……見られてた?
偏頭痛がつらい……
俺がおにぎりを食べてる時、倉庫内にノックの音が響いた。こんな早くに誰だ? 朝練に行ってる奴以外だよな?
そんな事を思いながらドアを開ける。
「はいはーい……って秋沢か」
「……おはようございます」
「おぅ、おはようさん」
そこにいたのは【秋沢 真澄】
フワフワなボブヘアーにメガネをかけている小柄な子で、口数の少ない一年生。本人曰く、伊達メガネらしい。なんでそんなものをかけてるかは教えてくれなかった。
そして、この学校の中で結や柚を抜かせば俺が一番話す子だ。
口数少ないのに一番話すとはこれいかに。
まぁいい。それよりも用件だ。
「こんな早い時間にどうした?」
「……これ」
そう言って渡してきたのタグの付いた鍵。そこには【用務員倉庫(予備)】と書いてあった。
あぁ! そうか。昨日の昼に脚立を借りたいって言うから、勝手に持って行けって言って貸したんだった。返してもらうの忘れてたな。
「サンキューな。すっかり忘れてたわ。で、使う用事は終わったのか? なんだったんだ?」
「ちょっと高いとこの取りたくて……」
「なのか? そんなんそこら辺の男子に頼めばいいのに」
「男の人は……苦手」
俺も一応男なんだが……。
「俺とは普通に話すのにな」
「……用務員さんは別」
別だとさ。
「そうか。わかった。じゃあ、鍵は確かに受け取ったぞ」
「あの……」
「ん? なんだ? まだなんかあったっけ?」
「朝、天音先生と仲良さそうだった。二人はお付き合いを?」
「ん? 見てたのか? ないない。ただの幼馴染みだよ」
「そう……いつもと違うような感じがした……。では、天音先輩も《《そう》》?」
「そりゃそうだ。あの二人は姉妹なんだもの」
「………」
聞かれた事に答えると、秋沢は腕を組んで何かを考えはじめた。 ……こいつ、腕にのるんだな……。
つーか、あれ? 確か、以前結と一緒に帰るのを人目があるからって拒否した時に、「大丈夫です。友達には幼馴染みだって言ってあるから大丈夫です。だから一緒に帰りましょう。ホント大丈夫です」って言ってたけど、思ったより広まってないのか? 結は有名人だからてっきり、あっという間に広まると思ったんだけどな……。まぁ、一緒に帰ったのなんて昨日が初めてだけどな。コンビニからだが。
にしてもいつもと違う感じね……ね。あ、ちょっと聞いてみるか。
「なぁ、秋沢」
「なに?」
名前を呼ぶと、すぐ返事が返って来たので早速聞いてみる。
「あのさぁ、誰かの前ではホントの自分って聞くと何を思う? 俺、誰にでも同じ様に接してるからどうもわかんなくてなぁ」
「……信頼とか信用だと思う。ボ……私には……わかる」
わかるのかい。にしても、信頼と信用か……。柚は、俺の事は信用してくれてるって事でいいのかね?
「そうか、ありがとな」
そう言ったところで予鈴が鳴った。
「ほら、そろそろ戻りな」
「はい。でも、あと一言」
「なんだ?」
「どこで見られるかわからないので、女子生徒と一緒に帰るのはやめたほうがいい……かも?」
……見られてた?