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用務員さんの同棲相手は学園で聖女と呼ばれる幼馴染みでした。  作者: あゆう亞悠


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「お願い……。何も言わないで」

 結から結構メッセ来てるなぁ。どれどれ……。


〖今着きました! 結局新幹線の中で和華ちゃんと一緒に寝ちゃいました〗

〖北海道はもう結構寒いです。晃汰さんがくれたコートが大活躍ですよぉ~。ヌクヌクです♪〗

〖お弁当ちゃんと持っていきました? こっちは海鮮丼がすごく美味しいです! 写真送りますね。帰ったら作ってみようかなぁ? けど新鮮さが……うーん……〗

〖そろそろお仕事終わりかな? お疲れ様です♪〗


 楽しんでいるようで何よりだな。せっかく楽しんでるんだし、俺の腰の事は言わなくてもいいか。変に心配させてもアレだし、別に病気とか怪我って訳でもないしな。


〖弁当美味かったぞ。ありがとな。風邪ひかないようにしろよ?〗


 これで送信っと。ちょうど風呂も沸いたみたいだしさっさと入ってしまおう。

 俺はスマホをテーブルに置き、ベットに捕まりながらゆっくり立ち上がる。


「っ! 痛てぇ……。昼に飲んだ痛み止め切れてきたか? 急がねぇと……」


 そしてヒーヒー言いながらなんとか風呂を済ましてパンツとTシャツを着たところで力尽きた。ズボンは手に持ってはいるが、腰を曲げると痛みが走るために立ったままでは中々履けない。だから、みっともないけど誰も見てないから四つん這いでベットまで行って、寝っ転がってなんとかズボンを装備した。


「はぁ、はぁ……ヤバい。まさかここまで辛いものだとは思わなかった。親父、昔笑ってすまなかった……。あーまじで動けん。飯食って薬飲まないとダメなのに……」


 と、その時だった。突然俺の部屋のインターホンが鳴る。こんな時に……って思うけど出ない訳にもいかないか。部屋の電気ついちゃってんもんなぁ。これが昼間なら居留守使うのに。

 ベットから足だけ下ろし、腕の力だけで上半身を起こすと壁伝いになんとか玄関まで行ってモニターを見ると、つばの広い帽子のせいで顔は見えないが、髪の長い女性っぽい。誰だ?

 とりあえずチェーンは外さずに鍵を開けて、ドアを開く。


「はい、どちら様です?」

「……プッ! どちら様って何よ。私よ?」

「まじか! 柚かよ。誰かと思ったや。ちょっと待ってろ」


 ドアを一度閉めてチェーンを外すと再び開けた。そこには、足首まであるデニムのワンピースと皮のブーツ。その上から厚手のカーディガンを着て、頭には帽子を乗せた柚が立っていた。普段は一本で結っている髪はほどいている。

 普段の格好とは違いすぎて、ちょっと言葉が出なかった。


「やほい! 大変かと思ってきてあげたぞっ」

「お、おお。そうか」

「中……はいってもイイ?」

「あ、うん」

「おじゃましまーす。てゆうか、ねぇちょっと? さっきからどうしたの? あ、もしかして見とれた? 私だってこういう格好するのよ?」


 柚がブーツを脱ぎながらそんな事を言う。


「そ、そうか、あれだな……可愛いと……思うぞ」

「ふぇっ! ちょ、ちょっと何言ってるのよ! 冗談で言ったのにそんな……えっと……ホント?」

「あ、あぁ……」

「そっか。そっかぁぁぁ。頑張ってきて良かった……」


 な、なんか変な空気だな。寒いし、立ってるのも辛いからとりあえず中に入って貰うか。そう思って柚に中に入るように促した時だった。


「まぁあれだ。とりあえず中に入れよ。そこじゃ寒いだろ……いだっ!」


 急に腰に痛みが走り、足のチカラが抜けて体が崩れそうになる。


「晃汰っ! 大丈……きゃっ!」


 柚はそんな俺を支えようとして手を伸ばすが、脱ぎかけのブーツがひっかかってバランスを崩してしまった。

 その結果、俺はなんとか床に手をついて、腰をぶつけることなくしゃがみ込むだけで済んだ。そしてその上に柚が覆い被さる……ことはなく、俺のすぐ隣にダイブしてうつ伏せに倒れてしまった。


「ゆ、柚?」

「……お願い。何も言わないで」

「あ、はい」


 沈黙が……その場を支配した。


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