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一眠りしたら結構時間がたっていた。
頭もスッキリしたし、足の痛みもまぁ我慢できるし、準備するったって、ピザを頼むのが関の山だけどな。もう外に行きたくねぇし…。
5時半で宅配ピザが届き、ワクワクしてきた。ノンアルビールとピザとサイドのサラダ。
それらをテーブルにならべパソコンをセットする。ノンアルビールを万一倒したら目もあてられないから、端っこに置いて…
カンペキ♪
まだ6時前で早いからギルドオフの開催地のお店をググってみた。
あ~、地中海料理が売りかぁ。美味しそうだなぁ。
ま、こっちもピザだし、雰囲気詐欺でもなんとかなるかな。
後5分前か…ログインするか…。
おお?ルルちゃんが入ってる。よしよし。
ピコ~ン
『ちは。あともうちょっとではじまるね』
『はい、私も準備オッケーですよ』
『面倒だったから、俺、ビールと宅配ピザだよ』
『良いじゃないですか(笑)』
おお、いい感じだ。ルルちゃんもリラックスしている。
次を打とうとしたら、たてつづけにピコ~ンピコ~ンとなった。
オーク『よ!』
アリス『ちは~』
フォックス『ちはちは~。こっちはルシアと共同で入るよー』
テルー『こんにちは♪初めてオフ会オンライン参加させていただきます』
オーク『テルーちゃん、大歓迎だよ』
フォックス『ウルフがどうしても行きたいっていったことがこんな形になったんだよね。テルーちゃんが参加しやすいなら、もっと早くこうすればよかったね』
オーク『ほんとだなぁ。ウルフ、大丈夫か?』
あちゃあ、これはオークがフォックスたちにバラしてるっぽいな。
ウルフ『大丈夫だよ、もう、そう心配しなくていいってば』
テルー『ウルフさん、どうしたんですか?どうして参加できなくてお家にいるんですか?』
ほらほら、ルルちゃんが心配しちゃったじゃないか。
ウルフ『あーうー』
声にならないセリフをそのまま打ち込む。
フォックス『言っちゃえばいいのに』
余計なことを…
アリス『ウルフ、テルーさんが心配してますよ?白状しよう?』
くっそ、たきつけやがったな。
ウルフ『骨折したんだよ』
テルー『骨折…』
ルルちゃんが絶句してるような、そんな想像をしてしまう。
ウルフ『接待の帰りにちょっとあってね、そん時に足をね打っちゃったの』
テルー『だからギルドも出られなかった…』
ウルフ『あ~~っ かっこわりぃ。そうだよ』
テルー『お大事に。大変ですね』
ウルフ『あ、まぁ、小指だけだったからそんな大事じゃないんだけどね。でも固定具が大げさで靴がはけんのよ』
オーク『ま、乾杯から始めようじゃないか。詳しくはそのあと。で、みんな回ってる?』
ウルフ『ビールジョッキもってるよ』
テルー『私もあります』
オーク『じゃ、かんぱーい』
ようやく冷えたノンアルビールをのどに流し込む。
何だかんだですっかりお腹すいていた。
早速ピザをパクつきながら雑談を眺めてると、フォックスが話しかけてきた。
フォックス『なぁ、ウルフ?接待で絡まれたんだろ?』
ウルフ『まぁ』
アリス『酔っ払いに?』
ウルフ『いいじゃないか、そんな話』
かりにもお得意様だ。うかつなことは言えないんだよ。
フォックス『言っちゃえばいいじゃんよ』
こいつ…幼なじみだから気安く言っているな…。
ウルフ『はぁ…接待先のお偉いさんが大変
お酔いになりまして襲われそうになったんだよっ』
アリス『ふぁぁぁあ??』
ウルフ『もっとかっこわりぃ(泣)』
テルー『ウルフさん、なぜそれがケガになったのですか?』
ウルフ『うっ、ルルちゃん(泣)よけたはずみにこけそうになって小指を強打しちゃったんだよ』
テルー『いたそうです。早く治りますように』
フォックス『まだあるだろ、ウルフ』
ウルフ『お前、絶対、からかってるよな』
フォックス『なになに?(ルシア)』
ウルフ『いわねぇよ!』
オーク『接待先のお嬢さんに見初められたんだってね』
はぁ?なんでそれを?いや、見初められたかどうかもわからんのに…
ウルフ『なっ?何でしってんの?』
オーク『お前の接待先…』
ウルフ『あー!オークの会社だったんだ?あのいけすかないおっさんの会社!!』
すっかり忘れていたよ!そうだよ、オークの紹介で契約がとれたんだった。
オーク『そのおっさん、俺の叔父。そのお嬢さんは俺の従妹』
ウルフ『……めっちゃ世間は狭いなぁ、おい』
アリス『WWWWWWW』
フォックス『(笑)(笑)』
これ、ルルちゃんもみてんだぞ!気まずいじゃないか。
ウルフ『そんな気はないから、もうおしまい。ほら!ルルちゃんもびっくりしてるぽいよ』
テルー『いえいえ、気にしてませんからどうぞどうぞ(笑)』
ウルフ『いや、そこは気にしてほしい』
フォックス『ウルフ、かぁわいそ』
ウルフ『うるせぇ!』
なんだか、ショックだ。ルルちゃんにとっては、俺はただのギルド仲間のレベルかぁ。
ちっとも酔えないノンアルビールをやけくそに飲む。