「その子………誰?」 結視点
もういっちょー!
「いってらっしゃい」
私はそう言って、晃太おにぃちゃんを見送る。何回やってもこのやり取りは嬉しくなっちゃう。新婚みたいで♪
さて、自分の準備準備。
お弁当は自分の分も一緒に作ってあるから後は包んで鞄にいれるだけ。
洗濯機も起きてすぐに回したからもう止まってるはずだし、浴室に干してこなくちゃ。
下着は部屋に干すのにはまだちょっと恥ずかしいもん……。けど、どんなのが好きなんだろ? 色とか形状とか。聞いてみる? ムリムリ!
後は、隣のお風呂を使う口実にもなる。男の人は湯上がり姿に弱いって言うけど、おにぃちゃんはどうなんだろ? 視線は感じるから見てはいるんだろうけど……。
けど、朝の一件で一つわかった事がある。
私のこの胸は武器になる! ずっと見てたし! おにぃちゃんに見られるのは嫌じゃない! おねぇちゃんには悪いけど、ここは似なくてよかった。こんなこと本人には絶対言えないけどね。
そして、洗濯物を干した後は制服に着替える。私の通ってる学校はブレザー。グレーの生地で襟と袖口に黄色のラインが入ってるのが可愛いの。
着替えた後は、さっきまで着てた服を畳んでベッドの上に……の前にちょっと匂いを嗅ぐ。
まだ一緒に寝た時のおにぃちゃんの匂いが残ってる。夜まで残ってるとイイな。
次は髪型。確か今日は体育があるからポニーテールでいっか。
そういえば、たまには部屋でもポニテにしてると結構見られてる気がするけど……好きなのかな? 好きな髪型とかあるなら、言ってくれたらそれにするのに。
よし、準備完了。そろそろ行かなきゃ。
「あ、結ちゃんおはよー!」
「和華ちゃんおはよ」
この子は一番の友達の【水上和華】ちゃん。私より少し背が低めで、首までの長さの髪の、元気な女の子。私の事を聖女なんて言わなくて、ホントの私でいられる大事な友達。
「お昼の前に体育とかやだねー! 結ちゃんもそう思わない? お腹すいちゃうよ」
「そだね。疲れちゃう。けど、お昼の後だと眠くならない?」
「あーそれもあったかー」
そんな事を話しながら学校に向かう。今頃、晃太おにぃちゃんは倉庫で準備でもしてるのかな? なんて、そんな事を思ってたの。
そして体育の時間。
晃太おにぃちゃんが見てるっ!
気付くかな? って思いながら腰の辺りで小さく手を振ってみる。やっぱり振り返してはくれない。まぁそうだよね。
って思ったら……私をみて《《微笑んで》》くれた! なにその顔! 可愛すぎて胸が……あ、和華ちゃん、大丈夫だから。そんな病気とかじゃないから。
あぁ〜ほら、おにぃちゃん来ちゃった。しかも先生も来るって。そんな大事じゃないのに……。でも心配してくれるのは嬉しいかも。そしてちょっと強く言われるのもなんだか……。
っていきなりおでこに手? えっ? えっ? あ、熱を測ってたのね。汗でベトついてないかな?ちょっと恥ずかしい。
その後はすぐに仕事に戻っていっちゃった。
けど、和華ちゃんが聞き捨てならないことを……。
「ねぇ和華ちゃん」
「ん? なに?」
「さっき、その……用務員さんの事カッコいいって言ってたよね?」
「うん、なんかテキパキしててね。けど顔はタイプじゃないかな。もっとイケメンが好きっ!」
「そ、そうなんだ」
あれ? 晃太おにぃちゃんはカッコいい……よね?
その後、職員室から来たのはおねぇちゃんだった。怒られるだろうから、さすがにホントの事を話すわけにはいかない。だから、言われた通りに大人しく保健室に行くことに。
その途中、
「まったく、結といい晃太といい今日は色々あるわねぇ」
「え? 晃太おにぃちゃんどうかしたの?」
なにかあったのかな?
「ん? アイツね、朝から倉庫で女子生徒と話してて作業を遅らせちゃったんだって。それで校長先生に怒られてたの」
「女子……生徒?」
「そうそう……あ」
人気のない静かな廊下で私の足は止まる。
「ねぇ、おねぇちゃん」
「な、何?」
これはちゃんと聞かないといけない気がするの。今後の為に
「その子……誰?」