「……ほんとに怒ってない?」
結論から言おう。
俺の腰が逝った。まぁ、正確にはそこまでじゃないけど、近からずとも遠からずってとこだな。
調子にのって、持てる量以上の物を持ったのがいけなかった……。
階段の途中で一回休憩して、また持ち上げた瞬間にピキっとね? 魔女の一撃とはよく言ったものだ。痛くて動けなくなってる所に業者の兄ちゃんが来るまで、まったくもって動けなかった。そして今は保健室でシップを貼って貰う所である。何故か柚に。丁度授業が無かったらしい。
「まったく……無理するからこうなるのよ。せっかく差し入れとか用意してたのに……。ほら、シップ貼るから腰出しなさい」
「いや、自分で貼るからいいよ。差し入れは食う。飲む」
「は~ん、その状態で何言ってんのよ」
ちなみに柚が言っているその状態ってのは、ベッドの上で寝るに寝られず四つん這いになっている俺の格好の事だ。
なんか、横になったら起きれなくなりそうで怖いんだよ。わかる? この気持ち。
はぁ、しょうがない。このままでいてもしょうがないか……。俺は諦めてゆっくりとうつ伏せになると、ウエスト部分にあるチャックを外してツナギを分離させる。そしてそのままズボンを少しだけ下げた。
「ぐっ、屈辱だ……。わかったよ。ほら、頼む……」
「わかればいいのよ。それに今更あんたの腰見たくらいで……きゃあ! ちょっ、ちょっとぉ! 下げ過ぎよっ! お尻がちょっと見えてるわよバカぁ!」
パァンッ!!
「いでぇ! おまっ、何すんだぁ? こ、腰にひびくぅ……」
柚が叫びながらいきなり、無慈悲に俺の尻をパァンッと叩いて来やがった! おいマジか! 俺動けないんだぞ!? ちょっと感覚が掴めなかっただけなんだ。それなのに……。
「あっご、ごめん……。ねぇ大丈夫??」
「だいじょばないぃ~~」
「うぅ~~わざとじゃないのよぉ。ちょっと気が動転しちゃっただけなのぉ~~」
「わかったよ。別に怒っちゃいないからそんな泣きそうになるなって。」
「……ほんとに怒ってない?」
「ないない。だから早くシップ貼ってくれるか?」
「うんっ!」
その後は何事もなくシップは貼られ、俺はベッドで横になっていた。あ、もちろんズボンはしっかり上まであげてある。シップと痛み止めを飲んだのが効いてきたのか、さっきまでよりは幾分楽になってきたかな?
柚は次の時間は授業があるらしく、貼り終えると顔を赤くしたままそそくさと保健室を出ていった。何を今更照れてんだ。
そして午前の授業最後のチャイムがなる。
「あぁ~もう昼じゃねぇか。弁当取りに行かないと……」
ベッドから起き上がってシューズを履いて立ってみる。うん、痛いけど歩けない程じゃないな。
さて、倉庫に向かいますか。




