第2話 ・・・『10億円』
-1日目-
「ううっ…」
頭がくらくらする。俺はものすごい頭痛を耐えながら、目を覚ました。
周りは初めて見る風景。
いったいどうなったんだろう…。ここはどこなんだ!!!
いったいどれくらいの時間が経ったのだろう。俺はまったく今の状況を把握していなかった。周りを見回してみることにした。部屋の中には暖炉がある。なんか一昔の推理物でよくみるようなところのようだ。山小屋みたいな感じの部屋だった。少し変わったと思ったのは、部屋に扉が2つあり、一つは木の扉だったが、もう一方は鉄の扉だということ。その鉄の扉の下の方には縦に30cmくらいの穴があった。
確かなのは、普通の人が住む家ではなかった。正確にいうと現代の人々が住むようなところではなかった。というのも、電子機器などがまったく見当たらなかった。ヨーロッパ中世の部屋みたいな感じだった(中世に詳しいわけではないが)。いわゆる山荘というものではないだろうか。
俺はなぜこんなところに……?
少し記憶をたどってみることにした。
俺は確か、ドアの前にある段ボールからのスマホのYESボタンを押した…
あっ、思い出した。
「あいつらはいったい誰だったんだろう、もうわけわかんねーよ!!!」
俺はサングラスをかけた黒服のやつらに気絶させられてここに運ばれてきたに違いない。
……
ここにいてもしようがないと思い、俺は木の扉から外に出ることにした。
外はとても肌寒かった。確か、夏だったけどなんでこんなに寒いんだろう。俺が運ばれてからどれくらいの時間が経ったのかはわからないが、ひげがあまり生えてないため、少なくとも季節が変わることはあり得ない。いったいここはどこなんだ。
外に出てすぐ、広場のようなところを見つけた。そこには人が大勢集まっていた。
「ここはどこなんだ!!!大事な会議があるんだぞ!!!」
「家に家族が待ってるよ!誰か助けて!」
「ふざけんじゃねーぞコラァ!!ぶっ殺すぞ、この野郎」
その広場はとても騒々しかった。
俺だけここに来たわけではなさそうだった。周りには俺を取り押さえた黒服の人々が人々をかこむような形で立っていた。
その瞬間、空から声が聞こえた。
「諸君。タブラの人狼の山荘へよくぞ来てくれた。皆を歓迎する。私はここの司会役を任された者である。また、このゲームの主催者も私だ。」
ボイスチェンジャーのようなものを使った声が聞こえた。しかも、姿はどこにも見えなかった。これでは性別も年齢もわかるわけがない。
「先ほどから威勢の良い叫び声だった。皆元気そうでなによりだな。まさか、ここに来られた理由がわからないわけもなかろう。諸君らはすでに知ってるのではないかね。何せ自分自身で参加すると選んだのではないか。」
司会と名乗った彼は皮肉まじりの言い方で言った。
参加すると自分で選んだ?もしかして、スマホの参加ボタンのことなのだろうか。
「諸君らはもう家に帰ることはできない。このゲームをクリアしない以上は……」
「ゲームというのはまさか「タブラの人狼」のことなのか?」
話の途中に俺は話の腰を折った。
「理解が早くて助かる。そのタブラの人狼を諸君に楽しんでほしいのだ。」
人々は動揺しているように見えた。
「ふざけるな!こんなわけのわからねーところに連れてこられた何がゲームだ!!!」
「そうだそうだ!!ふざけないで早くここから出して!」
その中に、ヤクザみたいな格好をした人(というのも刺青をしていただけだが)が黒服の胸ぐらをつかもうとしたが、他の黒服に止められ、再び俺たちのそばにまるでゴミを扱うように投げ捨てられた。
「落ち着きたまえ。諸君らが協力してくれるなら、ゲームを早く終わらせることもできる。まず、このゲームのルールについて簡単に説明するからよく聞きたまえ。」
彼は、ルールについて簡潔に説明した。毎日1人を投票するかしないか選ぶことができ、もっとも得票数が多い人を処刑できるということ。人狼は毎日1人を殺すことができること。そして、人狼側は人間を全員殺すことで勝利し、村人側は狼を全員殺すことで勝利するというルールだった。
「そしてこれがもっとも重要だ。もし自分が所属するチームが優勝すると、生き残った全員に10億円が賞金として与えられる。」
10億。
それは言葉は広場全体に響いた。
そして、一瞬その場が静まり返った。
10億円という金額はどれくらいなんだろう。サラリーマンが一生稼いでも2億円にいくかいかないかとも言われている。要するに、普通のサラリーマンの生涯年収の約5倍の金だ。これだけあれば、何不自由なく暮らすことができる金額だった。
10億か……。