クズ男爵に転生(イン)したお!(ヤケクソ)
「――よりにもよって"クズ男爵"かよド畜生ぉぉぉぉぉぉ――――――っ!!」
七歳の春の、とある早朝。唐突に前世の記憶を思い出し、『どうやらゲームの世界に転生したっぽい』と結論づけた俺は、ベッドの上で転げ回っていた。
マイヤー男爵家の三男・レオン。それが俺の名であり、前世でプレイしていたハクスラ系ファンタジーRPGの嫌われ悪役キャラの名であった。
レオンが具体的にどのような人物かと言うと――
・「ギャハハハハ!」と貴族とは思えぬチンピラ笑いとともに初登場、主人公へ罵
声を浴びせるだけ浴びせて退散
・それ以降もひたすらに言動がウザい
・常に上から目線
・弱きを挫き強きに媚びへつらう、絵に描いたような小物ムーブ
・『テメェらは弁えろ! けど俺は弁えませぇ~ん』を地で行くダブスタの権化
・徹頭徹尾、他 責・他 罰思考
・ひたすらに言動がウザい
・進行次第では故人を嘲笑するセリフまで飛び出る。目にした全プレイヤーの殺意
はMAXまで高まる
・終盤、ラスボス一味から『術に使用するための適正が高い』という理由で"魂"を
狙われ、惨たらしく殺害される
・「い……っ、嫌だあああああああああっ!!」という断末魔に俺含めた全プレイ
ヤー(推定)はモニターの前で『ざまあ』の大合唱
・その死を悼む人物、作中でゼロ
・公式設定資料集で従者への虐待行為などの余罪まで判明
・ウザい
――とまあ、こんな感じの奴だ。
擁護の余地がない腐った人間性。どこに出しても恥ずかしい言動の数々。プレイヤーたちから自然と『クズ男爵』呼ばわりされるのも当然なキャラクターなのである。
よりにもよってレオンに転生してしまうとは。主人公とか、他にもっといいキャラがあっただろうに。
しかもシナリオ通りに進むのであれば俺はラスボス一味に殺されてしまうことになる。
年齢などは明かされていない――というよりプレイヤーの想像に委ねるべく設定されていないためあくまで推定だが、俺の寿命は長くとも十代後半までということだ。
ゲームの舞台外へ逃げるのも無意味だ。詳細は省くがラスボス一味は千里眼的な能力を持っており、それによって俺の存在を捜し当てられているためである。
俺はしばし絶望のうめき声を上げつつベッドの上で悶絶していたが、
(――ふざけんな)
やがて胸中に、定められた運命への怒りがふつふつと沸き上がってきた。
このまま原作ゲーム通りにおとなしく殺される?
そんなのは断固御免だ。幸いにも猶予はある。こうなりゃ死の運命を乗り越えてやるしかねえ。
「――俺の性根とクソッタレな運命、両方とも叩き直してやろうじゃねえかっ!!」
俺はベッドの上で叫ぶ。
物音を聞きつけ部屋に入ってきた使用人の『ああ……ついに坊ちゃまのお脳が残念になってしまわれて……』という視線など意に介さず、俺は天に拳を突き上げるのであった。
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