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事象の忘却:存在の消失

ファンタジーというよりは現代伝奇寄り クライマックスパートだけ抜粋的な 起承を省略して転だけドーン



浄化属性?…ああ。そりゃあ方便ってやつだ。"浄化属性"なんてもんは本当はねぇんだよ。それが浄化に使えるから浄化属性と言われてるだけで、そいつの本質は浄化じゃない。

…ここまで行動を共にしてきて、違和感はなかったのか?本当に?そいつが本当に悪しきものを浄化することが本質だというなら、何故アヤカシはそいつに寄ってくる。浄化であっても豊潤な霊力の持ち主には変わりないから?間違っちゃあいないが、正解でもないな。

そもそも浄化と一口に言っても方式は様々だ。穢れを清める、あるべき彼岸へ導く、光や炎で焼いて消滅させる、水や風で穢れを流し離す…どれが特に優れているということもない。しいていえば、相手によって相性があるだけだ。元から燃えてるやつに火で浄化しようとしてもうまくいかない、とかな。

ところで悪霊が何故現世に留まっているか…留まっていられるのか、知ってるか?…ああ、そうだ。恨みが、怒りが、悲しみが…現世への強い執着を持っているからだ。だから、強制成仏以外にもその執着を解消してやって自然と成仏してもらうことを狙うという方法もとれる。アヤカシもまあ、成仏は基本しねぇが似たようなもんだ。…そう、あいつらは現世に対する執着を失くしたら現世に留まれなくなるんだよ。

そいつの本質は忘却。悪霊もアヤカシもそいつの忘却で現世への執着を忘れることで"浄化"される。マ、それだけなら多少珍しいタイプではあるが、要注意対象とされるほどでもねぇよ。霊力属性が元素以外の形で属性として偏ってるのも…珍しいが、偶に見られるもんではある。

問題はそいつの霊力が規格外の生成量と質を誇ってることだ。それこそ、指向性が与えられていない状態でさえ、近づいたアヤカシを浄化できるほどにな。そこまでいくと器たる本人も自分の霊力の影響を受けているはずだ。思わなかったか?いくらなんでも忘れっぽすぎないか、って。同行してる時に見ただろ、あの偏執的なレベルのメモ帳。そうまでしないと忘れちゃならねぇことまで忘れるからやってんだよそいつは。

別にこっちも慈善団体じゃない。要介護だから要注意対象っつってんじゃねぇよ。言っただろ、指向性を与えていなくても浄化できてるって。そしてその意図をもってすれば大抵のアヤカシは浄化できるくらいの霊力を持っている。そう、問題は意図して使った時の話だ。

忘却霊術の究極形って知ってるか。…知らないよな。マ、禁術だからな。――曰く、"事象の忘却"。世界から、その事象を忘却させることで、それをなかったことにする。それが出来事なら起こらなかったことになるし、物質や生物なら元から存在しなかったことになる。一度失われたものが戻ることはないし、そもそも失われたことにすら気付けない。辻褄は合わないがな。

そいつはできるンだよ、それが。その意図をもって全力で忘却を行使したら、そのレベルに至ると言われている。そう、言われている。行使されちまえば他の奴の記憶からは消えちまうし、覚えてる可能性があんのは術者本人か、特殊な忘却耐性を持ってるやつくらいだ。だがそいつはまず自分の忘却属性で忘れちまうから覚えてない。実際使ったことがある証拠はないし、残りようもない。

わかるだろ、何でそいつが要注意対象になるかが。何かあってからじゃ遅いんだよ。べつに、そいつの浄化は…忘却は、アヤカシにしか効果がないってわけじゃないんだからな。相手が人間であっても脅威足り得る。事象の忘却レベルまでいかなくとも忘却を強くかけられりゃあ人ひとり廃人にするくらい可能だしな。…マ、そんなのは一定の実力のある術師ならみんなそうだが。

いや、俺に言われるまでもなく、自覚してるだろ――コード:ニルヴァーナ!10年前、自分が何をやらかしたか覚えてないとは言わせないぜ。周りの人間に言われるがままにやったんだとしても、実際やったのはお前だ。忘れるなんてことは絶対に許さない。それがお前の望んだことでないとしても、自分のしたことを理解していなかったとしても、他の選択肢を与えられていなかったとしても!お前は、お前のしたことに向き合わなきゃならない。償わなきゃならない。同じ間違いを繰り返してはならない!

…そうだよ。少しは思い出してきたか?それとも、やっぱり俺のことは"記憶できない"か。マ、どっちでもいい。俺のすることは変わらないからな。お前に普通の暮らしはどうあがいても無理だ。"浄化"にしろ、霊力にしろ、忘却にしろ…真っ当じゃないものを引き寄せる才能に恵まれてやがるからな。だから――戻るぞ。お前のあるべき場所へ。




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