一方通行な三角関係
リハビリを兼ねて思い付き短編。
前半シリアスですが、後半はギャグ。
温度差で風邪をひかないようにお気をつけください。
「……典英、あんた天梓ちゃんをどうするつもり?」
「……え、だ、だから僕が育てるって……」
「……のりにいちゃん……」
「……はぁ……。確かにあんたには収入もあるし、持ち家もあり一人暮らし。二十代半ばで大したものよ。三十手前で無職の実家暮らしの私とは大違いだわ」
「い、いや、そんな……。この家は親から管理を任されてるだけだし、大したものなんてそんな……」
「……のりにいちゃんち、おかねもち……?」
「でもだからって、小学生の女の子引き取って育てられると思ってるの!?」
「で、でも叔父さんが亡くなって、奥さんも、その、と、遠くに行かなきゃいけなくなって、一人になっちゃった天梓ちゃんをほっとくなんて……!」
「……ありがとう、のりにいちゃん……」
「……それはそうよ。だけどいとことはいえ、未婚の若い男の一人暮らしに小学生の女の子を住まわせるって、周りからどんな目で見られるか考えないの?」
「……うぅ……」
「ご、ごめんなさい、わたしのせいで……」
「……だからあたしが一緒に住んであげる」
「……え、そ、添美姉さん……?」
「そえねえちゃん……?」
「あんたも天梓ちゃんもいとこなんだから、構わないでしょ? ただし、あくまで同居人だから。あたしや天梓ちゃんに変な事しようとしたら、……わかるわね?」
「し、しないよ! ……ありがとう……」
「さんにんいっしょ……! うれしい……!」
「はいはい。じゃあ色々面倒な手続きを片付けますか」
「あぁ……!」
「うん!」
十数年後。
「典英さん! どうですかこの服! セクシーですよね? もうすぐ高校も卒業しますし、結婚する気になりました!?」
「だーかーら! 僕はあくまで天梓の保護者! 結婚はしません! 僕は奥さんにするのは添美姉さんと決めてるんだからね!」
「は? 馬鹿なの典英? あんたなんかと結婚するわけないでしょ? あたしの心は天梓ちゃんただ一人のものなんだから……!」
「おば様、目つきがいやらしいです。これは典英さんに見せるために着てるんですからじろじろ見ないでください」
「僕にも見せなくて良いから、早く普通の服に着替えてきなさい。風邪引くよ? ……全く、添美姉さんとお揃いで着るって言うから買ったのに……」
「あんたのその馬鹿な下心、六十年くらい寺に籠って捨ててきな。でもあたしとペアルックしたいって言うなら大歓迎よ天梓ちゃん!」
「結構です。おば様の胸じゃこういう強調系の服は似合わないと思いますし。その点私のたわわな感じは良いでしょ典英さん!」
「僕はむしろ薄い胸の方が好きなんだ。理想は添美姉さんくらいのあるかないかレベル……!」
「そんなに平たいのが好きなら壁にでもキスしてなっ!」
「ぶげっ!」
「典英さーん! 何で毎回どつかれるのにそういう事言うんですか!?」
「……ふふっ、これもまた添美姉さんとの愛の形だからだよ……!」
「はいはい。こんな変態は記憶から抹消しておきなさい。……でも天梓ちゃんの胸は本当に素敵よね……。あやかりたいからちょっとだけ……?」
「女性同士でもセクハラは適応されますからね。典英さんになら何をされても訴えませんけど。さぁ鼻血止めますから膝枕どうぞ」
「鼻に脱脂綿詰めるくらい自分でできるからいいよ。もういい加減諦めて新しい恋を見つけなさいって」
「お前が言うな」
「おば様もです」
こうしてわちゃわちゃした三角関係は、ゴールが見える気配すらないのであった。
読了ありがとうございます。
恒例のお名前紹介。
御門……三角
典英……点A
添美……点B
天梓……点C
思い付いちゃったんだから仕方ない。
添美はちょっと無理があったかな……。
典英
↙︎ ↖︎
添美 → 天梓
こんな関係性。
じゃんけんかな?
ちなみに当初からこうだったわけではなく、同居するうちに感情が育ちました。
添美は超進化。
お楽しみいただけたなら幸いです。