【天音 結の決意】
11話目です!
よろしくお願いします!
今は7月の末。
私はペンを持って、ノートに小さく三行。
この恋は
けっして彼に
届かない
なんて……。
授業でだされた課題。今の自分の心情を表してなんて言われて作ってみたけど、こんなの誰にも見せれるわけないよ。
私はすぐにソレを消しゴムで消す。綺麗に。
その上からありきたりな言葉を紡いで、適当に作る。
そんな事をしてるうちにチャイムが鳴って今日の授業はおしまい。
後は帰るだけなんだけど、私は一人屋上に行く。隣のクラスの男子に『放課後に屋上に来て欲しい』って言われたからなんだけど、はっきり言って気が重いの。
一緒に帰る友達に、先に帰っててって言うのもイヤだし、なによりも《《答えが決まってる事》》を言わなくちゃダメなのがイヤ。
屋上に行くと、私を呼んだ人が一生懸命に想いを伝えてくるけど、私が答えるのはいつも【ありがとう】【うれしい】【ごめんなさい】の三つが入った言葉を言うだけ。想いを伝えてくれた相手の事なんて考えてないの。いつも自分の気持ちだけで手一杯なの。
だから【聖女】だなんて言わないで……。
学校を出てからは、おねぇちゃんと一緒に住んでる部屋に帰ってきた。今日は遅くなるって言ってたから、夕飯は私が準備する。
料理は一緒に住むようになってから、おねぇちゃんに教えてもらったのだ。「料理は覚えとかないと後悔するわよ。ホントに……あぁ! あの我慢して食べる顔を思い出しちゃったじゃない……」って言ってたけど、何か嫌な思い出でもあるのかな? おねぇちゃんが料理を始めた頃は、私はまだ小学校に上がったばかりであまり覚えてないんだよね。
その後、いつもより遅く帰ってきたおねぇちゃんの様子は何かおかしかった。ボーッとしてるっていうか、心ココにあらずみたいな?
「おねぇちゃん、どうしたの? 何かあった?」
「え? あ、うん。ちょっとね……」
それっきり。
そして夕飯もお風呂も終わって、スマホのゲームをしてたらおねぇちゃんが隣にやってきた。
「ねぇ、結?」
「ん? なぁに?」
「晃太の事好きでしょ?」
「ふぁっ……え? え? なんでいきなり!?」
「なんでって……。毎年、GWとかお盆とか正月になると、晃太が帰ってくるかどうか聞いてきたじゃない。隠してるつもりだったの?」
「う、うぅぅぅぅ」
「で、どうなの?」
「………好き。小学生の時からずっと大好き」
「そっか……。うん、わかった」
「でも、なんでいきなり?」
「あのね……」
そこからおねぇちゃんが話してくれたのは、私にとって嬉しいと同時にイライラする内容だったの。
嬉しいのは、晃太おにいちゃんが帰ってくるってこと。また会える。諦めなくても……いいのかな……。
イライラしたのは、晃太おにぃちゃんを裏切って捨てた女の人の事。
そのおかげで帰って来てくれるんだけど……なんかモヤモヤするなぁ。
そんな事を考えてたら、おねぇちゃんが言葉を続けた。
「そんなわけでね、次の休みに一回家に帰るわよ。なんかね、晃太のご両親とウチの親達がな〜んか悪巧みしてるみたいなのよねぇ……」
悪巧み? お母さん達、一体何をしようとしてるの?
――次の日曜日。
私とおねぇちゃんは、お母さんと一緒に真峠家のリビングに来ていた。
そして、晃太おにいちゃんのお父さんがボソッと言ったの。
「どっちかうちの晃太の嫁に来ない?」
………ふぇっ?
暑さと湿気でバタンキューしそうです……。