第4話 ・・・『決心』
場は静かだった。
集まっている者は自分の過去を振り返っているだろうか。それとも、心の中で各々の過去に言い訳を続けているだろうか。なぜ人は他の人の心の中を読むことができないのだろう。読心術のようなものはこの世に存在しない。だからこそ、この世に正解は存在しない。
人は1日に約9000回の決断をしなければならないという。朝に起きて何をするか。何を食べるか。いつ出かけるかなどのちっぽけな決断から、どのような大学に行くか。誰と結婚するか。家を買うか。などのこれからの人生にとって大きな決断を迫られることまで、人生は決断の連続である。
俺はくずだ。
しかし、俺のようなくずでもわかる。このゲームが俺の人生で最も大きな決断になり、賭けになるのだと。もし、このゲームに参加して皆と協力したら、何の犠牲を生まなけても済むのではないか。甘い考えかもしれないが、この世に正解は存在しない。このゲームにだって正解は存在しないはずだ。主催者側の思うようにさせず、参加者全員で力を合わせてここから脱出することも可能ではないか。
あいつらを信用できているわけではない。しかし、ここから逃げ出すには、皆の協力は不可欠な気がした。そして、俺は決断する。
「受ける…。」
「何をだい?」
「このゲーム受けて立つ。俺たちがくずであろうがなにであろうがそんなの関係ない。このふざけたゲームから俺たちは生還する。しかし、約束してくれ。俺たちがこのゲームをクリアすればここから出してくれることをな。」
俺は、決心した。これからどのような試練が待ち受けるかも知らず、ただ、俺は真っすぐに挑戦状を受ける決心した。それは贖罪の気持ち、過去清算の気持ち、その他諸々の感情の表れだった。
「おかしなことを言う。初めから諸君がYESボタンを押したときから、このゲームに参加する義務が生じている。それが社会の約束ということだ。そして賞金もまた社会の約束だ。必ず保障する。また、このゲームをクリアすれば諸君を安全に外に出してあげることもまた、社会の約束だ。保障する。」
最後まで言い方がムカつく野郎だった。しかし、嘘をついているようには見えなかった。ボイスチェンジャーを使っていても、こいつは嘘はつかない。そのような気がした。
……
司会役の話が終わり、人々は黒服に案内され、自分が目覚めた部屋に移動させられた。
俺も部屋に戻り、机の上にある封筒をみつけ、開封した。そこには役職が記されていた。
役職:追撃者(村人陣営)
勝利条件:人狼及び第三勢力を全員処刑する。
能力:夜の間、一人を指名することができる。その者が人狼に殺されると、殺した人狼が誰か知ることができる。ただし、惨殺の場合は、知ることができない。
追撃に成功すると、賞金が倍になる。
インターネットで調べた限り、重要な役職ではないようだ。おそらく、人狼と同じ人を指名するという条件が厳しいからである。しかし、人狼が誰か知ることができるというのは幸いだった。俺の選択で早く人狼をみつけることができる。
俺は誰が人狼であろうと話し合いで、協力し合いこのゲームから抜け出して欲しいが、おそらく人狼になった人は自分の役職を隠すだろう。あくまで、俺は犠牲を最少にしたい。
部屋には窓もあったが、外は暗かった。俺は窓を少し開け、夜風に当たることにした。
次回は、番外としてルールの説明と役職の説明をするつもりです。