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用務員さんの同棲相手は学園で聖女と呼ばれる幼馴染みでした。  作者: あゆう亞悠


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「毎日待ってた」

 俺が腰を痛めたせいで仕事を休んでから三日目。今日はいつも通りの時間に起きて身支度をしている。腰の調子が大分良くなってきた為、今日から仕事復帰ってわけだ。

 まぁ、重いのは持てないから簡単な作業だけになるだろうけどな。


 ちなみに、あの日から柚は部屋に入る事はなかった。差し入れでコンビニのおでんとか持って来て、そのついでに体調とかを聞かれたりはしたが、玄関には一歩も足を踏み入れる事は無かった。

 一度だけ、ひどく寒い日があったから「少し暖まっていけば?」って言った事があるけど、柚はただ首を横に振るだけで帰っていった。


 そう言えば、休んでる最中に一度だけチャイムだけ押されて外に誰もいない時があったな。あれは何だったんだ? まぁいいか。


 それと、結からの連絡が増えた。

 どうやらかなり心配をかけてしまっている様で申し訳ない気持ちがあるけど、その反面嬉しい気持ちがあるのも確か。こればっかりはしょうがないよな?


 夜は毎日電話がかかってきた。初日は周りに人がいない状況でかけてきてくれていたみたいだけど、翌日からはそんなのお構い無しにかけてきた。通話の後方で「キャー!」とか「え? え? 天音ちゃん恋人いたの? まじで!?」とか聞こえてくる。いやいや、恋人じゃないぞ。《《まだ》》な。

 てか会話聞かれてて大丈夫なのか? すぐに広まるぞ? むしろ俺が大丈夫か? 結のファン多そうなんだが……。


 そして修学旅行最終日の夜の会話の中で出た話題があった。

 それは、【あの日から柚が来たかどうか】ってこと。それに対する俺の返答は「来たけど部屋には入っていない」ってそれだけ。

 俺がそう答えると、小さい声で『その程度だったのかな……』って聞こえたから、おそらく結は柚の俺への気持ちに気付いてたんだろう。

 だけどその程度とは? そこがわからない。どういう意図で言ってるんだ?


 まぁ、そんなこんなで今日の夜には結が帰ってくる。帰って来た結に告げる言葉はもう決めた。時間は山程あったからな。

 まぁ、色々考えた結果、シンプルなのが一番良いだろうと言う結論に至った。変に凝ったセリフも考えたが、とても口に出せるようなもんじゃない。つーか言ったら俺が恥死量オーバー。


 そんな事を考えてるうちにコルセットを付けて、出勤準備完了。


「行ってきます」


 久しぶりにこの言葉を言って部屋を出た。


 学校へと着くまでの間、知ってる顔を見かける事は無かった。タイムカードを押して職員室を覗くと、PCをカタカタといじっている柚の姿が見えた。集中している様だから声をかけずにそのまま倉庫へと向かうと、倉庫の扉に寄りかかりながら足で土をいじる秋沢の姿があった。


「よう、久しぶりだな」

「……っ! おはよ。大丈夫なの?」


 声をかけると、まるでバネの様に顔を跳ね上げて俺を見てくる。


「まだ完治ってわけでもないけどな。まぁ簡単な仕事なら……って感じか。お前はそこで何してんだ?」

「……いつ戻ってくるかわからないから、毎日待ってた。予鈴ギリギリまで」

「え? まじで?」


 秋沢は無言でコクリと頷く。


「なんでまたそんな事を……」

「好きな人に会えないのがこんなに寂しくてツラいとは思わなかった。連絡先も分からないし。だから毎日待ってた。それだけ」

「秋沢……」

「それと……ごめん」


 なぜかいきなり謝り出してきた。


「いや、あやまる事じゃないだろ。まぁその……応える事は出来ないけど、嬉しいのは確かだからな」

「ううん。それじゃない」

「? じゃあなんだ?」

「実は心配で部屋の前まで行った。住所は適当な先生に聞いた」

「……もしかしてあのピンポンダッシュはお前が?」

「うん。気持ち悪いよね? 自分でも何をしてるか怖くなって逃げた。ごめん」

「いやいやいや、心配してくれたんだろ? それならまぁ……。ただ、あんまイイやり方じゃないから今後は気をつけてくれ」

「わかった。それと一つ気になる事ある」

「なんだ?」

「天音先輩と隣同士? しかも他に誰も住んでないっぽい」


 あー! やっぱりそこ気付くよねー!


「えっとだな? あそこのアパートはウチの親父が経営しててな? それで借りてんだよ」

「こうたんのお父さんが……」

「いや、こうたん呼びはやめんか」

「……あの辺の土地は確か……」


 なんだ? 土地? なんでいきなりそんな話に?


「お、おい秋沢?」

「なんでもない。もう予鈴なるから行く。会えて嬉しかったから今日は頑張れる。じゃ」


 秋沢はそれだけ言うと、俺の返事も聞かずに校舎の方に向かって行ってしまった。


 なんだろう。嫌な予感しかしないんだが……。


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