイドル系ひなたちゃんの心を動かす見事な言葉を示すことができますか?」
「なにそれ参考になりそ……ふっ、まずはお手並み拝見といきましょうか」
「(期待に満ちあふれた表情のアズ)」
たまらず叫ぶも時すでに遅し。三人ともすっかり俺の言葉を待つ空気になっている。
なんちゅうことしてくれてんねん(※似非)。
「………………あー。そうだな……」
無言を貫く勇気もなく、俺はやむを得ず口を開く。
「あくまで暫定だが、まずはパーティーを組めたことを喜ばしく思う。……さて。すでに言ったとは思うが、俺たちの最終目標は"賢者の遺産"を発見することだ」
実際には悪魔カラルリン襲撃から生き延びることだが、当然それは秘密である。
「前途は厳しいだろう。予期せぬ困難が無数に待ち受けているだろう。……それでも四人で団結し力を合わせて立ち向かえば、いかなる障害も必ず乗り越えられると信じている」
三人を見回しながら、思いつくに任せて言葉をつむぐ。
「さあ行こう。そしてこの手で偉業を掴もう。……みんなの奮戦を期待する」
……これでなんとか形にはなったか?
どうだ。みんなの評価は――
「……う~ん……少しフフってなりましたので六点ですかね」
「フフってなる要素入れたつもりないんだけど」
と、ひなた評。
「……なんていうか……五点くらい? っていうか待って。最終目標が"賢者の遺産"っていま初めて聞いたんだけど」
「そういや言ってなかったといま初めて気づいた」
と、コレット評。
「……なんと……なんと心に響くお言葉でしょうか。このアズ、感激いたしました。文句なしの一〇〇点でございます」
「いや待って。まさか一〇〇点満点中の六点とか五点だった?」
と、アズ評。
平均点・37点。……俺の言葉なんて所詮こんなもんだよ、くそっ。
「……とにかく。問題なければさっさと行こう」
初っ端から微妙に傷つきつつ、俺たちは出発した。
……その先に苦難が待ち受けているとは、この時は想像すらしていなかった。
今回受けたクエストは"センタ北の丘陵"における魔物の間引きである。
最近この丘陵に魔物が増えているので、種類を問わず規定数討伐する――という内容だ。
ようは敵をひたすら倒していけばOK、という単純な内容である。コレットの実力を見るにはちょうどいい。
「――行くわよっ!! 〈範囲暗黒魔術〉ッ!!」
という訳で、コレットはさっそく魔術をぶっ放していた。〈魔力超過〉で威力を増幅された闇の渦が、三匹の"火吹きトカゲ"たちを飲み込む。
"原作"での話を持ち出すが――センタ北の丘陵の適正Lv帯の術者であれば、範囲魔術の一発だけではサラマンダーは倒せない。体力の七割を削る程度である。
それでも十分な働きであり、あとは前衛が通常攻撃で仕留めていく流れだが――さすがはユニークスキル。身を蝕む暗黒魔力の中で、体長一メートルほどの赤いトカゲたちが灰となってかき消えていくのが見えた。
「やったぁっ、……ま、まあ当然ね」
その場で無邪気に跳ねかけたコレットだが、ギリギリそっけないセリフを言うにとどめた。もちろんそう解説できる程度にはバレバレであったが。
まあ、威力は文句なしだ。分かってはいたが実際に目の当たりにすることで改めてユニークスキルの強力さが実感できる。
感心してばかりもいられない。残る敵――"原作"では敵全体を攻撃できる〈ダークネス〉だが、あいにく"現実"なら範囲外に逃れることができる――は三匹。さっさと片付けてしまわなければ。
「おおー、コレットさんやりますねー。これはボクも負けてられません! ……聞いてください、〈神秘の歌〉!」
神秘の歌
作詞 坪庭ひなた
オウイエ~…… オウイエ~……
ミラクルパワー シャカリキパワー
すてきなパワー ケツモチパワー
オウイエ~……
「……しゃあっ!! げんきでた――――っ!!」
ひなたからの歌によって魔術攻撃力が強化されたコレットは立て続けに〈ダークネス〉を発動。より一層荒ぶる闇魔力の渦を前に残るサラマンダーたちはなすすべもなく消滅していった。
「やりましたねコレットさん!」
「いやあ、ひなたもすごいじゃないの!」
サポーターとアタッカー、功労者のふたりはさわやかにハイタッチする。
戦果だけを見ればケチのつけようのないものだが……相変わらずなんなんだあの奇っ怪な歌詞は。
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