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クロース  作者: ぷかぷか
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あくる日の日曜日。

早速、予約していたミーティングで、アプリのベータ版を簡単にレクチャーしてもらった。

業務外で申し訳なかったが、俺のポケットマネーをつぎ込んで頼み込んだベータ版。

ただ、ひょっとしたらこれはいけるかもと思ったら上司に出してみるからプレゼンしてくれと言われ、友達価格で請け負ってくれた同僚には本当に頭が上がらない。


コレでルルちゃんと会おう!

意気揚々とラインアプリを起動させた。


『こんちは、ルルちゃん。今、いいかな?』


さぁ、いつ反応してくれるかな。

会社から出て、さあ、どこへ行こうかと思案したら、ラインに反応があった。

ルルちゃんだ。


『こんにちは、ウルフさん。今、電車に乗ってるんですが、事故で動かなくなりました』


はぁ?電車?事故?動かない?

ルルちゃん、大丈夫だろうか?


『え? ルルちゃん、電車乗ってるの?』


『ええ、ちょっと息抜きにカフェでも行こうかなと思ったんですが。運が悪いですね』


『大丈夫か? 一人?』


『ええ』


『ルルちゃん、おこらないで聞いてくれるか? あ、ラインだったら読んでくれ、かな』


『なんですか、藪から棒に?』


『あのさぁ、一人で大丈夫かな?』


『どういうことですか?』


『俺ね、気が付いたんだ。

 ルルちゃん、もしかしてさ、耳が聞こえない人なんじゃない?』


思い切って打って見たら、既読はついたけれど、なかなか吹き出しが出てきてこない。

やっぱり、まずかったかな…。


『ルルちゃん? おーい?』


『ビックリしました』


あ、反応した…。良かった…。


『いやさ、俺もビックリしたんだけど、もしかしてルルちゃん、聞こえないから会いたくなかった?』


やっぱり、反応がない。ギルチャでもこんなに反応しないことはない。


『えと…反応がないと、ちょっと困るんだけど、いや、おこっちゃったのかな?』


『いえ、怒ってませんが、本当にビックリして。なんて書いていいかわからなくて』


戸惑いがちのような吹き出しが出てきて、ほっと安心しながら、気がせいてフリックする。


『無理に聞こうと思わなかったんだけど、あのさ、だからさ、放送とか聞こえなくて困ってるんじゃないかと思ったんだよ』


『大丈夫です。先ほど、お隣の人に様子を教えてもらいました。踏切事故だそうです。それに、Twitterに情報が集まるので、それをみています。何とかなります』


今度はすぐ出てきた。


『はぁ、なるほど、Twitterで情報収集か。俺もそうしよう』


『ウルフさん、耳のこと、どうしてわかったんですか?』


だよね…。よくわかったなぁと思うもん、俺も。


『やっぱり、耳が悪いんだね? 色々考えてたんだよ、ルルちゃんが、何でオフ会に参加しないか。TDGを見る限り人嫌いじゃないだろうし、聞き上手だしね。


 酔っぱらっちゃったことがあっただろう? TDGの初めてのオンラインオフ会の後』


『ええ。とても酔っぱらいましたね。恥ずかしかったです。あの写真、もう捨ててください。おねがいします』


『それよ。その写真で気が付いたの。だってルルちゃん、ずっとラインくれないし、おまけにTDGにもこなくなっちゃったしさ、俺、凄くあせっちゃったんだよ』


『写真ですか?』


キョトンとしてそうな、ルルちゃんを思い浮かべる。本当にルルちゃんが打っている文章のような子なんだよなぁ。裏表が無さそうで、だから安心できる。


『そう、来ない間、あの写真見てたのね。そしたら補聴器っていうの? 右耳についてるのが見えて、それで腑に落ちたというか。

 もひとつ。俺、ルルちゃんに会ったと思う』


『え……』


『先週だったかな、S谷のサンマルク並んでたらさ、並ぼうとしてやめた女の子がいたんだよ。俺、どこかで会ったような気がして、思い出そうとしてじっとみつめちゃったから、怖がらせたと思うんだ。


 あれ、ルルちゃんじゃない?』


『S谷のサンマルク……』


『来てたよね?』


俺は確信を持ってフリックした。

また、時間があいた。でも、もう想像出来る。


『行きました』


観念したような吹き出し。


『やっぱり、ルルちゃんだったんだ。声をかけたんだけどさ、聞こえなかったなら無理もない。追いかけたくてもこの足だったから諦めたんだよ』


『ごめんなさい』


『謝らないで。怯えさせちゃったみたいだし』


『色々心配かけたり、色々気を使ってくれたり、なんだか申し訳なくて』


ルルちゃんが申し訳なさそうに吹き出しを作っていくから慌てて止めた。


『ああ、違う違う。俺、そんなにいいやつじゃない。誰にでもやってるわけじゃないよ。

 むしろ、オークのやつのほうが気配りが上手だしな。俺は、ルルちゃん限定』


この際だ、ぶちまけた。

やっぱり、また、間が空いた。


『先ほど、隣の人が教えてくれたんですが、20分遅れでつくそうです。

 よかったです』


え?あ、電車、電車ね…。


『そうか。どこへ行くところだったの?あ、きいちゃだめだったかな』


『ふふふ。S谷のサンマルクですよ。ウルフさんのせいで行きそこなった……』


お!チャンス到来!!


『お、奇遇だな。俺もS谷にいるよ。

 なぁ、あってみない? 話す方法、いくらでもあるんだし』


『そうですね。よろしくお願いします』


意外に、早く反応があった。良かった。


『じゃ、1時間後なら大丈夫かな?』


『ぴったりだと思います。』


よし!!

ガッツポーズを何度したことか。


『じゃあ、Sサンマルクで。』

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