第3話 ・・・『くず』
そうだった。確かにそのスマホには優勝賞金10億円と書いてあった。
しかし、あの司会役とやらの言葉に気になるところがあった。
「生き残った全員…?」
それがどういう意味か、考えるまでもない。つまり、これは命を懸けたゲームということ。一生をかける博打ということ…。10億円というのも納得がいく。ここにいる全員がそう思っているかもしれない。
「もちろん、役職ごとに与えられたミッションをクリアすることでより多くの賞金を得ることもできる。いわゆるボーナスと考えて結構。それはゲームが進むにつれて自然にわかることだ。」
唾を飲み込む音も聞こえた気がした。
「では、説明もできたようだし、これから諸君に役職について知らせるとしよう。先ほど諸君が目覚めた部屋にいくと、封筒が置いてあるはずだ。そこにゲームについての詳細事項が書かれている。確認してから本日は寝るとよかろう。」
彼はそう言うと、黒服らが道を開けようとした。
彼の話を聞く限り、このゲームはチャンスかもしれない。もしかすると俺たちのために用意された神からのプレゼントかもしれない。俺みたいなくだらない人生を歩んできたやつでも更生できる機会でもある。10億円という金さえあれば、また一からやり直せるし、俺のせいで苦労してきた親にも親孝行というやつができるかもしれない。俺は今までずっとゲームばかりやってきたから、他の人よりも有利かもしれない。また幸せだったあの頃に戻れるかもしれない。ああそうだ。これは一生に一度のチャンス。大博打。この幸運は絶対逃してはいけない。
少しはそう思った。
しかし……
「ふざけるんじゃない…。」
俺は言った。
「今誰かなんか喋ったんかい。」
司会者は言った。
「ふざけるんじゃーなーーーい!!!!!」
俺の叫び声はその広場全体に響き渡った。
「何が10億だ。何がゲームだ。ふざけるんじゃない。人の命を弄ぶのがゲーム?こんなのゲームじゃない。ただの殺戮じゃないか!!!お前が言ってることを黙って聞いてりゃ、人の命を何だと思ってんだ!こんな狂気じみたのを誰が認めた?誰が許可した?ふざけるんじゃないよ。それによ、警察が黙っていられると思うのか?こんなの誰も許さないぞ!!」
俺は叫んだ。家に引きこもって生活していて声がよく出ないかと思っていたが、杞憂だった。俺は今俺の怒りを全部ぶつけた。
他の人々も一人二人と俺に同調するかのようにそうだそうだ!一緒に叫んでくれた。
その瞬間、
「黙れ、くずが。」
司会役の一言で場の空気が変わった。
「君は確か、高原優斗くんだったかね。ふざけてるのは君じゃないか。」
「なにっ?」
「言うのを忘れていたが、ここに集まった皆は全員社会のくずだ。社会から駆除すべき害虫だ。諸君らもわかっているのではないか。」
再び場は静まり、彼は、続いて言った。
「ここに集まった諸君らは全員くずだ。確か君は、昔親の金で博打をして挙句に家の契約書を持ち出して担保にして借りた金でさらに博打でお金をなくし、多くの借金を負わせたのではないか。それに…」
「黙れ!!」
俺は慌てて彼の口を閉ざせた
「おっと、これは人に知られたくない過去かね。まあ良い。これは言わないでおこう。また、ここに集まってる人には、多量殺人を犯した者。児童だけを狙って拉致して自分の性欲を満たした者。その他さまざまな悪行をしてきた者ばかりだ。そのような社会のくずを集めたのがこのゲームだ。諸君みたいなくず一匹二匹消えたところで警察?ふざけているのは諸君らではないか。警察が来たら困るのは誰か。よく考えてから言った方がいいと思うがね。」
彼はさらに言った。
「諸君らみたいなくずでもこのゲームで勝利すれば一からやり直せるということだ。起死回生のチャンスを与えているのになぜ怒るのかね。諸君みたいなくずでもこのゲームに参加するくらいはできるし、実際参加する意思表示をしたのではないか。」
司会役が言った言葉は俺の胸に刺さった。何本もののくぎが胸に刺された感覚で何を言えばいいかわからなくなった。
そうだ。俺はくずかもしれない。いや、くずだ。俺のせいで家庭は崩壊し、あの事件まで起こってしまった。俺は反省もできずに、家に引きこもってだらだら人生を過ごしてきたのではないか。これは罰なのかな。
なあ。ゆうこ…俺はどうすればいいんだ?教えてくれ……。
俺は周りを見渡してみた。
人々は皆慌てているように見える。多分俺みたいな人ばかりだろう。自分の過ちを犯してきたけど、結局それについてけじめをつけず、今日まで生きてきたに違いない。
この人たちを見ると、俺はこれからどうするべきか。わかる気がした。そうだろう?ゆうこ。これが俺の贖罪なんだよな……?