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用務員さんの同棲相手は学園で聖女と呼ばれる幼馴染みでした。  作者: あゆう亞悠


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「先に入っててください」

 未だに俺の隣で口を開いたままの結。

 腕はしっかりホールドされていて抜くのは無理そうだ。いや、力の差があるから抜こうと思えば抜けるんだろうけど、それをすると色々と大変な事になる。主に俺が。


 はぁ、しょうがない。とりあえず一口だけでも食べさせてあげれば満足するだろう。

 俺は目の前にあるスプーンを取り、今日の夕食であるシチューをすくって結の口元に持っていく。


「ほら、一口だけな? そしたら戻れよ?」

「ふぁい」

「じゃあ……ほら」


 俺がそう言うと、結は開けていた口を閉じてこう言った。


「あーんって言ってくれないと食べませんし、離れません」

「なっ、まじか……」

「はい、元カノさんの事も終わったのでここからは私のターンですっ! なのでガンガン行きます! はい、アーン」


 それだけ言うとまた口を開く。

 いや、ターンて……。

 え、ちょっと待って。これから今まで以上に攻めてくるのか!? 学校では秋沢もなんかおかしくなってるし……。なんだこれ。これがモテ期か? 年齢的にも対応に困るモテ期なんだが……。とりあえず……


「あ、あーん……」

「あむっ……んぐんぐ……おいしいです。けど、ちょっと量が多かったですよ? 少し口からこぼれちゃいました」


 そう言いながら口の回りに付いたシチューをぺろっと舌で舐めとる結。


「あ、舐めちゃった。ちょっとお行儀悪かったですね」


 いやいやいや! ちょっと待ってちょっと待って!

 ダメだ。なんか色々ダメだ。何がとは言わないがそれはいかんぞ。

 そして、結はそんなつもりじゃないにしてもそんな事を考える俺もダメだ。


「ほ、ほら、食べさせたんだからもう離れなさい」

「しょうがないですねぇ」


 しぶしぶっといった感じで腕から離れる。

 腕にはまだ柔らかい感触が残っていて中々消えてくれないまま、夕食の時間は終わった。


 その後は、結は課題があるらしく部屋で机に向かっている。ちょっと問題を見せてもらったけどさっぱりわからん。特に関数。てめーは敵だ!

 俺は風呂が沸くまでの間、部屋でスマホをいじりつつテレビをボケーっと見ている。

 何もおもしろいのやってねーな……。


『お風呂が湧きました』


 おっ、風呂沸いたか。


「結、風呂沸いたけどどうする?」

「えっと……まだもう少しかかるので晃太さん《《先に入ってて》》ください」

「あいよー」


 ん? なんか違和感が……。ん~考えてもわからんな。まぁいいか。


 着替えを持っていざ風呂へ。脱いだ物は洗濯機に突っ込んでスイッチオン。後は上がってから干すだけだ。

 浴室に入り体も頭も全部洗った後は、防水ケースに入れたスマホから音楽を流しながら何も考えないでボケーっとしながら湯船に浸かる。これ、最近のマイブーム。ちなみに曲はアニソン。テンション上がるよね。


 そんな感じでノリノリで、なんなら鼻歌まじりで聞いてる時、いきなり浴室のドアが開いた。


「お待たせしました。入り……ますね?」

「ふんふ~ん♪︎……んぇ?」


 俺の視線の先にはタオルを全身に巻いた結の姿。

 え? お待たせしましたって何? 風呂場で待ち合わせとかしたっけ?

 いや違う。風呂場で待ち合わせってなんだよ。聞いた事ねーよ。

 ってそうじゃねーよ! なんで結が風呂に入って来てんのぉぉぉ!?


「へ? お待たせ? なんで?」

「はい? 私ちゃんと言いましたよ? 《《先に入ってて》》って」

「はい?」


 こいつ何言ってん……あっ! 今やっとピンと来た。風呂に入る前に覚えた違和感。

 そうだ。確かに結は[《《入ってて》》ください]って言った。いつもは[《《入って》》ください]なのにだ。

 ってそんなん今更気付いても遅いわ俺!


 そんな事を考えていると、ピシャッと浴室の戸が閉まる音がした。


「一緒にお風呂なんて私が小学生の頃以来ですね?」




 マジかよ。


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