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用務員さんの同棲相手は学園で聖女と呼ばれる幼馴染みでした。  作者: あゆう亞悠


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「晃太さんのばかぁぁぁぁぁ!」

 時間が流れるってのはホントに早いもんで、今は結が修学旅行に行く前夜だ。

 今日まで例のお風呂パニックの後は特に何もなかった。というよりは、定期試験やら旅行の準備やらで結も忙しかったみたいで、それどころじゃ無かったっぽい。俺もバタバタしてたしな。

 まぁ唯一の変化と言えば、結の言動が幼く……というよりは柔らかくなってきた気がする。デスマス調が減ってきたのだ。そっちの方が俺も気安いし、嬉しいからいいんだけどな。


 そんな感じで過ごしているうちに残暑も過ぎ、最近は肌寒い日も増えてきた。

 寒い時は服を着込むのは当然だよな? それはわかってる。だけど今は部屋の中なんだ。

 それなのに……


「なぁ結、部屋の中は寒くないだろ? まだ付けてないけど暖房もあるんだしさ。だから……そろそろコート脱いだらどうだ?」

「やっ!」


 そう返事をするのは、パジャマの上からカーキー色の大きめのボタンと腰元のリボンが特徴的などこにでもあるような薄手のコートを着て、俺の隣で体育座りをしてテレビを見ている結だ。ちなみに夕飯の後からずっと着てる。そしてここは俺の部屋。

 いやいや、「やっ!」って……。


「汚れないか?」

「大丈夫ですっ! 晃太さんの部屋もゴミ箱以外はちゃんと掃除してますから!」


 おおぅまじか。いつの間に……。いや、気づけよ俺。そしてその配慮が変に胸に響くわ。


「それに……晃太さんが買ってくれた物なので脱ぎたくありませーん」


 そういうことだ。このコートは俺が某有名通販サイトで注文した物。それがちょうど夕飯の最中に届いたってわけ。いやぁ~全然届かないから焦った焦った。まぁなんとか修学旅行前に届いたし、更にサイズもちょうど良いみたいで一安心だわ。


 そして、そのコートを渡した瞬間から結のテンションがおかしくなった。猫みたいに跳ねて喜んだかと思えば急いで食事を終わらせ、飛ぶように風呂に入ったかと思えば風呂から上がってきてすぐにコートに袖を通して全身鏡の前に行くと「ふあぁ~」やら「エヘヘヘヘヘ」などと、顔を綻ばせていた。

 喜んでくれたようでなにより。まぁ、想定外の喜びように今度は俺がビックリしたよ。


 そして今に至るというわけなんだが……。


 隣から「んふふ~♪︎」とか頻繁に聞こえてくる。その声に反応して隣を見れば、両手を袖の中に入れてパタパタしたり、そのまま顔を両手で抑えて「イヤァ~」と左右に首を振っている。更にはコートの前を閉じて、その中に顔まで隠して「私は今どこでしょう?」とか言ってくる。


 こっちが恥ずかしくなってきたわ!

 もうね……ホントにね……。可愛いが過ぎるんだけどこれマジでどうしようか……。


「まぁ喜んでくれたなら良かったよ」

「喜ばないハズがないじゃないですかー! 私、明日はこれ着ていくんだぁ~~」

「おぅ、その為に頼んだやつだからな」

「ホントにありがとうございます! 何かお礼しないと……」

「いや、いいよ。いつも色々と家事やってもらってるしな」


 ゴミ箱は勘弁だが。


「そうですか? じゃあ……お土産たくさん買ってきますね!」

「せっかくの修学旅行なんだから好きなの買いなって。けどまぁ、楽しみに待ってるよ。怪我とかしないで帰ってこいよ? 帰って来たら……話したい事があるしな」

「……えっ?」

「ほ、ほら明日早いんだからもう寝ろって」

「えっ、ちょ、えぇっ!? そんな事言われたら寝れなくなっちゃうんですけど!? ねぇ晃太さん!?」

「大丈夫大丈夫! 布団入れば寝れるって。おやすみ~」


 そんな根拠もないことを言いながら駄々をこねる結を自室に促して俺も寝る準備をする。


「晃太さんのばかぁぁぁぁ!」


 カーテンの向こうからそんな声が聞こえる。

 それを聞きながら俺は……覚悟を決めた。



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